317:撮影でござる

 今日はコミケ最終日。現地へ到着した僕は更衣室で着替えをしてから二人に合流すると、そこにいたのは、カッコイイ格好をした薫さんと由良さんだった。アニメやゲームでよくあるカッコイイ枠のアイドルのような凛々しさを感じさせる良い衣装。あんな感じにカッコイイ男性向けの衣装が似合うようになりたかったなーなんて考えてしまったけれど、この衣装のような可愛い服を着ると、薫さんや由良さん、他にもたくさんの人が喜んでくれるから良しとしよう。


 適材適所とは言うけれど、少し憧れるくらいは許される⋯⋯よね?


 シラフで女装をするのはなかなかメンタルに来るのもあるから意識を切り替えてから二人に声をかける。


『ゆるお姉ちゃん、ゆらお姉ちゃんお待たせっ!』

「か、可愛い⋯⋯」

「いやこれは⋯⋯可愛すぎでは⋯⋯?

 お姉ちゃんもしかして天才⋯⋯?」

「私の才能とゆかちゃんの可愛さが憎い⋯⋯」

『か、過大評価すぎないかな!?』

「「それはない」」

『うぅ⋯⋯でも、ありがと!』

「今日もいっぱい可愛い所を撮ってもらわないとね」

「むしろ私が撮りたいまであるんだけど?」

『折角だから三人で写真撮ってもらおうよ!』

「それもそうだね」

「頼めそうなカメコさんいないかな?」


 そう言いながら周りを見ていると、突然声をかけられた。


「おや⋯⋯その声はゆかちゃん殿ではござらぬか?カメコをお探しでしたかな?」


 この特徴的な喋り方⋯⋯もしかして?


『ローアングラーのお兄ちゃん?』


 声のする方を向くと、そこには⋯⋯


「そうでござる!覚えていてくれて感激の極みにござるが、もうローアングラーは引退したでござる」


 妙に好青年な雰囲気の頭にハチマキを着けたお兄さんがいた。


『待って、誰!?』

「そ、そんな!?拙者頑張ってオシャレに気を遣い、身体を絞り、清潔感を維持するようになっただけでござるよ!?」

『ただのイケメンっぽくなってるよ!?』

「せ、拙者が?」

『う、うん⋯⋯』

「あっ、生きてて、オシャレしてて⋯⋯よかったで⋯⋯ご⋯⋯ざ⋯⋯る⋯⋯」

『ローアングラーのお兄ちゃああああああん!?!?』

「ゆかちゃんに褒められたらそりゃ⋯⋯」

「耐性なかったらこうなるよね」


 元ローアングラーのお兄ちゃんがぷるぷると死にかけていると、突然見たことある人が現れた。


「全くうちの兄者は何をやっているでござるか⋯⋯」

「ん?」

『あれ?』


 その人は以前、薫さんと一緒に行ったことのあるGloryCuteの服を取り扱っていたお店の店員さんだった。


「⋯⋯あれ?」

「どうしたでござる妹者よ」

「あの⋯⋯ゆかちゃんとゆるママさん⋯⋯ですよね?」

「はい」

『そうだよ!』

「前、うちの店に来てくれた⋯⋯」

「そうですよ」

『そうだよ!覚えていてくれたんだね!』

「今のは⋯⋯忘れてくださああああああい!!!!」

「妹者ああああああああ!!!????」


 突然叫びどこかへ走り去っていくあの時の店員さん。


「おねショタすこすこ侍さん!?」

『えっ!?』

「妹者を追いかける故、一旦失礼致す!」

『待って今変な言葉聞こえたような気がしたんだけど!?』


 すぐに店員さんは元ローアングラーのお兄ちゃんに連れられて戻って来た。


「いやぁぁぁ⋯⋯あんな喋り方するところ見られたくないぃぃぃ⋯⋯」

「普通に喋ればいいではないでござるか」

「それはそうだけどぉ⋯⋯」

「とりあえず、ゆかちゃん達がカメコを探していると言っていたでござるから」

「分かったよあに⋯⋯お兄ちゃん」

「ここからは拙者の仕事にござる。少し待っててくれでござる」

「うん。行ってらっしゃい」

「⋯⋯というわけで、良ければ御三方の写真、拙者に撮らせては頂けないでござるか?」

『うん、大歓迎だよ!』

「よろしくお願いします」

「綺麗に撮ってね!」

「任されたでござる!」


 カメラを片手に持ちながらサムズアップする元ローアングラーのお兄ちゃん。


「それでは早速撮って行くでござるよ」


 そう言いながら、ポーズの指示などを出してくれる。だけど、過激なポーズは一切無く、真剣に映えそうなポーズを考えてくれる。その撮る様子を見て、本当に楽しくて撮っているのが伝わってくる。きっと良い写真が撮れるんだろうななんて、そんな予感がしてくるよね。



