第42話 それでは後は若い人同士で……えっ、違う?

 



【原因判明。片桐氏買い物の約束を破る、3回連続3回目】


 ピロン


【はぁ!? マジ? こっちもそれとなく聞いてみたんだけど、こっちゃん無理していつも通りに振舞っててさ。情報が掴めなかったよ。それにしても……片桐君サイテー】


 おぉ、怖っ。てか、女子からしたら誰でもそんな反応するよな。これは思いの他深刻かもしれん。


【とりあえず、朝から謝罪っぽい事はしてるみたいだから、その辺は早瀬さんも分かってると思う。けど、朝の様子を見る限りなぁ】

【当たり前でしょ? デートすっぽかされたら女の子はどんだけ傷つくと思ってるの!?】


 ん? デート? 買い物の間違いじゃね?


【まぁ、女子は買い物好きだもんな】

【えっ? 月城君本気でそんな事言ってんの?】


 はっ? いやいや、事実を述べてるまでなんだが? 女子は買い物大好き。それをすっぽかされたら酷く傷つくし、3回ともなれば仏の早瀬さんさえ激怒する……違うか?


【本気って……そうじゃないのか?】

【月城君もあんまし女子の気持ち分かってないね】


 はっ? いやまぁ、女恐怖症ですし……女子の気持ちは上辺だけ理解できてれば問題ないですし?


【あのね……月城君の話聞く限り、早瀬さんは片桐君との買い物の約束破られたんだよね?】

【そうだな】

【早瀬さんと片桐君が一緒に買い物って、それは世間一般的にデートって言うのよ!】


 ん? デート……? いや、デートって男女で遊びに行くっていう総称なんであって、これはただ単に買い物への付き添いって事じゃないのか?


【えっ、そうなの?】

【当たり前じゃない! 女の子なら誰でもそう思うよ! それに誘ったのがこっちゃんだったら相当勇気必要だったと思うよ? それを……3回も破るなんて最低よ! 女の敵よ? 片桐君は! 多分こっちゃんだからここまで許してくれてたと思うし】


 それには同意見だね。それにしても……この行為は女の子にとってデートって事になるのか。それは分からなかったなぁ。

 ただ、そうなると今回までに栄人がやらかしたのはデートの約束を3回も破る……あれ? 男の俺から見てもこれはイカンだろ? さすがに酷くないか? 買い物からデートという単語に変わっただけで、こんなにも事が重大に感じるとは。まぁ、とりあえず男性陣が出来る事と言えば、謝り続ける事だけだからなぁ。


【了解、早瀬さんがあんなにも怒ってた理由が分かった。けど、こっちから出来る事と言えば謝り続ける事だけだ。それは続けるように何とかするから、日城さんは、少しでも栄人を許してくれる様に上手く促してくれ】

【分かった。けど促すって……難しいよ?】


 んー確かになぁ。解決できれば謝罪を受け取ってもらえるかもしれないしけど、どう持って行くかだよ。こればっかりは日城さんに頑張ってもらうしかないだろうな。


【確かに難しいけど……2人の仲を元に戻すにはこれしか方法なくないか? 俺も栄人からそれに繋がる情報がないか聞き出してみるから、日城さんも頑張ってみてよ】

【うぅ……わかった。頑張ってみる】


 さてと、日城さんには頑張ってみるとか言っときながら……ぶっちゃけ当てがなさすぎるんだよなぁ。ちょくちょくあのバカイケメン委員長に話聞くしかないんだろうけど、多分あいつ俺以上に女の子の気持ちってやつ理解できてないと思うし、己の行動で早瀬さん傷つけたって自覚がどの程度あるのかすら分からんからなぁ……あぁ! めんどくさいぃぃ!!




