114話 試合は進み

 試合は進み、オットーの番になった。

 最初の試合のインパクトが強いせいか、他の試合も見応えがないわけではないが、彼女の動きが印象に残ってそれほど強くないように見えてしまう。


「オットーく〜ん! 頑張れ〜!」


 コロナがそう言うと、ニヤけた顔のオットーが手を振る。


「顔に出すぎ……」

「調子に乗って負けなければいいけど……」


 そう言うと、対戦相手のフィオレス剣技科一年次席がオットーの相手だった。


「君、魔法科なの?」


 紋章を見て鼻で笑いながらオットーを見る。

 オットーはと言うと、ぼ〜っとしている。

 コロナの声援が頭の中で再生されているのであろう。


「おい、聞いてるのか!?」

 

 オットーは反応しない。


「えっと、じゃあ、始め!」


 オットーは構えもせず、ニヤけている。

 次席が突っ込んでくる。


「へぇ、こりゃ楽勝だ!」


 そう言って殴ろうとした瞬間。


「オットー君! 負けるな〜!」


 コロナの黄色い声援で我にかえり、殴ろうとしていた次席の腕を掴む。


「……へ?」


 本気で放ったパンチなのだろう……。

 受け止められ、驚いている。


「危ねぇ、危うく当たるとこじゃん」


 そう言うと、オットーは相手に右手で連続パンチを繰り出す。

 喰らって下がろうにも右手を掴まれているので下がることができない。

 一方的な攻撃……やがて彼の意識が途絶えると、オットーは攻撃を止める。

 そのまま手を離すと、綺麗に仰向けに寝かせる。


「審判、終わったよ……」


 そういうと、審判はハッとしてオットーの勝利を告げた。

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