340:策士なの
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯優希くん、終わりましたよ⋯⋯」
何故か息が荒くなっている華さんが僕の日焼け止めを塗り終わったと教えてくれた。
「あ、ありがとうございます!」
正直なところ、塗ってもらうの少しくすぐったいけど、ちょっと気持ちよかったり。それを華さんに言ったら大変なことになりそうだから言わなかったけど。
「それにしても綾乃ちゃん遅いですね⋯⋯私も早く日焼け止め塗ってしまいたいんですけど⋯⋯」
華さんは少し困ったような表情で周りを見ながら呟くように僕にそう言った。
「まさか本当に優希くんに塗らせようとしてるとか⋯⋯いや、流石に考えすぎですよね?」
「えぇ!?ぼ、僕がですか!?」
「あの綾乃ちゃんの動き的にそうにしか見えないんですよ⋯⋯」
「そ、それは確かに⋯⋯」
「か、かといって一人で塗るのは限界がありますし⋯⋯」
そう言いつつも僕の方をチラッと見てくる華さん。
「せ、背中だけでも良いのでお願いしても⋯⋯良いですか?」
「えっ」
「そ、そのっ、優希くんになら私は触られても平気と言いますか⋯⋯も、もちろん!優希くんが嫌だったら良いんです!綾乃ちゃんが戻ってくるまでパラソルの下で待ってますから!」
「わ、わかりました!せ、背中だけですからね!」
「も、もちろんです!それ以上はお願いしませんから!」
そういうわけで、僕は華さんに日焼け止めを塗ることになってしまった。⋯⋯流石に女の人の肌を手でしっかりと直接触れるなんて初めてだから、緊張しちゃう。
♢
「そ、それじゃあ塗りますよ?」
「はい!⋯⋯あっ、ちょっと待ってくださいね」
華さんはそう言うと、水着の紐を緩めて外してしまう。
「は、華さん!?何して!?」
「こ、こうしないとしっかり塗れないですよ?
さっき綾乃ちゃんに塗ってもらった時も⋯⋯その、外してましたから!」
「う、うぅ⋯⋯わかりました!」
こうなったら覚悟を決めて、ささっと塗っちゃおう!それが良いに決まってるよね!
そして日焼け止めを手に適量取り、華さんの背中に塗りつけるように手のひらで広げていく。
「ひゃっ!」
クリームが冷たいからか、華さんが声をあげる。その声が妙に色っぽく聞こえてなんだか変な感じに。
「(聞こえないフリ⋯⋯聞こえないフリ⋯⋯)」
そう考えながら塗っていると、ふとあることに気付く。
「(背中って⋯⋯どこからどこまで?)」
そう考えたら僕はどこまで塗れば良いのかわからなくなる。
「⋯⋯優希くん?どうかしましたか?」
華さんが動きの止まった僕を不思議に思ったのか声をかけてきた。
「い、いえっ!な、なにもないで⋯⋯」
「塗りがまだ甘いの」
突然そう声が聞こえると、綾乃さんが僕の手を掴んで、華さんの背中の横、胸のある位置へと腕を動かしてくる。突然すぎる展開で、僕はろくに抵抗も出来ずに、触ってしまう。⋯⋯華さんの柔らかい場所を。
「ゆ、ゆききゅ!?!?!?」
「!?!?!?!?」
「ふっふっふ⋯⋯作戦成功なの」
僕は触ったらいけない場所を触れたことで驚いてしまって、手を滑らせてしまった。
すると、僕らに日陰を提供してくれていたパラソルは倒れてしまい⋯⋯僕は華さんの上に覆い被さってしまった。
♢
「塗りがまだ甘いの」
綾乃ちゃんのその声が聞こえた瞬間、私の胸に優希くんの手が触れたのに気が付きました。
「(わ、私のむ、胸に優希くんの手が!?)」
触られているのが優希くんだということもあってか、私の体に電流のような勢いで刺激が走ります。
「ゆ、ゆききゅ!?」
呂律も回らないくらい、テンパってしまいました。普通ならここで逆転して良いはずなのに。大人の余裕を見せて優希くんを手籠にするのが良いはずなのに⋯⋯って私は何を考えているんでしょうか?
思わず何があったのか確認しようとすると、優希くんの手が滑ってしまったのか、倒れてこようとしていました。
私は運が良いのか悪いのか、上を向く時に水着の事が頭から抜け落ちていました。
ふにゅっと私の胸に何かが埋まる感触を感じます。
しかもご丁寧にパラソルが倒れ、周りの目線を完全にシャットアウトしてくれています。
⋯⋯これは完全にラッキースケベってやつですね。
「むぐぅ!?」
優希くんは驚きのあまり体を動かして私から離れようとしています。
でもこれはきっと綾乃ちゃんが私にくれた、優希くんへのアピールチャンスってコト⋯⋯なんですよね?きっと。
私は⋯⋯私は優希くんを⋯⋯
抱きしめて⋯⋯
「(出来ませえええええええん!!!!)」
「(そんなの私がはしたない人だって思われちゃうじゃないですか!確かに優希くんを誘惑したいとは思いましたけど⋯⋯それに初めてはその、もっと良いシチュエーションでと言いますか⋯⋯ってそんな事言ってる場合じゃないですよね!?私はどうすれば良いんですか!?もう、綾乃ちゃんは何をやって⋯⋯あぁ、最高ですかぁ!?!?天国と地獄を同時に味わってますけど、綾乃ちゃんにはナイスと言わざるを得ないですね!?あぁこのまま抱きしめ続けたい!私のフェロモンを優希くんの鼻腔に送り続けてトロ顔になるまで胸に埋めたままにして、蕩けたところを襲ってしまいたい!でも私の理性がそれを許してくれません!神様私はどうすれば良いんですか!?こんなの生殺しすぎますよ!?)」
この間実に1秒と言うところでしょうか?私はなんとか理性を抑えて優希くんを軽く抱きしめながら起き上がります。まずは水着をちゃんと着ないと、周りに見られてしまいます。幸いパラソルは大きいのと、正面側はパラソルで隠れて見えていません。
ただ優希くんには見せてしまったかと思っていましたが⋯⋯どうやら優希くんは目を瞑っているようですね。そんな紳士的なところも好きですよ?
「もう、だ、大丈夫ですよ」
「ひゃ、ひゃい!」
はぁ、こんな反応も含めて可愛い⋯⋯本当に。
でも、今の私の状況をゆるママさんと比べると⋯⋯
このまま襲ったほうが、くっつけるんじゃないか。
そんな邪な考えも浮かんできます。
でも⋯⋯やっぱり。
「(正攻法で勝ちたいじゃないですか)」
だから、禁じ手は使わない。
それが私のポリシーだから。
「(でも、綾乃ちゃんには後でご褒美をあげないといけませんね)」
何をあげましょうか?ふふふ⋯⋯
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どうも、作者のにとりんです。
今年の冬コミの時期にお休みが取れそうなので人生初のコミケサークル参加してみたいな⋯⋯とか考えながら過ごしていました。
え?何を書くかって?
エッ?
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