第30話 一夜明けて
「お世話になりました」
「どうもありがとうございましたー」
ふぅ。なんとか無事に一夜を過ごす事が出来たなぁ。露天風呂から帰った後、奇跡的にイビキ野郎が静かになってたから寝れたけど、もしそうじゃなかったらって考えるだけで恐ろしい。それに俺が寝るまで、桐生院先輩は部屋に来なかったみたいだけど……たぶんイビキ野郎が嫌だったに違いないな。
「また来いよ?」
「はい。透也さん、桃野先輩昨日はお話ありがとうございました」
「どうって事ないよぉ。また聞きたい事あったらストメしてね?」
「はっ、はい! 桃野先輩とストメのID交換できるなんて……嬉しいです」
でたー。朝からヨーマのキラキラ。そういうキャラだって認識されちゃうよ?
「彩花ちゃんー!」
ん? 誰だ? 聞いた事ない声だな……。
「この声……女将さん? って、その赤ちゃんは!?」
女将さん?
「よかったぁ。ごめんね? 昨日この子が熱出しちゃって、出迎えできなくて。いらっしゃい。そしてまた来てね? あらっ、采くん。いつ見てもイケメンね」
「女将さんご無沙汰……」
「その前に女将さん! その赤ちゃんは? まさか……」
「えっ? この子? あっ、初めましてだもんね? 3番目よ?」
「そっ、そうなんですか!?」
うわっ、なんか一気にガールズトークに突入したぞ? てか、女将さん? 確か宮原さんのお婆さんが大女将だよな? つまり、女将さんて事は……透也さんのお母さん!?
「女将さん千那ちゃんもう大丈夫なんですか?」
「あっ、真白ちゃん。昨日はありがとうね。お義母さんも色々ありがとうございます」
「可愛い」
「見て? 恋ちゃん、笑ってるよ?」
「きゃぁー抱かせてくれますか?」
マジかい。めちゃくちゃ若くないか? しかもこれで3人の子持ちとか……恐ろしい。それにおーい、男どもはどうしたらいいんですかー。蚊帳の外ですよー。
「あらあら、あなた達が新聞部のニューフェイスね。彩花ちゃんが気に入ってるだけあって皆とっても可愛いわね。初めましてーお姉さん達。ちなって言います」
「きゃぁー可愛い」
はは……こりゃ時間かかるわ。野郎どもは少し黙って……
「うおーめちゃ笑ってる!」
てめぇは行かなくていいんだよイビキクソイケメン!
「なんだか女子同士盛り上がってるな」
「そうですね」
「あっ、そうだ。ここで会ったのも何かの縁だし、俺達もストメのID交換しようか? 月城君」
「そうですね。是非お願いします」
あぁ、出会いってなんかいいなぁ。しかも透也さんは話しやすいし、さらにここの次期14代目だっけ? 知り合っておいて損はないよね?
「また来年も皆で来たいよね」
「そうですね。部屋も料理も特に露天風呂最高でした!」
「ははっ、ありがとう。こんな田舎だから、それ位豪勢にしないと閑古鳥鳴いちゃうしね」
「またまたぁ、週末は確実に満室、平日でも部屋を取れるか微妙な人気宿でしょ? ネットを甘く見ないでください?」
「さすが采くん、抜かりなく見てるねぇ。でも、彩花ちゃんの所には到底敵わないからね」
まぁ、全国的ホテルチェーンだからなぁ。でも、この雰囲気っていうか土地の価値は凄いと思うけどね。ないとは思うけど、この辺りにグランド・リーフが進出したらやばいだろうな……
「ところで透也さん、昨日の話なんですが……」
「相変わらず熱心だね。采くんは」
ありゃ、こっちはこっちで昨日の話で盛り上がり始めちゃったなぁ。帰りのバスとか大丈夫か?
「あっ、月城君?」
ん? この声は……
「ごめんね、ちょっとお話いいかな?」
桃野さん? なんだろう?
「あっ、もちろん。何でしょう」
「あのね、もし違ってたらそれはそれで良いんだけど……もしかして月城くん、今かなり大きな問題抱えてない?」
「えっ?」
問題? 逆に心当たりありすぎてどれの事か分からないんだけど?
