第181話 緊急出動(第三者視点)
「室長!!知り合いの探索者からのタレコミで神ノ宮学園のダンジョンがスタンピードを起こしました!!」
亜紀が緊急対策室の扉を開けて、室長机の前までやってきて叫んだ。
「なんだと!?」
その言葉に室内全体が騒がしくなると同時に、新藤が叫んで席を立つ。
「それも三つ同時です!!」
「そんなバカな!?」
さらに情報に新藤は泣きそうな驚き顔になった。これまで日本中の至る所でスタンピードが同時多発していたが、同じ地区のダンジョンが複数スタンピードを起こすということはなかった。
しかし、今回かなり近い三つのダンジョンが同時にスタンピードを起こしたとなれば、信じられないのも無理はない。
探索者組合緊急対策室豊島支部に激震が走った。
「柳、それが真実だという証拠は?」
新藤はあまりに信じがたい情報に真剣な表情で尋ねる。
「誰とは言えませんが、高ランク探索者であり、探知が得意な人物です。それに嘘をつくようなタイプでもありませんし、既に現場に向かっているようでした。まず間違いなくスタンピードが起こっていると見るべきです。ダンジョンは学校側で抑えるので、近隣への被害が出ないように救援を頼むとのことでした」
「ううむ、そう言うなら本当なんだろうな。信じがたいことだが……」
自信を真っすぐ見て答える亜紀の言葉に困惑しつつも納得する新藤。彼はすぐに顎に手を当て暫しの間考え事をするために沈黙した。
「よし!!全員手を止めて聞け!!どうやら神ノ宮学園でスタンピードが起こったらしい。A班、B班、C班、D班、E班、F班、G班、H班は緊急出動だ。I班は何かあった時のために待機。全員武装して、外に集合せよ!!」
『了解!!』
暫く沈黙していた新藤だったが、唐突に顔を上げたと思えば、全員に指示を出すと、全員が真剣な表情で返事をして慌ただしく動き出した。
全員が部屋を出ていくのを見送った二人。
『緊急連絡!!緊急連絡!!神ノ宮学園でスタンピードが起こった模様。至急救援に向かってください。近隣の支部への協力要請も行っているので、応援部隊が来るまでは本隊のみで対応してください。以上』
その時、緊急放送が館内に流れ、亜紀の情報が真実である事が証明された。
「本当だったみたいだな」
「ええ。私は探索者達の協力を仰いでから向かいます」
「分かった。急げよ」
「はい」
お互いに顔を見合わせ、亜紀は自分がするべきことをするため、別行動をとる。新藤はそれを認めて自分は先に準備へと向かった。
「神ノ宮学園でスタンピードが発生しました。Dランク以上の探索者の皆様もご協力お願いします!!緊急依頼を発行しますので、大至急手続きを行い、外に集まってください!!繰り返します……」
アキはマイクを使って館内全体に放送を掛ける。探索者は探索者総動員法によって全員近隣のスタンピードへの制圧への参加が義務づけられているため、ここにいる探索者達は全員指示に従わなければならない。
勿論その義務を履行する報酬として特別支給と言う形で、探索者に一般人からみれば多額の金銭が毎月振り込まれる。
「よーし、柳以外は全員揃ったみたいだな」
数分後、全員が武装して探索者組合の駐車場に整列する。全員の前に新藤が立ち、顔を眺めて隊員全員がいることを確認した。
「まず、神ノ宮学園を起点として十字線を入れて四つのエリアに分ける。A班とB班は北西エリア、C班とD班は北東、E班とF班は南西、G班とH班は南東を担当する。これから来る探索者達と共に街に溢れてしまったモンスターを狩れ」
『了解!!』
「遅くなりました」
「おお、お疲れ様」
新藤が話している所に亜紀が遅れてやって来る。そしてその後ろから探索者達も続々と集まっていた。
「探索者諸君、来た順番に八つの列を作って順に並んでいってくれ!!」
その探索者達に新藤が声を掛けると、探索者たちはその指示に従って列を作っていく。
「右から一班で一番左の君は八班だ。一班と二班は彼ら、三班と四班は彼ら、五班と六班は彼ら、七班と八班は彼らについていき、指示を仰ぐように!!分かったら返事をしてくれ!!」
『了解!!』
ちょうど四十八人集まったので八つのパーティに分け、緊急対策室のそれぞれの班に一つのパーティずつ振り分ける。探索者達も全員頷いてはっきりとした返事を返した。
「問題ないようだな。それじゃあ、途中までは一緒に行動する。俺の後をついてくるように」
『了解!!』
新藤は探索者達の顔を見回して問題ない事を確認した後、神ノ宮学園に向かって走り出した。今回も緊急につき、最短距離を進むが、低ランク探索者もいるため、緊急車両扱いで車道を走る。
「一応音で知らせてはいるが、中には気づかない奴もいる!!気を付けてついてこいよ!!」
町の至る所につけられた緊急警報がなり、緊急対策室のメンバーが道を通る事を知らせて、車両に注意を促していく。
『分かりました!!』
探索者達は声を揃えて返事をし、一路目的地へと走り続けた。
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