第227話 一つの再会と予告
真さんとアンナさんは母の言葉通り何か良からぬことをすることはなかったみたいだけど、数カ月と言う期間の汚れがひどかったらしく、ある程度スッキリするのに時間がかかったようだ。
途中何度かお風呂のお湯を入れ替えたらしい。
それだけ過酷だったってことだよな。
服に関しては換装で私服に着替えていた。真さんは作務衣のような感じで、アンナさんはブラウスとフレアスカートという出で立ちだ。和と洋のコントラストが凄い。
「初対面にも関わらず、お風呂を貸していただき、感謝します」
「ありがとうございます」
戻ってきた真さんとアンナさんはまず母さんに深々と頭を下げた。
「いえいえ、気にしないでください。元はと言えばうちのバカ息子がなんの連絡もせずに連れてきたことが原因ですから。アレクシアさんのご両親ですね?」
「はい、葛城真と申します。よろしくお願いします」
「葛城アンナです。よろしくお願いします」
「佐藤瞳です。こちらこそ宜しくお願いします。それにいつも娘さんにはこのバカ息子お世話になっております」
「いえいえ、こちらこそ娘がお世話になっているようで……」
二人の行動に、ウチの母さんが体の前で手を振り、自己紹介をしあって経緯やら俺とシアの事やらを話し出した。
俺と愛莉珠ちゃんは、数日だからそれほど時間をかけることも無く、サッと上がり、愛莉珠ちゃんは七海の服を借りていた。お互いそれほど身長差がなかったのが功を奏したようだ。少々胸のあたりが窮屈そうだったけど。
七海は俺達の汚れを掃除し、換気をしてリビングはキレイそのもの。全員が戻ってきた後、テーブルには料理が並べられ、急に人数が増えたにも関わらず、人数分用意している母さんは流石だ。
「まさか料理まで頂けるとは……深く感謝します」
「本当ですね。ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます!!」
「いえいえ、大したものではごさいませんが、お口に合えば嬉しいです。どうぞお召し上がりください」
『いただきます』
全員が席につき、三人が母さんに頭を下げると、母さんが音頭を取って料理に舌鼓を打った。
「それでは、そろそろ我々は失礼したいと思います」
「流石にこれ以上お世話になるわけにはいきませんし」
料理を食べ終わり、お風呂の時間と合わせてそれなりに遅い時間となり、葛城夫妻がホテルでも取るつもりなのか、家から帰ろうと席を立つ。
ただこの時間からホテルを探したり、予約をとったり、そして移動したりするのはとても面倒だと思う。
「あら、そんなこと言わず、今日は泊まって行ってください。ちょうど客室が空いてますし、ホテルなどは勿体ないと思います」
「そ、そうですか。ここまできたら最後までお言葉に甘えさせていただきます」
「ええ、構いませんよ」
母さんも同じことを考えていたらしく、葛城夫妻に提案すると、二人は申し訳なさそうにしながらも提案に乗った。
俺としてもいちいち合流するよりもそのまま学校に行ける方が楽だし、都合がいい。
「それから、愛莉珠ちゃんはどうするの?」
「わ、私ですか!?」
突然母さんに話を振られた愛莉珠ちゃんはビクッと体を震わせて驚く。
葛城夫妻のこれからの予定が決まったら、決めなちゃいけないのは愛莉珠ちゃんだけでしょうに。
まだ思考が付いていかないのかもしれないな。
「ええ、そんなに遠くないとは思うし、すぐににご両親に無事を知らせたいなら、ウチの息子たちに送らせるわ。一人は危ないからね。帰るのは明日でも良いっていうのなら七海の部屋に泊まっていけばいいわ」
「うーん」
母さんの言葉に愛莉珠ちゃんは腕を組んで悩む。
こっちに戻ってきてご飯も食べてゆっくり考えられるようになってきたはずだから、すぐにでも帰りたいと思うはずだけど、遅い時間だから僕と七海に送らせるのは悪いと思っているのかもしれない。
正直ラックの影魔だけでも送っていけると思うけど、ビジュアル的に襲ってくださいと言っているようなもんだから、抑止のためにも俺達は付いていった方が良いと思う。
この際、ラックも影から出して一緒に連れ歩き、この家で飼っていることにすればいい。犬が一緒の方が手を出しにくいだろうし。
「ははははっ。愛莉珠ちゃん、別に私たちに気を遣う必要はないよ?帰りたかったら帰りたいって言っていいからね」
「そ、そっか、それじゃあ、私は帰ろうかな」
「ふふふふっ。早くお父さんとお母さんに会いたいもんね」
「う、うん、そうだね」
七海が遠慮しなくていいと言うと、愛莉珠ちゃんが恥ずかしそうに帰宅を選択した。七海は微笑ましそうな笑みを浮かべ、愛莉珠ちゃんはさらに頬を赤らめた。
「分かったわ。それじゃあ、二人はラックと一緒に愛莉珠ちゃんを送ってきてくれる?」
『了解』
その後、俺達は愛莉珠ちゃんを家に送っていった。十分程度の距離だった。
『愛莉珠!!』
「お母さん、お父さん、ただいま!!」
事前に連絡していたらしく、家の扉を開けた途端、愛莉珠ちゃんを出迎える両親。三人は後ろに俺達がいることも忘れて涙を流しながら無事を喜び合った。
俺達はそっとその場から立ち去った。
「無事帰ってきた。明日、物凄いものを見せるからな、と」
愛莉珠ちゃんたちを見て、帰ってきてからずっと連絡してなかったことを思い出した俺は、シアにLINNEする。
『無事でよかった♪何か分からないけど、明日楽しみにしてるね♡』
直ぐに返事が返ってきた。
明日シアにとっていい報告であることを祈り、俺は意識を閉じた。
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