196:ゆるママの初配信!
三月に入り、とうとうやってきた私の初配信日。
思っていたよりも操作に慣れずに配信日が少し遅くなってしまったけれどようやく準備が出来た。
「はぁ、見に行くのとは違ってかなり緊張するね⋯⋯」
「お姉ちゃんって配信そんなにやった事ないもんね」
「あんまりやる意味も無かったから⋯⋯」
「イラスト上げるだけだったし仕方ないんじゃない?」
「うぅ、告知した時間まであと三分⋯⋯」
「お姉ちゃん頑張れ! わたしは応援してるよ!」
「うん、頑張る⋯⋯」
そして緊張がMAXになりそうな状態で私は配信を始めた。
♢
「や、やぁ皆。
初めましての人は初めまして、柿崎ゆるだよ」
私は昔の自分をイメージしながら最初の挨拶をした。
すると私をイメージして作った2Dモデルが口を動かしてさもこのモデルが喋っているかのように視聴者は見えるだろう。
ちなみに喋り方をこうしたのは優希くんの配信で告知した時のまま、素の自分ではなく、演じてみたいと思ったから。
クールな女の人って格好良く見える気がするんだ。
:こんばんはー
:はじめまして!
:ゆるママだ!
:俺ゆるママの声聞くの初めてかも
:クール......だと?
「そ、その、前にも言ったと思うけど、あまりこう言うのには慣れて無いんだ⋯⋯だから変な所があったら教えて欲しい」
私は素直にそう言ってみると皆が反応を返してくれた。
:もちろん!
:ゆるママも気楽にやっていいんだよー
白姫ゆか:ゆるママ初配信おめでとー!
:ゆかちゃんきちゃ
:ゆかちゃ!?
「えっ!? ゆ、ゆかちゃん!?」
:おう、クール取れたぞ?
:即堕ちゆるママで草
:流石に草
白姫ゆか:早いよゆるママ!?
「だ、だってゆかちゃん来てくれるって思ってなかったし⋯⋯いつも配信してる時間だったから⋯⋯」
もしかしたらとは思ったけれど、本当に来てくれるとは思っていなかった。
びっくりして素が出てしまうのは仕方ないよね。
:確かに普段ゆかちゃん配信してる時間だったわ
:そう言えばそうだ
:通知来なかったからそう言う事だと思ってた
白姫ゆか:ゆるママの初配信逃す訳ないからね!?
ゆかちゃんが、ううん、優希くんが私の初配信を見る為だけに時間を作ってくれた、それだけで何故だか心の中が満たされるような気持ちになった。
「ありがとう、こうやって配信出来るのはゆかちゃんのお陰。
あの時一緒に色々選んで貰ったり相談に乗って貰ってありがとう」
-コメント
白姫ゆか:えっと、何だか恥ずかしいね⋯⋯
:一緒に選んだ?
:これはキマシ?
浮雲ふわり:何だか聞き逃せない事があった気がしますねー
:草
:なんか来たw
浮雲ふわり:あっ、そうだゆるママさん初配信おめでとうございますー
「ふわちゃんありがとう。
今度一緒にゲームとか出来ると嬉しいな」
:おっ?
:コラボのお誘いか?
:早いねー
浮雲ふわり:構いませんよー?何やりましょうかー?
「⋯⋯やっぱりVpexかな?
ゆかちゃん最近あればっかりやってるし⋯⋯そうだゆかちゃんも一緒にやってくれるかい?」
白姫ゆか:もちろんだよ!
浮雲ふわり:いいですねー、三人でVpexのカスタムとか出てみたいですねー
:結構楽しそう
:ふわちゃんもゆかちゃんも結構強いし楽しみ
:ゆるママは修行配信でもするのかな?
「うん、多分すると思うよ。
でも本業のイラストレーターとしての仕事があるからしょっちゅうは出来ないけど」
:楽しみ!
:待ってるよ!
白姫ゆか:ボクも暇な時なら行くからね!
浮雲ふわり:私も時間合えば一緒に行きたいですー
「うん、その時は声をかけてくれると嬉しいかな」
ゆかちゃんとふわちゃんのお陰で会話がいい感じに弾んで来た。
何を話せばいいのか分からなかったけど、二人のおかげで結構話せた気がする。
「折角だし、今から何か描いてみようか?」
絵を描く所を配信するのをやってみたかった私は、絵を描く事にした。
ゆかちゃんはお料理やゲーム、ふわちゃんは同じ事務所の子とのコラボなんかもあるけど、私には今見せられるのはこれくらいしかないから。
:えっ!
