第010話 はじけ飛ぶ
そして次の日の四月四日。昨日より少し遅めに目を覚ます。
朝起きると物凄く快調な気分だった。体が軽く、羽でも生えてるような感覚だ。寝てる間に熟練度が上がったせいかな?
『"鼓動"の熟練度が限界に達しました。"鼓動"が"新・鼓動"へと進化しました』
『"代謝"の熟練度が限界に達しました。"代謝"が"新・代謝"へと進化しました』
それを示すかのようにアナの声がした。それも進化とか意味が分からない単語と共に。
-----------------------------------------
■名前
佐藤
■熟練度
・新・鼓動(6/99999)
・新・代謝(6/99999)
・思考(53354/99999)
・呼吸(32356/99999)
・五感(18356/99999)
・直感(18356/99999)
・殴打(313/9999)
・蹴撃(306/9999)
・防御(141/9999)
------------------------------------------
ステータスを確認すると、やはり無意識下で行われてる機能は軒並み熟練度が上がっている。しかもなんか鼓動と代謝が進化している。なにが変わったのか全くわからないけど、悪くなることはないと思うから気にしないでおこう。
今日も今日とて熟練度上げだ!!とにかく熟練度を全部マックスまで上げてFランクダンジョンを出来るだけ早く攻略するんだ!!
俺はそそくさと準備をして弁当をもってダンジョンに向かった。
―パァンッ!!
「は?」
これが今日グミックと戦っての最初の言葉だ。なんでこんな間抜けな声を出してしまったかと言えば、グミックがはじけ飛んだからだ。熟練度ってすげぇ!!
だから探索者の皆はあんなに早く強くなれるんだなぁ。
最近は探索者たちの配信を見ている。皆人間離れした動きをしていて本当にリアルファンタジーって感じで凄い。魔法とかスキルとかバンバン打ってて派手でめっちゃ憧れる。
「はぁ……」
俺は能力値がないからあんな人間離れした動きはできないし、魔法やスキルを使うこともできない。なんかその事実だけでため息が漏れる。
いやいや、熟練度を極めたらできるようになるかもしれない!!
俺は再びグミックを探して幽鬼のように彷徨い歩き続けた。
「うーん。流石に一階は歯ごたえがないな」
俺は午前中に三時間ほど狩りをして休憩所に戻ってきていた。倒した数は六十匹に上り、初日の成果をはるかに超えた。
それもなぜか体がやけに軽くて、ジョギング程度に走りつつモンスターを探していた上に、パンチを打つと一撃で死んでしまうからだ。
確かにモンスターが簡単に倒せるようになったのは嬉しいけど、殴打と蹴撃の熟練度を上げるのが物凄く大変になってしまった。できればもう少し強いモンスターと戦いたい。
俺は次の階層に行くことにした。
―パァンッ!!
「えっと……」
二階層にやってきて初めてのモンスター、ビッグマウスという大きな鼠と戦った結果、戸惑いを覚えている。なぜならグミックと同様にはじけ飛んだからだ。
確かにFランクダンジョンは初心者でも全然問題ないダンジョンだからな。グミックとそんなに強さが変わらなくても仕方ないよな。
俺は自分を納得させてさらに三階層に進んだ。
―パァンッ!!
四階層に進んだ。
―パァンッ!!
五階層に進んだ。
「ギュギュー!!」
―パァンッ!!
デカいグミックみたいな奴がいた。多分ダンジョンボスってやつだ。
でもそいつも一発で沈んだ。
そしてビッグヒールグミをドロップしてくれた。ビッグヒールグミは縫うくらいの傷でも治してくれる回復アイテムだ。非常に優れた効果なので、もっておいて損はないと思う。
俺はその日のうちにダンジョンを踏破してしまった。
なるほどなぁ。だからFランクダンジョンは人がいないのか。
俺は他の探索者が熟練度が上がってすぐにFランクダンジョンなんて攻略してしまうから、さっさとEランクダンジョンに行くんだと納得して、ボスを倒すと現れる魔法陣に乗ってダンジョンの外へと戻った。
「おう、おかえり。今日はどうだった?」
「あ、ダンジョンを踏破しました」
「え?も、もう踏破したのか?」
「はい。こんなに簡単に攻略できるから他の探索者もいないんですよね」
「いや……そんなことは……」
「それじゃあ自分は帰ります。また明日」
「お、おう」
俺は昨日と同じように見張りの人と軽く挨拶を交わす。
なんだか見張りの人が困惑していた気がするけど、気のせいだよな。
そのまま買取所に向かった。
「へぇ~。Fランクダンジョンにしても沢山倒したわね。百八十匹かしら……ビッググミックの魔石!?え!?もう踏破したの?」
「はい。とても弱かったので。他の探索者の人たちは皆もっと強いんですから凄いですよね。もっと強くならないと」
「あ、そ、そう」
「それでいくらになりますか?」
「千八百九十円ね。ビッググミックはEランク相当の魔石を落とすから」
「分かりました。よろしくお願いします」
買取所でお姉さんとやり取りをして千八百九十円の稼ぎを受け取った。
それにしても買取所のお姉さんもなんだか困惑してたな。でもまぁたいしたことないでしょ。
ちょっとした違和感に蓋をしつつ帰路についた。
-----------------------------------------
■熟練度
・新・鼓動(41826/99999)
・新・代謝(41826/99999)
・思考(88654/99999)
・呼吸(44356/99999)
・五感(30323/99999)
・直感(30323/99999)
・殴打(403/9999)
・蹴撃(396/9999)
・防御(141/9999)
------------------------------------------
『"新・鼓動"の熟練度が一定に達しました。"新・鼓動"が四割向上します』
『"新・代謝"の熟練度が一定に達しました。"新・代謝"が四割向上します』
『"思考"の熟練度が一定に達しました。"思考"が八割向上します』
『"呼吸"の熟練度が一定に達しました。"呼吸"が四割向上します』
『"五感"の熟練度が一定に達しました。"五感"が三割向上します』
『"直感"の熟練度が一定に達しました。"直感"が三割向上します』
今日の戦闘でこれだけ熟練度が上がった。
上がるたびにどんどん攻撃が強くなってる気がするし、相手が良く見えるようになってきたし、疲れにくくなってきたし、動きもめちゃくちゃ遅く見えるようになってきた。
殴打・蹴撃は九十程度ずつ増やしたけど、特に変化はない。防御に至っては全くする機会がなかったので全く増えていない。Eランクダンジョンに行くには防御面が不安だ。明日は防御だけに集中してあげるのもいいかもしれない。
『"思考"の熟練度が限界に達しました。"思考"が"新・思考"へと進化しました』
家に帰って風呂に入り、ご飯を食べ、ネットサーフィンをしていると、"思考"が進化した。このままどんどん進化していってほしい。少しでも他の探索者に追いつくために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます