83話 出発

 一週間が立ち、遠征期間となった。


「「行ってきます」」


 僕とミリスはそういうと学院へ向かう。

 遠征は一ヶ月それなりに荷物が多い。

 

「ミリス、多すぎない?」


 大きな鞄を持っているミリスに問いかける。


「女の子は色々ものがいるのよ!」

「はぁ……」

「それにしても遠征かぁ〜、王都から出るの初めてだから楽しみ!」


 楽しそうに笑顔で見てくる。


「その気持ちはわかりますね、僕もここにくる時楽しみでしたし」


 楽しみであり、リラとルラと別れるのは悲しかった。


「サウル?」

「すみません。 向こうの幼馴染のことを思い出しちゃって」

「幼馴染?」

「えぇ、リラとルラという双子なんです」

「へぇ〜双子って珍しいね」


 この世界で双子が生まれることは滅多にない。

 生まれても魔力が足らずに病気になったりして生きていることはほとんどない。

 理由はいくつかあるが、一つの魔力が二つに分かれるためだと言われている。


「そうですね、でも性格は全く反対なんですよ」

「双子って結構似るもんなんじゃないの?」

「まぁ、顔は似ていますが全然違います。 リラは活発でルラは大人しいです」


 僕はリラ達について話していると集合場所に着く。

 

「遅い!」

「集合時間までまだあるじゃない」

「私を待たせるなんて何様よ!」


 セシアが何様だよ!

 

 それを言うとぶっ飛ばされるので心の中で訴える。


「遠征ってこんなに多いのね」

「まぁ、これでも厳選したんだけどね」

「ルミリナさん! 師匠!」


 声の方を振り向くとミナとルミリナが居た。


「やぁ、セシア……あの話、考えてくれたかな?」


 以前セシアから生徒会に勧誘されていると聞いたことがあるのでその事だろう。


「あの、私……やっぱりお断りさせてください!」

「理由を聞いてもいいかな?」

「それは……」


 ん?

 なんで僕を見てるんだ?


「まぁ、彼女にも思うことがあるでしょう。 次行きますよ。 じゃあ皆さんまた後で……」


 そう言うとミナ達は生徒達の中に消えていった。


「良かったんですか? 断って……」

「わ、私はそんなことしている暇はないの! もっと強くならないといけないんだから!」

「ふーん」

「何? ミリス」


 ミリスがセシアに耳元で囁くと顔を紅くする。


「な……」


 これだけ動揺したセシアは初めてだ。


「大丈ぶぇ!」


 心配してそう言うと頭突きを喰らわされる。


「えぇ〜」

「近づかないで!!」

「えぇ〜」


 これで近づくと殺されかねないので距離を取ることにした。




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