18話 仲直り?
僕はあの後少し離れた席で一人、本を読んでいた。
意味わからん、僕が何をした……。
正直自分でも心当たりがない……。
僕は彼女の方を見ると、ルラはミリーと楽しそうに話している。
やっぱり、僕が原因なのか……。
そう思っていると、ルラと目が合う。
ルラは僕の方を見ると、またタコのように顔を真っ赤にし、眼を背ける。
確定した、僕が原因だ……。
しかし、原因は何だ?
訳が分からず僕は本を読み続ける。
僕が今読んでいるのは、投影魔法についての本だ。
投影魔法はその名の通り、物をコピーしたり、自分の理想の物を魔力で編む物だ。
これは術者本人の記憶力や魔力量によって変わる。
本人のイメージの正確さによって、武器の強度が変わったりする。
魔力で編むので維持にも魔力を使うから、幾ら適性があろうと魔力量が少なければ直ぐに魔力切れを起こすとのこと……。
だから使い手が少ないのか……。
魔力量が必要なのと、武器の知識量や記憶力が必要になるのだから、若いうちが全盛期なのだ……。
これって、若い内に育たないと使えないじゃないか……。
その他にも物を握った状態で魔力を通し、構造を読み取ることも可能だ。
とりあえずは魔力については置いといて、イメージが大事か……。
本を読み続けていくと、いつの間にか日が傾いていた。
「サウル~。 そろそろ閉館時間だから帰りましょう?」
「はーい!」
ミリーの元へ向かうとルラが見当たらなかった……。
「ルラは?」
よく見ると後ろの方に母の尻尾……ではなくルラの髪が見える。
「ルラちゃん、いつまでも隠れてないで……」
そう言うと彼女は僕の前にオドオドしながら現れる。
「ルラ……僕、何かしました?」
彼女は首に横に振り僕に詰め寄る。
「そんなことはないよ! 私は……」
顔が近い……。
彼女もそれに気づいたのか急いで離れる。
「あうぅ……」
彼女はまた黙ってしまう……。
「まあまぁ、取り敢えず行きましょう?」
「ルラ……」
そう言うとルラは僕の方を見つめる。
僕は彼女の方へ手を差し出し、
「行こう!」
彼女は恐る恐る手を伸ばそうとするので一気に僕は彼女の手を掴む。
「二人とも~」
「は~い」
僕は彼女の手を引っ張り図書館を後にした。
――――――――
図書館を後にすると僕達は宿屋でウオラ達と集合し、受付へ向かう。
「図書館はどうだったの?」
リラが僕に向かってそう言う。
「ん? まぁ、主に本を読んで自分の魔法についてお互い勉強してました」
「ふ~ん……」
そう言うリラはルラの方を見ながらそう言うと、ルラの方に向かっていく……。
何か怒ってなかったか?
気のせいかもしれないが、何かそっけなくルラの方に向かっていく彼女は何処か怒っているように見えた。
ウオラとミリーは受付を済ませ、僕達の方へ向かってくる。
「それじゃあ風呂屋行くか!」
僕達は部屋に荷物を置き、着替えをもって風呂屋に行き、それぞれ風呂に入る。
「ふぅ~」
風呂に入ると体から力が抜け、中にたまった空気が吐き出される。
「ふぅ~、気持ちいいな……」
「そうですねぇ~」
「それよりそっちはどんな感じだったんですか?」
「あ~、まぁ楽しそうだったよ……」
「?」
そう言うとウオルは僕の方に顔を近づけ小声で、
「いいか、サウル。 女の子のショッピングは骨が折れるから気を付けるんだぞ。」
「………?」
「特にあの子はミリーと違い長い、お前も覚悟しておけ」
「母様の時と言われましても、僕は知りませんし……」
「まぁ大人になったらお前にも分かるさ……」
「はぁ……」
そう言うと僕達は風呂に上がると三人はまだ出てきていなかった。
僕達は彼女達が出てくるまで待つ。
暫らくして三人が楽しそうに女湯から出てくる。
「お待たせ~」
ミリーがそう言うと五人で風呂場を後にする。
「ねぇサウル、今日はあれ持ってきたの?」
「もちろん!」
乾かしたばかりなのか、白銀の髪が仄かに湿って光を放っているリラがそう言うと
「リラ、またやるの? 勝てないのに……」
髪を下ろしているルラが、悪戯っぽい顔で彼女にそう言う。
その仕草は風呂に入って仄かに赤みがかった顔で言うので、六歳なのに何故か大人っぽく見えてしまう……。
「う、うるさい! 今日こそは勝つんだから!」
ルラに向かって指を差して宣戦布告するリラ。
しかし、彼女はそんなことはあり得ないと言った顔でリラを見ると、リラは「ぐぬぬ……」と悔しそうに彼女を睨んでいる。
「まあまぁ、帰ってから決着付けましょう……」
「え? 今日は貴方達は勉強よ?」
ミリーの言葉に僕達は「?」っとした顔で彼女を見る
「何の勉強ですか?」
「魔法の勉強よ。 三人とも今日から始めるわよ」
「え、私も?」
リラは正直、じっとして何かをすることと勉強することが苦手だったので、とてつもなく嫌そうな顔をする。
「それはそうよ、だって戦士にだって身体強化魔法があるんだから」
「え、私は剣だけで……」
「え~、ウオルと私セットで教えるはずだったんだけど……」
「私そんな話聞いて……」
「わ、私も……魔法だけって……」
「ルラちゃんには槍術を覚えてもらうわ」
「槍術?」
「魔法士になるなら接近戦も覚えておかないと……」
そう言うとルラは考込む。
「私にもできるでしょうか?」
「私だって非力よ……でも、あれ見たでしょ?」
あれとはこの前の盗賊の件の話だ。
確かに彼女は見た目はどこにでも普通の女性だ。
なのにあれだけの人数のごろつきを一瞬で倒したのだ。
「やって見て損はないと思うわよ」
ミリーがそう言うと、ルラは意を決したようにミリーの方を見て、
「やります!」
「よし、じゃあ魔法の訓練を始めましょうか? リラちゃんはどうする?」
そう言うとリラは断れるわけがない……。
ルラがやると言って彼女が断るのは彼女の性格が許さないだろう……。
「………やります」
そう言うと僕達は部屋に入り、早速魔法について教わるのだった。
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