そして物語は動き出す

 身体が熱い。

 のどの渇きと吐き気が特に酷い。

 水を飲もうとも、身体は渇きが収まることはない。

 苦しい。

 僕は奴から受け取った薬を飲む。

 吐き気と喉の渇きが少し収まる。

 もう一つ飲む。

 そうして完全に体調が元に戻る。

 もう少しで僕の目的は達成される。

 ここで優勝し、僕は誰よりも力があることを認めさせる。

 そして魔法大会に出場する。

 

「始まりますねぇ~」


 言葉に振り返ると、僕にあの薬を渡してきた男が椅子に座っていた。


「結構きつそうですねぇ~」

 

 人の顔色を見て楽しそうに見ている。

 ウェルサは少し眉を寄せる。 


「この症状はどうにかならないのか?」

「それは無理ですね~、これは力を与える代償なんですから」


 そう言って持っている瓶を振る。

 ウェルサの使っている薬だった。

 

「無理やり魔力を増幅するんですよ? そりゃ、身体の回路は痛み増しますよ」

「本当に酷使しても問題ないんだろうな?」

「そのために このこれがあるんじゃないですか」


 カプセルを要れた箱を見せてくる。


「最終戦は使いはるんですか?」


 使わなければ勝てるわけがない。

 今やってる試合だって我が愚妹が戦っているが、ボコられているだろう。

 試合は見たが、あのあれを使ったからと言って勝てるとは到底思えないが。


「旦那~」

「なんだ?」

「今のあれより強力なのがあるんですが」

「本当か?」

「えぇ、この薬です」


 そう言って男はウェルサに薬を見せた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る