47話 この腐りきった世界

 この世界は腐りきっている。

 上の人たちは下が困っていても見て見ぬふり、国は上の人たちが至福を肥やす為に存在すると思っている。

 まぁ、私自身もその上の貴族なのだから人のことは言えないのだけど。


「はぁ〜」


 大きくため息を吐く。

 自分という存在が嫌になる。

 人の為になると思い魔法学院の門を叩いたのだが、金持ちの大して実力もなければ度胸もない貴族ばかりがいた。

 まぁ、実力のあるクラスには半分ほどだが、一般の人もいるのがせめてもの救いだ。

 ふと、あの少年について思い出す。

 私と同い年で貴族出身ではなく、あの主席のミナ様の推薦ということで期待をしていたのだが……。


「期待はずれだわ……」


 ミナ様は私にとって憧れだ。

 そのミナ様の弟子があんなだなんて!

 腹が立つ!

 

 私は彼女には教えてもらえたが、最後まで弟子としてはもらえなかったというのに……。

 腹が立つと同時に嫉妬してしまう。

 私が手に入れられなかった物を手に入れて私より下だなんて納得がいくわけがない。

 馬車の揺れが収まる。

 家に着いたのだろう。

 ノック音がして私は扉を開く。

 

「おかえり、おねぇちゃん……」


 目の前には私の可愛い妹、クーアがお出迎えしてくれる。


「クーちゃん、まだ春だと言っても寒いのよ……風邪でも引いたらどうするの」

「だってだって、おねぇちゃんを待っていたかったんだもん……」


 上目遣いで言う彼女に何もいえなくなってしまった。

 彼女の頭を撫でる。


「ありがとう……でも、これからはお部屋で待ってくれると嬉しいな。 クーちゃんが風邪ひいたら私が悲しいからさ……」

「うん! わかった!」


 無邪気に笑うクーアに私は癒される。

 この子だけは変わらないでほしいなぁ〜。

 大きくなれば貴族らしくなってしまうのだろうか?

 それは嫌だなぁ〜。


「ねぇちゃん! 遊ぼ!」


 撫でている手を小さな両手で握り、引っ張ってくる。


「はいはい、引っ張らないの」


 私はクーアに合わせついて行くのだった。

 

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