37話 三人の宝物

 結局3000ルーかかってしまった。

 ここまで投げるのが下手かと思うくらい、縄に入らない。

 横を見ると、二人は嬉しそうに腕輪を見ている。

 まぁ、二人とも喜んでくれたのでまぁいいかっと思うサウル。


「ありがとうサウル」

「まぁ、これで勘弁してあげる!」

「喜んでもらえて何よりです」

「それじゃあいい時間だし、帰ろう」

「そうだね、帰ろ」


 サウルの手を握り、歩き出す双子。

 家に帰ると早速三人は先程手にいれた腕輪の魔力連結スリーチェインをはめると三人で手をつなぐ。

 魔力をそれぞれに向かって流すと、腕輪に三つの魔力が宿る。

 三つの魔力はサウルの黒とリラの蒼、ルラの白が刻まれる。

 暫らくして腕輪は完成する。


「これで出来たみたい」

「綺麗な色」


 ルラの言う通り、綺麗な色である。

 魔力とはこんなに綺麗なものだったのかと改めて思うサウル。

 魔力は宝石のように光を反射している。


「魔力ってこんなに綺麗なのね」

「そうだね」

「それよりサウル」

「なに? ルラ」

「大事にするね」


 そう言うと、双子とサウルは暫らく談笑し、寝床に着くのだった。


 

二か月後……。

 遂に明日、サウルは王立魔法学院へ出発する。

 二人と過ごすせる最後の日だ。

 ここからは六年ほど会えなくなってしまう。

 いつものように過ごし、いつものように寝床についているとドアのノックが聞こえる。

 ドアを開けると、ルラが立っている。


「どうしたの?」

「ちょっといい?」


 そう言うと、ルラは部屋のベッドに座る。


「どうしました?」

「今日、最後でしょ?」


 きっと最後だから、夜更かしして話したいのだろう。

 

「何か飲みますか?」

「う~んっとじゃあコーヒー」

「了解」


 サウルは飲み物を取りに行こうとするとドドドっと走ってくる足音がする。

 足音が止まるとバンっと扉が音を立てて開かれる。


「夜も遅いんだから静かにしなよリラ」

「………」


 無言の笑顔でルラを睨むリラ。

 サウルはそのまま立ち去ろうとする。

 理由は明白、何か火花の様なものがバチバチっとしているように感じたからだ。

 触らぬ双子に被害なし。

 そう思いながら下へ向かうサウル。

 

 リラはサウルが下に行ったのを確認するとルラに呆れたような顔をする。


「また抜け駆けして」

「ちゃんと起こしたよ?」


 どうしてここまで強かな子に育ったのかなっとリラは思う。

 昔はリラの後ろについてないと泣き出してしまう子だったのにサウルにあってからこの子は変わった。

 物怖じしなくなったし、一人で何でもこなせるようになった。

 いや、時々サウルの助けがあっただろうが、それは彼女自身の成長の一部でしかない。


「全く、昔は可愛かったのに」

「あら、今は可愛くないみたいね」

「まぁね、こんな抜け駆けするような子に育つと思わなかったわ」

「私はリラちゃんの方が可愛いと思うわ」

「そ、そう?」


 ルラがそう言うとリラは照れたような仕草をする。

 扱いやすいなぁ~っと思いながらルラは言葉を続ける。


「うん。 活発で何事にも積極的で自分のしたいことを正直に言えるのは、とっても尊敬してる部分だから」


 これはルラの正直な気持ちである。

 自分の性格面においてリラに劣っていると思っているルラに近づき、おでこを指でぺチンと叩く。

 

「な、何?」

「今、何か自分を卑下にしたでしょ?」

「そんなことは……」

「そう? ならいいけど、私だってルラのそのお淑やかさに憧れてるんだから」


 ルラがリラを憧れているようにリラもまたルラに憧れているのだ。


「お互い、ない物ねだりね」

「だね」


 そう言って互いに笑い合うと、サウルがコーヒーを三つもって入って来る。


「お待たせしました」

「おそ~い!」

「無茶言わないでください」


 そう言うと最後の夜を三人で楽しむのだった。


 

 

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