103話

「すごく慕われてますね」

「そんな事ないですよ」


 彼の身体には見えにくいが所々、アザが出来ていた。

 

「その傷……」

「あぁ、少し転んでしまって……」

 

 あの傷は転んだだけでは出来ない。

 実践をしていたからわかる。

 これは殴られたあとだ。


「本当ですか?」


 僕が真剣な表情で見ると、ルルは観念したようにため息をついた。


「お察しの通り、院長にしばかれた後さ……」

「そうじゃなくて……」


 ずっと疑問に思っていたことを口にする。


「何故やり返さないのですか?」


 先程から、彼の言葉には重みがない。

 なんてことないと言った感じで淡々と喋ることが疑問だった。


「な、何を……」

「貴方、体術か魔法を使えるでしょ?」


 あれだけの複数のあざがあれば、普通は立つことは愚か動くことさえままならない筈だ。


「僕は人より頑丈なんだ……」

「そうですか……」

「あ、そうだここの亭主に挨拶しないと……」


 逃げるように奥の部屋へ逃げていった。

 踏み込みすぎた。

 所詮は今回のみの付き合いだ。

 詮索する必要はなかった。


 こういう所、僕はダメだなぁ。


 奥からオリアナが出てくる。


「よし、寝ている子供以外集まってくれ」


 そう言うと、起きている子供達が集まる。


「君達は今日はここに泊まりなさい。 宿は我らが持つから安心してくれ」


 そう言うと、みんなやった〜っと言う感じで大声を上げる。


「こーら、皆起きちゃうでしょ」


 ルミナがそう言うと、皆口に手を当てる。


「まぁ、はしゃぎたくなるのはわかるけど、寝ている子達を部屋に運ぶの手伝って」


 ルルが言うと、子供達はそれぞれの持ち場へ散らばる。

 しばらくして部屋に小さい子供達を運び終えた。








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