218:自信はないけど
先輩にまさかの提案をされた僕は一旦考えさせてもらう事にした。
興味が無い事は無いけれど、僕が先輩の隣に並べるほどかと言われると自信が無い。
「そんなに難しく考えなくても良いからね?」
先輩は優しい声で僕にそう言った。
「そ、そうですか?」
「わたしもそう言うの行ったことないから、気軽に応募してみれば良いと思うな」
先輩ならそう言った物に何度も応募していそうだと思ったけれど、意外と応募したことがないみたい。
だったらやってみても、いいのかな?
「⋯⋯自信は無いですけど」
「ッ!? それって⋯⋯」
先輩が期待しているような眼差しで僕を見つめている。
「い、良いですよ」
「ほ、本当!?」
「ただ、その、本当に自信は無いので、全然ダメだったらごめんなさい⋯⋯」
「うん! いいよ!
あっ、でも予選は東京でやるらしいんだけど、優希くんは大丈夫?」
「お休みの日だったら問題は無いですよ!」
「えーと⋯⋯うん、土日でやるっぽいね」
「だったら問題無いですね!」
先輩が調べた結果土日に開催とのことだから、僕でも行けそう。
「それじゃ、また近いうちに採寸とかで時間取ってもらう事になると思うから、採寸の日とか決まったら連絡しても良いかな?」
「はい! あっ、それだったら僕のL○NE教えておきましょうか?」
僕は先輩との連絡を取りやすくするためにそう提案した。
「ほ、本当!? わたしもそうしてくれると助かるかな!」
「はい、じゃあこれQRです!」
「うん、じゃあ読み込んで⋯⋯OKだね」
「あっ、そろそろ電車の時間がヤバイし移動しよっか」
「そうですね!」
そうしてL○NEの交換を済ませた僕達は駅へ向かって歩き始めた。
駅に到着すると丁度良いタイミングで電車が来たようで僕と先輩は乗り逃さないように少しだけ急いで電車に乗った。
「ふぅ、間に合って良かった」
「乗り逃したら待たないといけないですからね⋯⋯」
そして電車の中は電車が揺れる音だけが響いていて、とても静かな時間が流れていた。
すると、先輩が乗り換えないといけないと言っていた駅に到着した。
「それじゃ優希くん、またね」
「はい! 先輩も四月から大学頑張ってください!」
「うん、ありがとう!
その言葉だけでわたし頑張れそうだよ!
⋯⋯あっ、でも優希くんも頑張ってね!」
「はい! ありがとうございます!」
先輩はそう言うと電車を降りていった。
ホームに降りた先輩はずっと僕を見ながら手を振ってくれていた。
僕も手を振り返すと少し寂しい気持ちになったけれど、二度と会えない訳でも無いから気分を入れ替えて僕は家へと帰って行った。
♢
そして先輩との予定も終わり、春休みももうすぐ終わり。
最後に僕は歌ってみた動画の撮影に挑もうとしていた。
「必要な機材の準備はOK、歌う曲も何回も何回も聴き込んだし多分大丈夫⋯⋯」
そうして、パソコンを起動して録音に必要なソフトを起動して準備は万端。
「よし、早速録音してみよう!」
そして僕は歌を歌い始めた。
⋯⋯のは良いんだけど。
「どうしよう、思った以上に上手く歌えてない気がする⋯⋯」
録音してみると、伴奏が大きすぎたり、小さすぎたりと違和感があまりにも多い。
どうしてこうなるのか色々調べてみると僕は一つの答えに辿り着いた。
「MIX⋯⋯か」
これに関しては全くの初心者だった僕はどうしようか考えることに。
「MIXに必要な物は⋯⋯うわっ、全然わかんない⋯⋯」
聞いたことも無いようなソフトを要求される上に、使い方も全く分からない僕はどうするべきなのか再び考え始めた。
「依頼するって言うのも⋯⋯ありなんだよね」
そして、依頼する場合は音源を伴奏と歌声で分けないといけないと言う事が分かった。
「そっか、だから僕の歌声に違和感があってもいじれなかったんだ⋯⋯」
かと言って今から編集技術を習得するのにも時間がかかる。
だったらいくらかかるかによっては依頼するのもアリだと思った。
「えーと、依頼の場合は一万円前後あればお願い出来るんだ⋯⋯安い人だと二千円とか、この値段の違いは何だろう⋯⋯」
そして色々な人を見ているとふと、とある名前が目に入った。
「あれ? これってあのボカロPさんじゃ⋯⋯?」
なんとそれなりに有名なボカロPさんがMIXをしてくれるらしい。
しかも何の因果か今回僕が歌う曲を作ったボカロPさんと同一人物だったんだ。
「これも何かの縁かもしれない⋯⋯この人にお願いしてみよう⋯⋯!」
そう決めた僕はまず、音声データを作り直す為に再度収録を始めた。
そして自分でも結構上手く歌えた気がするデータを用意してからMIX依頼をそのボカロPさんに送った。
すぐに返事は来ないだろうけど、少しでもクオリティの高い歌ってみた動画にして皆に喜んで貰うためにも、なんとしてもお願いしないと!
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