52話 決着

「まさか怖気付いたの?」


 兄のウェルサに言うと、妹を倒せばいいと思いホッとしたのか、セシアの前へ立つ。

 この子、僕より強いんだけどなぁ〜。


「ふん、お前如きに僕が負けるとでも?」

「減らず口はいいわ、早くかかってきなさい」

「ミナ先生に互いに教わって一度でも僕に勝てたことないくせに!」


 ウェルサは魔法を展開する。

 オーラダダ漏れじゃないか……。

 勝負あったかな。


「水球!」


 先程の奴らより精度の高い水玉が放たれる。

 とは言っても二人より精度が高いだけだが……。


「壁よ」


 目の前に障壁が貼られる。

 

「そんなもの無駄だっ……え?」


 障壁にぶつかり、水球はあっさりと消える。


「この程度?」

「うるさい!」


 そう言うと、水球をどんどん放つ。

 彼女は立ったまま動かない。

 障壁は主に二つに分かれる。

 持続性を重視した脆い障壁と防御に特化した持続性の低い障壁の二つだ。

 持続時間が長ければ長いほど脆くなっていくのだ。

 もう1分ほど経過しているが、彼女は二回しか障壁を張り直していない。

 

「防戦一方か!」


 水球を打ち続けるウェルサ。

 このままだとどうなるかは、予想がつく。

 数分後、その時は訪れる。


「……あれ……」


 倒れ込むウェルサ……魔力切れだ。

 

「な…ぜ……」

「そりゃあれだけ打てば、魔力切れするでしょ」


 魔力は無限ではない……己の限界を知らなかった彼の敗北が決定した。


 試合が終わり、次の試合が始まる。


「では次、コロナ・オットー・レア対テレス・ティア・シアの試合を始める」


 6人が前へ出る。


「準備はいいか? 始め!」


 コロナが魔法を展開する。

 オットーはと言うと、真っ直ぐに突っ込む。

 照準をオットーに変え魔法を放ってくる。

 火と雷の球がオットーを襲う。

 魔力を拳に纏い、貫くと後ろの魔法を放った二人も吹っ飛ぶ。

 中級魔法風拳だ。

 拳に風魔法を乗せ放つ魔法。

 この魔法は武術に精通しているものしか使われない。

 何故なら近距離向けの魔法なので、基本的に後方な魔法使いは覚えないことが多いといわれている。

 二人は壁に激突し、気絶する。

 残り一人の女生徒はじっとオットーを見ている。


「できれば降参してくれると有難いのだが?」

「嫌だよ、降参なんて」

「そうか、残念だな」

「来ないのか?」

「いや、もう終わりだよ」


 オットーが上を見ると、天使がつけるような輪っかが頭上に現れる。

 

「聖束」


 コロナがそう言うと、一直線に女生徒に向かっていく。

 女生徒は避けようとする。

 しかし、避ける方向に軌道がそれ、輪が身体をすり抜けると拘束される。

 魔力を込めて高速を解こうとするが、びくともしない。


「ちぇ〜、私の出番無しかぁ〜」


 レアは残念そうにいうと、教官に手を振る。


「コレでもういいですかね?」

「えぇ、これにて再試験を終了とする!」

 

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