:まじで!?
:見たかった!!!!
:待ってた!!
白姫ゆか:ぼ、ボクも参考にしないと⋯⋯
浮雲ふわり:私もですねー⋯⋯
「ふふっ、参考になるかは分からないけど、よかったら見ていってね」
「でもその前に何を描こうか?
何か見てみたいものはあるかな?」
私はリスナーへのサービスも込めてそう言った。
:うーん、やっぱりゆかちゃん...?
:どうせならゆるママとゆかちゃんの並んでる絵とか
浮雲ふわり:私も追加してくれたら嬉しいですねー
白姫ゆか:ボクもそれ見てみたいかも!
「ふむふむ、じゃあ構図とか考えるから待っててくれるかな」
そう私が言うと、私は液タブの上でペンを走らせた。
最初はかなり大雑把に描いているから誰が誰だかわからない。
あくまで構図を決めているところだから。
:最初はこうやって描いてたんだ...
:てっきり最初から綺麗な線画かと思ってた
:ここから色々修正が始まるんだな
白姫ゆか:凄く早い...
浮雲ふわり:真似...出来ませんねーこれはー
「構図はこんな感じかな?」
中央にゆかちゃんを置き、その左右に私とふわちゃんを置いた。
ちょっと恥ずかしそうな雰囲気のゆかちゃんとそれを優し気にみつめる私とふわちゃんを脳内にイメージし、線画を描き始めた。
「⋯⋯あんまり、喋れなくてごめんね」
私はどうやら集中すると喋れなくなってしまうようで、ただひたすらにペンを走らせる。
ぐちゃぐちゃとした下書きに、命を吹き込んでいく。
:す、すげぇ......
:急にゆかちゃん達だって分かるようになった
白姫ゆか:なんかよく分からないけど、とにかく凄いって事だけはわかるかな⋯⋯
:流石プロ⋯⋯
「一応私はアマチュアのつもりではあるんだけど、プロとアマチュアの絵師の差って何なんだろうね⋯⋯?」
私はずっと昔から思っていた事をふと口に出していた。
:それだけでご飯が食べれる事?
:でもそれならゆるママはプロじゃない?
白姫ゆか:ボクからすればプロだよ...?
浮雲ふわり:これはプロ名乗っても良いと思いますねー
「ふふっ、そう言って貰えると今まで頑張ってきた甲斐があったよ」
そう話をしながら絵を描き進めていくと、気が付けば私の前の液タブには、笑顔でゆかちゃんを挟む私とふわちゃんの姿が。
まだモノクロで、完成品とは呼べないけれど配信でこれなら十分かな?
「ふぅ、彩色までしてると時間がいくらあっても足りないからとりあえずこれくらいかな?」
:うおおおおおおおおおおおおおお
:いいなぁこれ
:カラー化して欲しい....
白姫ゆか:すごい...
浮雲ふわり:いや本当凄いですねー...
「ありがとう。
本当は彩色までやりたいんだけど、ここから彩色までやっちゃうと深夜まで行っちゃうだろうから今日はここまでだね。
もし完成するまでを見たいならまた配信で続きをやっても良いんだけど、この後ピヨッターにイラストを投稿するから、そこでどうして欲しいかコメントをくれると嬉しいな」
:はーい!
:待ってます!!!
:俺は彩色まで見たいぜ...!
「それじゃ今日はこれくらいにしておこうかな」
:結構時間経ってたね
:もうこんな時間か
白姫ゆか:ボクも結構眠くなってきちゃった...
浮雲ふわり:私もそろそろ配信始めましょうかねー?
:時間経つの早いなマジで
:作業用BGM代わりに聞いてたらもう終わりか...
「ふふっ、そう言って貰えて光栄だよ。
それじゃまた近いうちに配信しようと思うから、またね」
:お休みー
:おやすみなさーい
:おやすみ!
:お疲れ様でしたー
:お疲れさまー
白姫ゆか:ゆるママ、おやすみなさい!
浮雲ふわり:お疲れ様でしたー
「ふふっ、ゆかちゃんおやすみ」
:アッ
------この配信は終了しました------
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