実力差

 アリエとテイルは二人の攻防に入らなかった。

 正確には入ったとしても二対一対一の乱戦、この状況では入る必要性がないので傍観していた。

 互いに疲弊してくれるのであれば、二人としてもこの試合を楽に勝てて次の試合に余力を残せる。

 激しい攻防が続く、リックは剣でゼノンも剣……互いに剣戟がなり響く。

 

「いい加減、その鎧脱いだらどうだ?」


 リックは一歩下がり息を整えるとゼノンに言い放つ。

 

「そうだな、お前に鎧なんて必要ないか……」


 ゼノンの鎧は対魔法の鎧、剣で戦うリックに使う必要はないのだ。

 ゼノンは鎧を投げ捨てると、打ち付けられた地面にめり込む。


「相変わらず、重そうだよな……それ……」

「お前も着てみるか?」

「はは、生憎要らん物を背負う気はないよ」

「……行くぞ」


 ゼノンの言葉にリックの表情が変わる。

 ゼノンは瞬時に目の前に現れる。

 彼は鎧を脱いだ、即ちそれだけスピードが強化されるという事だ。

 攻撃は最大の防御なり、彼はまさにそれを体現したような戦い方だ。

 閃光のように放つ斬撃がリックを襲う。

 彼の一振りはいつも通りの攻撃だ、しかし彼のの腕がまるで三本は生えていると思えるほど、残像があとから追いついている。

 

「はっや……じゃあ僕も!」

 

 複数の剣のぶつかり合う音、それも同時にいくつもの剣戟の音、まるで数十人が互いに戦っているような音が響き渡る。

 それからどれくらい経ったか、金属音が鳴り響くせいか気分が悪くなる者や酷い者は気分が悪くなり吐く人までいた。

 それを意に返さぬように彼らは剣をふり続けた。

 


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