「ふぅ⋯⋯これくらいでござるかね」


 数分間くらいに感じられた時間、やり遂げたような顔をしているお兄ちゃんがそう言ったことで終わりを告げた。


『ありがとう!』

「ありがとうございました」

「ありがとー!」

「こちらこそありがとうでござる。

 今撮った写真はピヨッターのDMか何かに送れば良かったでござるか?」

『うん!もしかしたら配信で使わせてもらうかもだけど、良いかな?』

「もちろんでござる!楽しみにしているでござるよ!」

「それでは拙者は妹者と見る場所がある故、これにておさらばにござる!良きコミケタイムを!」

『うん!ありがとう!気を付けてね!』

「では!」

「あっ、兄者!⋯⋯あああああ!!!癖が抜けないいいいい!!!!」

「とりあえず、ボロ出す前に行くでござるよ⋯⋯」

「ゆかちゃんにゆるママさんまたお店に遊びに来てくださいね!」

『う、うん!』

『「(服屋って遊びに行く場所だったっけ⋯⋯)」』


 そう思いながらもボク達は二人を見送った。


 そして、これからどうしようかと考えていると、周りの人が是非写真を撮りたいと言ってきたから、その場で撮影会が始まった。



「⋯⋯な、なんですかあれは」


 ゆかちゃんがピヨッターで投稿していた写真から場所を割り出して向かった先。


 何故か少し距離が近付いた二人が、仲が良さそうに写真を撮られていました。


 近づく事が許されない、不思議な空間がそこにはありました。


 笑顔の眩しいゆるママさんと、少し恥ずかしそうにしつつも距離感の近いゆかちゃん。


 まるで⋯⋯TTてぇてぇフィールドと言えば良いでしょうか?そんな不思議な近付くと弾かれそうな何かを感じます。


 私もゆかちゃんの隣に行きたい。


 でも、私の素性を周りにバラす訳にもいきません。


 企業VTuberがリアルバレするなんて、あってはいけないことですから。


 でも⋯⋯この気持ちは止められません。


 でも⋯⋯理性が行ってはいけないと、そう告げます。


 もし、ゆかちゃんが企業Vだったら、私があそこにいられたのでしょうか。


 そう考えていると、ゆかちゃんと目が合いました。


「あっ」


 ゆかちゃんは笑顔で、眩しいです。


 可愛くて、優しくて、純粋で。


 私には釣り合わないくらい、可愛いです。


 でも、まだ、負けた訳じゃありません。


 だって、まだ付き合っているなんて聞いていませんから。


 もしゆるママさんになら負けても仕方ないと思えはします。


 でも、アピールするくらいは許してくれますよね?


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お久しぶりです、作者の二兎凛です。

異次元フェスを楽しんだのは良いですが、体調を崩した上に自転車が壊れて、歩きで仕事に行くと言う地獄みたいな1週間を過ごしていたせいで、体力が死んでいました。ほぼ2週間死んでましたね⋯⋯


近況報告はこれくらいにして、少しお知らせがありますのでこちらで失礼します。


現在Ticktockにてこのマンガ読んだ?グランプリというものが開催中で、23出版社の選んだ100作品の中に失恋vtuberが選ばれました!公式から素材をダウンロードして動画投稿が出来て、その再生数で上位が取れたら⋯⋯というイベントになりますので、もしTicktockをやっている方がいたら是非ご協力ください!!


それと、Twitterでは告知したのですがこの度⋯⋯


失恋Vtuberのコミカライズが台湾で翻訳版で発売決定&電子版での販売部数が10万部を突破しました!!!!

初の商業デビューでここまで大きな成果が出せたのは多くの方の応援があってのものです!

これからも牛歩でも頑張っていきますので引き続き応援よろしくお願いします!!!

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