第64話(EP6エピローグ)

 エメラインを馬車のもとまで連れていくと、付き人たちは目を丸くした。


 彼らはボロボロの姿になった少女を引き取ると、ケヴィンに何度も頭を下げた。


 そして少額のお礼では申し訳が立たないから、屋敷で正式にお礼をしたいゆえ、街まで同行してくれないかと言った。


 逆に困ってしまったケヴィン。

 彼は自身が旅の途中であることと、仲間が酒場で待っていることを伝え、その提案を辞退した。


 付き人たちは少年の無欲ぶりに感嘆しつつ、彼にわずかばかりの礼金を手渡した。


 このとき馬車の中に保護されたエメラインは、ケヴィンを陶酔するような眼差しで見つめていたのだが、当の少年がその視線に気付くことはなかった。


 エメラインの引き渡しを終えたケヴィンは、酒場へと戻った。


 少年はお腹が減っていた。

 注文した料理は冷めているだろうなと思いつつ、酒場の扉をくぐる。


 テーブル席では、三人の先輩冒険者たちが先に食事をしながら、ケヴィンを待ち受けていた。


「おー、少年、お帰り。結構かかったな」


「ケヴィンの料理も来てるぞ。ちょっと冷めてるけどな」


「どうでした、ケヴィンさん? こう言ってはアレですけど、わりと面倒くさそうな女の子に見えましたけど」


「えっと……ルシアさんの言っていることは、よく分かります。でも、何とかなりました」


 家族のような団欒の雰囲気に迎え入れられたケヴィンは、自身も席に着きつつ、何があったのかを先輩たちに話した。


 話を聞いた三人の冒険者は、呆れた様子を見せる。


「……夕飯を注文してできあがるまでのちょっとした時間で、事件を一つ解決してくるとか、少年どんだけよ?」


「あはは……相変わらずすごいですね、ケヴィンさんは。運命にまで愛されていそうです」


「さすがケヴィンだな! でもケヴィンの料理は冷めたぞ」


「そこは運命に愛されとらんのな」


 ジャスミンのその言葉で、場に笑いがもれた。


 ケヴィンは少し憮然とした様子を見せつつ、冷めた料理を口に運んでいく。


「俺、そもそも運命神の信仰じゃないので。嫌われているのかもしれません」


 少年のその言葉に、再び和やかな笑いがあふれたのだった。

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