338:日焼け止め

「はぁはぁ⋯⋯わざとやってるわけじゃないのは分かっていますけど、発言には気を付けた方が良いですよ⋯⋯」

「危うく理性が崩壊するところだったの⋯⋯」


 二人は肩で息をしながら、今にも死にそうな雰囲気でそう言ってくるけど、そんなにヤバいこと言ったかな??


「ぼ、僕そんなにやばいこと言いましたか!?」

「言われたら理性が飛ぶレベルにヤバいです。

 ヤバいしか言えないくらい語彙力吹き飛ぶレベルです」

「ぼくならワンチャン襲ってるの」


 華さんはまだしも、綾乃さんは何を言っているのかな!?

 しかも襲うって⋯⋯そういうこと⋯⋯だよね?


「おそっ!?」

「ま、まぁ私達は一応ファンの人達もいますし、そういうことはしま⋯⋯せんけど」

「どうして言い淀んだんですか!?!?」

「仕方ないじゃないですか!!!

 こんなに可愛い優希くんが誘ってるとしか思えないようなことを言ってくるんですよ!?むしろ普通なら私がそういうことを言って優希くんを誘惑する悪いお姉さんになるべきなんですよ!?

 優希くんが悪くて可愛い小悪魔に見えましたよ!?」


 誘ってるつもりなんて無いけど、僕の発言でそう思わでちゃうこともあるんだ⋯⋯なんて思っていたら僕のことを悪くて可愛い小悪魔だなんて、何を言ってるんだろう?


「何を言ってるんですか!?」

「逆に考えてみるの。

 もしも華が内気で水着に自信がない女の子だったとするの。

 実際に水着姿を見てみたら物凄く刺激的な水着な上に普段の服ではわからないくらいナイスバディだったとするの。

 そんな状態の女の子に自分で興奮した?なんて聞かれたら世の男はイチコロなの。だから逆の立場であるぼくたちもそうなってしまっているの」


 綾乃さんがそう熱く語っているけれど、言われてみたら確かにそうかもしれない。想像してみたら⋯⋯って僕は何を想像してるの!?


 今考えたことを忘れようと首をブンブンと振り回してみる。


 それでも、思い浮かんだ光景はなかなか消えなくて⋯⋯


「⋯⋯も、もしかして、私のその、刺激的な水着、想像しちゃったんですか?」

「あっ、いやっ、そのっ!」

「⋯⋯ゆ、優希くんが見てみたいなら、私は構いませんよ?」

「な、何を言ってるんですか!?」

「ふふっ、冗談です。お返しです」

「も、もうっ!揶揄わないでください!

 もう泳いじゃいますからね!」


 そう言って僕は恥ずかしさを隠すために海へ入ろうとした。


「あっ、待ってください!」


 華さんがそう言うと、僕の手を掴む。


 でも、僕が移動しようとした勢いが強かったせいか、華さんがバランスを崩してしまった。


「あっ」


 僕のせいで華さんが転んでしまうと思うと、体が勝手に支えようと動いてしまう。


 でも、バランスの良く無い状態の僕の小さな体では華さんを支えきることが出来ずに⋯⋯


 どさっと音がする。


「いたたた⋯⋯って優希くんだいじょ⋯⋯」

「僕は大丈夫で⋯⋯す⋯⋯」


 ふにっと柔らかい感色が。


「「あっ」」


 何とは言わないけれど、物凄く柔らかいものが当たってる。


「ご、ごごごごごごごめんなさい!!」

「だ、だだだだだじじょうぶでしゅうう!!!」


 僕が思わず謝ると、華さんが顔を真っ赤にしながらそう返した。


 そして、よく見ると、僕にかかっていたタオルは外れていて⋯⋯


「ぶふっ」


 華さんは僕の上で再び倒れようとした。


「ちょっ!?華さん!?

 待って!そのままはまずいです!!」


 そう、胸を僕に押し付けるようにして。


 勢いは弱いけれど、僕は華さんの胸に埋もれてしまった。


「むぐぅ!?」

「⋯⋯何やってるの」

「ぷふぁ!あやのさっ!たすけっむぐぅ!」

「えーと、ごゆっくり⋯⋯なの?」

「んんんん!!!!」

「冗談なの、すぐ起こすの」


 綾乃さんがそう言うと、華さんの耳元で何かを囁く。


「はっ!?どこにあるんですか!?

 ⋯⋯ってあれ?またわ⋯⋯た⋯⋯し⋯⋯」


 華さんが今の状況に気付いた瞬間、顔を青くした。


「ご、ごめんなさい!!

 ま、また優希くんの水着を見て意識がっ!」

「だ、大丈夫です!だ、だから離れてください!」

「そ、そうしますね!!」


 するとようやく解放された僕は新鮮な空気を吸うことが出来た。



「ふぅ、こ、これで良いですか?」


 あの後一度着替えに戻り、割とシンプルな水着を選んで着てみると、ようやく華さん達が僕を見て発狂しなくなった。


「これで一安心ですね」

「ちょっと残念な気もするけどこれはこれで可愛いからOKなの」

「これで心置きなく泳げますね!」

「でもその前に⋯⋯」

「その前に?」

「日焼け止め、塗りましょうね?」

「えっ」

「日に焼けたら痛いですよ?」

「えっと⋯⋯僕塗ったこと無いんですけど、そんなに違うんですか?」

「かなり変わりますよ?