 って、思いながらもちゃんと聞きましたよ? 色々と。その結果もうすでに放課後ですし。まぁ、結論から言うと、それらしき原因は分かった気がする。当の本人はグラウンドで見た目はいつも通りに部活やってるけどね。


 まずは、なぜ早瀬さんが栄人を買い物に誘ったのか。これは簡単にわかったなぁ。


『なんか、日頃の感謝の気持ちも込めて月城君と日城さんに何かプレゼントしたい。男の人の喜びそうな物分からないから付き合って? って言われたんだ』


 これから分かるのは、早瀬さんはやはり仏様、いや女神様という事だ。日城さんはともかく俺にまでプレゼントをくれようとしてたなんて……栄人サイテーだなマジで。


 それと、なぜ栄人が3回も約束を破ったのかについてだけど……。


『最初はさ、先輩にいきなり自主練付き合えって言われて断れなくて、2回目の時は4組の古舘が相談があるって深刻な顔で言うもんだから。3回目は……6組の斎藤さんの練習に付き合って……』


 これ聞いて唖然としたね。馬鹿よ、かなり馬鹿よ? 特に3回目! 過去2回約束破っておきながら、3回目の理由が女子の自主練の手伝いって……類い稀なる馬鹿でしょ! さすがに俺でもそれは分かるわ。さすがに引くわ。これ聞いた瞬間さすがに言ったよね。


『お前さ、俺が言うのもあれだけど……早瀬さんの事なんだと思ってんの? さすがに酷すぎだろ。中学からの知り合いかどうかはしらんけど、親しき仲にも礼儀ありだろ? 早瀬さんだから許してくれる。そう思ってたんじゃないか? 早瀬さんの優しさに甘えすぎなんじゃないか?』


 この時の俺は多分、過去1で格好良かったと思う。いやマジで。とまぁ結構キツめに言ったけど、その辺はさすが栄人だったな。自分がダメだったって感じてたのかもしんないけど、自分の非を認めて、早瀬さんに謝ってくるって言ってたもんなぁ。まぁ、それで上手くいけば万々歳なんだけど……


 ピロン


 ん? 返事早っ! 今の調査結果をさっき送ったばっかなんですけど?


【大体の話は分かった。やっぱり片桐君の行動が原因だったかぁ、こっちゃんも溜まりに溜まってたのが爆発したみたいだね。あれからこっちゃんに話してみたんだけど、やっぱりいつも通りの姿見せようと強がっちゃって、全然話聞けなかった。ありがとう月城君】


 結局、早瀬さんは日城さんに話さなかったかぁ。まぁ多分早瀬さんの事だから、日城さんに心配かけたくないと思っての行動だよね……まったくどこまで優しいんだか。


【まぁ栄人も分かってくれたと思うし、きちんと謝るだろうから俺達はこの辺で良いんじゃないか?】

【そうね……あぁ、早く元の2人に戻ってくれたら良いなぁ。あっ、今日部活休む事先輩に言っといたから。思ったより軽い反応だったから安心して】


 おっ、サンキュー。それにしても思ったより軽い反応って……何それ怖い。なんか明日辺りとんでも記事の依頼とかされそうなんですけど? 


【ありがとう。明日は行くよ】

【了解。また明日ね】


 うわっ……明日行きたくねぇ。まっ、今日はかなり疲れたから、早く帰って寝るとしますか。ふぅ、最近ストレスがかなり……


「はぁ……」


 ん? この声は……もしかして?

 通り過ぎようとした渡り廊下。けど、その先で聞いた事のあるようなそんな誰かの溜め息が耳に入った。その溜め息は、自分の記憶が確かなら……


 ゆっくりと渡り廊下の方へ歩いて行くと、そこにはやはり誰かが居た。渡り廊下から外へと続く短い階段みたいな所に座っているその人は、タオルで顔を隠しながらうなだれる様にしている。

 顔は分からないけど、その髪の長さにその後ろ姿、そして少し漏れた声……それはどこかで見た事も、聞いた事もある気がした。


 まさか……ね? 違うよね? いやいや、声掛けて違う人だったら恥ずかしいしね……でも待てよ? タオルで顔隠してんだから、もし違ってても違う所に居る友達に話しかけた事にすればって、なに悩んでんだよ俺。後は2人に任せようって言ったばっかじゃねぇか、下手にこれ以上首突っ込むんじゃないよ。首を突っ込むな……目立つな、後は2人に任せろ……


「はぁ……」


 あぁ、もう! ずりぃよ早瀬さん。目の前でそんな悲しそうな溜め息しないでくれよ! まったく……これだから女子は嫌いだ!


 くそっ……くそっ! あぁ、通り過ぎる事の出来ない自分に腹が立つよ……。



「早瀬……さん?」



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