217:先輩とコスプレイベント!⑤
薫さんと香月さんが二人でどこかへ行ったのを見送った僕たちは再度大須のアーケードを歩き始めた。
「優希くん、ちょっと相談があるんだけどいいかな?」
「どうかしましたか?」
先輩は突然、相談があると僕に言って来た。
相談って一体何だろう?
「えっとね、今回わたしの着てる衣装、正直優希くんと合って無いと思うんだ」
「どちらかと言えば先輩の衣装は民族衣装ですし、仕方ないと思いますよ?」
僕は正直にそう返すと先輩はとんでもない事を言い始めた。
「優希くん、JK魔女の衣装買ったお店教えてくれないかな?」
「ま、まさか⋯⋯」
「うん、今から買ってくる」
やっぱりと言うべきか、先輩はいい笑顔でそう僕に言った。
「わ、わざわざ僕に合わせなくても良いんですよ?」
「違う、違うよ!
わたしは優希くんと合った服が着たいだけなの! その為ならお金なんて惜しまないよ!」
「え、えっと、そ、そこまで言うなら⋯⋯」
先輩の勢いに押された僕は買ったお店を教えた。
今日は流石にもう香月さんはいないだろうし、気軽に寄れる⋯⋯かな?
それからお店に到着した僕達。
先輩は真っ先にJK魔女の衣装を見始めた。
僕が着ている服は主人公の大人しい女の子である結依と言うキャラの衣装で、先輩が目を付けたのは同じJK魔女に出てくる主人公の親友の莉紗と言う活発な女の子の衣装だった。
先輩が選んだキャラの衣装はマントを全体に羽織るのではなく肩にかける俗に言う肩マント。
魔女なのに何故かシーフのような見た目なのはそのキャラが機動力を活かした戦闘をするからなんだとか。
そしてその衣装を早速購入する為にレジへと先輩は向かって行った。
「お願いします」
「はい、ありがとうございます
こちら全部セットでよろしかったですか?」
「はい、大丈夫です」
「制服セットで39800円、マントセットで36960円の合計76760円になります」
「はい、えっと、デビットカードでも大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
「じゃあこれで」
先輩はそう言うとカードを店員さんに渡した。
「はい、大丈夫ですね。
こちらにサインの方お願いします」
「はい⋯⋯どうぞ」
「ありがとうございます。
ここで そうび していきますか?」
「も、もちろんです!」
「では、あちらの更衣室をお使い下さい」
そう言って店員さんは更衣室に先輩を案内して行った。
「あの、もしかして君は香月さんが撮影してた子、ですか?」
「ふぇっ? 僕ですか!?」
先輩が着替えるのを待っていると店員さんが僕に声をかけてきた。
「そうです。 前うちで働いてる香月さんがクラスメイトだって話していたんですけど凄く可愛い子だなって思って⋯⋯ただ、失礼は承知なんですが、本当に男の子なんですか?」
「⋯⋯はい」
「ありがとうございます、これで夜も眠れそうです」
どれだけ僕が本当に男かどうか気になってたんだろうこの店員さん⋯⋯
「な、なら良かったです⋯⋯」
「香月さんにはお礼を言わないとですね⋯⋯
あともし良ければお連れ様の着替えが終わったらお二人揃った所を撮影させて貰っても良いでしょうか?」
「先輩が良いって言えば僕は良いですよ!」
「ありがとうございます。
着替えが終わったら聞いてみようと思います」
店員さんがそう言うと丁度先輩が更衣室から出てきた。
すると先輩に店員さんが近付いて声をかけた。
すると先輩はOKを出したのか、そのまま撮影する流れに。
「それじゃあJK魔女のEDのラストのあの感じでお願いします」
「えっ」
「はーい!」
JK魔女のEDのラストは主人公と親友の二人が顔をくっつけて写真を撮ると言うシーンで終わるのだけど、その再現をすると言う事は⋯⋯
「(近い近い近い!!)」
そう、先輩との距離がとてつもなく近くなると言う事。
しかも先輩もノリノリだから嫌とも言えないこの状況⋯⋯顔赤くなってないかな?
「それじゃ写真撮りますね。
はい、チーズ!」
「⋯⋯はい、OKです!
良い写真が撮れました、ありがとうございます!」
「こちらこそありがとうございます!」
「ありがとうございました⋯⋯」
僕達は店員さんにお礼を言うと最後に店員さんが言った。
「今回撮ったデータはうちの店舗のピヨッターに投稿させて貰うので写真が欲しければそちらからダウンロードして頂ければと思います」
「分かりました!」
「ありがとうございます!」
そうしてお店を出た僕達は再び大須の街を巡る事にしたのだけれど、先程とは違い多くの人の視線が僕達に突き刺さる。
「あ、あの、一枚良いですか?」
「う、うちも一枚ええですやろか!」
「大丈夫ですよ!」
「どんなポーズが良いですか?」
僕達の姿を見た人達が写真を撮ろうと群がって来た。
ポーズの希望が無いかなんて先輩もノリノリになっていて、どこか楽しそうだった。
やっぱり先輩は写真を撮られたりするのが好きなのかな?
♢
それからかなり長い時間僕達は写真を撮り続けられた。
ポーズの指定も多くて疲れちゃったけど、多くの人が楽しそうに、嬉しそうに撮ってくれる所を見てつい張り切ってしまった。
先輩も同じ気持ちだったみたいで、どこか満足気な顔をしている。
「楽しかったね優希くん」
「そうですね! でもちょっと疲れちゃいました⋯⋯」
「最後凄い人だかりだったもんね⋯⋯最初からあれ着てなくてよかったかも」
「確かにそうかもですね⋯⋯最初からあれだったらご飯どころじゃなかったかもですね」
「楽しかったけど、終わっちゃうとなんだか寂しいね」
「そうですね⋯⋯」
先輩と僕は人が少なくなって来た大須のアーケードを見ながらそう呟いた。
「あのね、わたしから提案があるんだけど、ちょっと良いかな?」
「提案ですか?」
「実はね、五月の中旬辺りにコスプレサミットの日本代表決定戦があるらしいんだ」
「ま、まさか⋯⋯」
「優希くん、わたしが衣装に関しては全力で協力するから、一緒に出てみない?」
先輩からまさかすぎる提案で、僕はすぐにはいとは言えなかった。
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