「昨日ね、私達が体験した事話したじゃない? それまで私霊感とかそういうの全然なかったんだけどさ、あの経験してからその……その人が今どんな状態なのかとか、これからどうなって行くのかがなんとなく感じれるようになっちゃって」
はっ? 冗談……ではないかな? 桃野さんがそんなの事言うとも思えないし。しかも、桃野さんの言う通り、実際問題抱えてるしね。
「あははっ、分かります? てか、それって凄いですね。なんか才能開花! みたいで」
「そうかな? でも、知りたくない事でも自然と感じちゃうからさ……」
あぁ、そういう事か。例えば親しい人が不幸になるのを感じ取る場合もあるって事か? それを話して解決出来ればいいけど、必ずしもそれを信じてくれるとも限らないしね。ふざけんなっていう人も居るし……そうなれば亀裂が入る。難しいかも。
でも、俺にその話をしたって事は……何とかなるからじゃない? もしかして!
「なるほど……でも俺の場合は何とかなりそうだって思ったから、話してくれたんですよね?」
「ふふ、月城くんって本当に不思議だよね。なんかのんびりしてると思ってたら、いきなり鋭い事言うし、その通りだよ? どんな問題かまでは分からないけど、その問題はきっと解決するよ」
不思議って……桐生院先輩にも言われたなぁ。なに? そんなに俺って不思議なの? まさか他の人から見たら不思議ちゃんなの?
「だったら良かったです。安心しました」
「どんな経緯かは分からないけど、新聞部に入れて良かったね? ここの皆が問題解決のキーパーソンだからさ」
はい? 新聞部が? むしろ問題の一因を担っている気が……
「はは、おかげで宮原旅館に来れましたし、桃野さんにも、宮原さんにも出会えましたしね」
これだけは事実だ。新聞部だからこその出会いだろう。
「そうだね。あっ、だったら記念にストメ交換しよっか? 何かあったらアドバイスぐらいは出来るからさ」
そういうのを感じれる人のアドバイスとか最高じゃんか! むしろこちらからお願いしたいです!
「桃野さんさえ良ければ是非お願いします!」
「はい。これで可愛い後輩が1人追加だぁ」
いや……桃野さん、マジで可愛いっすね。最高です!
「えぇ! そうなんですか? 采! みっちゃんの実家お隣の酒蔵なんだって!」
「ん?
鷹野先生って……確かヨーマの担任の先生じゃなかった?
「それはいいじゃない。それにしてもびっくりよね?」
「そうなのよー。それにみつきちゃんのお姉さんの子どもと、うちのちな同じ日に生まれたのよー。せんたくんって言うんだけどね」
「えぇ! それって凄い」
「すごいです!」
うわっ……さらにに盛り上がってるじゃねぇか。
「あっ、そっか……先生自分の事あんまり話さないもんね。先生は元気かな? 3年の時かなりお世話になったんだ」
「あっ、そういえば鷹野先生って桃野先輩が3年の時の担任だったんですよね? あれから全然変わりないですよ? ある意味ポジティブ、ある意味うるさいです」
「変わらないな、鷹野先生は」
おいおい、なんだか遠くへ来たはずなのに気付けば知ってる人だらけじゃないか?
世間って狭いなぁ……。
≪……台、次は……≫
「すぅ、すぅ」
「ぐごー、ぐごー」
相変わらずうるせえな! てか、皆はしゃぎ疲れたからって、良く寝れるな? 信じられないわ!
まぁでも、良い遠方取材だった気がする。良い旅館に泊まれて、宮原さんと桃野さんにも出会えて、旅館の皆さんも優しくて……出会いが良かった。なんか日頃の疲れも吹っ飛んだ気がする。
「なにか大きな問題抱えてない?」
「その問題はきっと解決するよ」
「どんな経緯かは分からないけど、新聞部に入れて良かったね? ここの皆が問題解決のキーパーソンだからさ」
そっか。最後の一言はまるで信用できないけど……解決するのか。大きな問題って女恐怖症の事だよな? 本当かどうかは分からないけど、そう言ってもらえるだけで少しは安心するかも。
それに、新聞部がキーパーソンかぁ。まぁ、おかげでこんな小旅行みたいな体験も出来たし、ヨーマのおかげではあるか? ん? 待てよ? そもそもヨーマに会ったのは……日城さんから逃げたからじゃないか? なら間接的に日城さんのおかげ? ……考えすぎか。
まぁとりあえず、ダラダラ過ごす予定だった夏休みだったけど、思い出っぽいものも出来たし、これはこれで良かったかもしんないなぁ。こればっかりは皆に感謝……? かな?
これからも……宜しくお願いします。
「ぐごーぐごー」
さっきからうるさいんだよ! いい雰囲気を返しやがれ!
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