 私は来る前に綾乃ちゃんに塗ってもらったから大丈夫ですけど、優希くんは自分で塗ってないですよね?」

「塗ってないです!」

「じゃあパパッと塗っちゃいましょう!

 日に焼けても良いならそのままでも良いですけど、結構痛いですからね」

「確かに痛いのは嫌ですね⋯⋯じゃあお願いします!」

「任されました!でも念の為に、パラソルの下で塗りますからね!」

「はい!」


 そんな訳で人の少ない場所にパラソルを立て直し、そこにシートを敷いてから日焼け止めを塗ってもらうことに。


「それじゃあ背中から塗りますね?

 ちょっとひやっとしますから我慢してくださいね!」


 華さんがそう言うと、少しだけひやっとしたクリームが背中にかけられ、それを華さんの手で伸ばされていく。


 華さんの手はすべすべで、塗られていて少し気持ち良い。


 背中が終わると、次は腕。更に足となり⋯⋯


「次は上を向いてもらっても良いですか?」

「はい!」


 そして上側も塗ることになったけれど、特に何かがある訳でもなく、少し経てば塗り終わったのか華さんが終わりましたよと声をかけてくれた。


「どうしてそんなに顔が赤いんですか?」

「あ、暑いからですかね⋯⋯?」


 華さんは苦笑いしながらそう言うと、僕の手を引いた。


「それじゃあ塗り終わりましたし、海に入りましょうか!」

「そうですね!」

「⋯⋯ぼくのこと忘れないで欲しいの」

「「あっ」」


♢ミニSS:がんばれ!華ちゃん!


 今、私は理性と戦っています。


 どうしてかって?


 それは私の目の前に素肌を晒した優希くんがいるからです。


 日焼け止めを塗るというただそれだけではあるんですが、優希くんのここを触ったらどうなるんでしょうか?なんてイケナイ考えが頭に浮かんで来たりして、脳内がわちゃわちゃしています。


 日に焼けていない、白い素肌。


 背中もまるで女の子みたいに華奢で、強く触れたら壊してしまいそう。


 そんな芸術品みたいな綺麗な肌に触れることができる。


「それじゃあ背中から塗りますね?

 ちょっとひやっとしますから我慢してくださいね!」


 そんな煩悩を振り払いながら優希くんに今から塗る事を告げます。


 クリームをたくさん優希くんの背中に出すと、私はそれを手のひらで満遍なく塗り広げていきます。


 途中くすぐったいのか優希くんから吐息が漏れてきて、理性が爆発しそうです。何ですかその色っぽい声は。誘ってるんですか?今すぐ襲っちゃいましょうか??


 っと、いけないいけない。冷静になりましょう。


 背中が塗り終わり、次は太ももやふくらはぎの裏を塗っていきましょう。


 ここも男の子と思えないくらい細くて、そこに触れるとこれまたくすぐったそうにする優希くん。感度良すぎませんか?


 ふくらはぎを塗り終わり太ももへ。太ももの方がくすぐったいのか、声を我慢している様子が見られます。


 エッすぎる!と私の中の理性が沸騰しているのが分かります。


 冷静になれ冷静に。クールになるんです。

 

 太ももが塗り終わった私は優希くんに上を向いてもらう為に声をかけます。


「次は上を向いてもらっても良いですか?」

「はい!」


 そうして優希くんが上を向くとさっきの続きで足から塗っていきます。


 スカートのようになっているフリル部分を少しめくると、普段なら見えない部分が見えます。


「⋯⋯ごくり」


『ここも日焼け止め塗らないといけないですよね!』

『そんなところには塗らなくて良いですよ!

 というかそんなところ触ったら犯罪です!』

『じゃあ上は?』

『上⋯⋯』

『触ったらどんな反応するか⋯⋯気になりませんか?』

『で、でもそれは⋯⋯』

『もしかしたらそのままやらしい気分になるかもしれませんよ?』

『うぐっ』

『ゆるママさんを出し抜くには⋯⋯既成事実が早いですよ?』

『ぐぬぬ⋯⋯』


 脳内で、そんな煩悩まみれの会議が行われています。


『待ちなさい!ここはビーチ!人がいっぱいいるんですよ!』


 脳内で、理性がそう囁きます。


 私は血を吐く思いで我慢し、優希くんに日焼け止めを塗ります。


 もし、理性に負けていたらどうなっていたことか⋯⋯


 そしてようやく塗り終わり優希くんに声をかけると、優希くんは私の顔を見て首を傾げます。


「どうしてそんなに顔が赤いんですか?」

「あ、暑いからですかね⋯⋯?」


 理性との戦いで火照ったからなんて言える訳⋯⋯無いじゃないですか。

------


「続きはFantiaでなのって言ったら結構な人が釣れて草なの」

ぼく「だから書かないからね?」

「昔書いてたことある人間がよく言うの」

ぼく「忘れろ。いいな?」

「読者さんから突っ込まれたのは良い思い出なの」

ぼく「良く無いからね???」

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