180:おまけの先輩視点
今日は優希くんとうちの会社のコラボ衣装の試着の日。
朝早くに起きてしまったわたしは、普段よりおめかしして出かける事にした。
決して優希くんに綺麗な所を見てもらいたいわけじゃないんだよ?
⋯⋯なんて嘘です。 かなり意識してます。
でもそんな事よりもやっぱり一番の楽しみは優希くんの女装姿を拝む事!
普段からあんなに可愛い優希くんがゆるママさんが本気でデザインした衣装を着るだなんて絶対可愛いに決まってる。
そして準備を終えて、意気揚々と会社へ向かうわたし。
普段と違って最初からお洒落をしているからか、視線を感じるのはきっと気のせいでは無いと思う。
でもそんな事を気にせずわたしはやってきた、GloryCuteの本社、そして優希くんが今日女装をする場所に!
まだ優希くん達が来るには早い時間なのは知っているけれど、浮き足立ったわたしの足はここに来ることを止められなかったの!
しょうがないよね! 楽しみなんだから!
「おはようございます」
「あらー、遥ちゃん早いわねー」
「あっ、マネージャーさんも早いじゃないですか」
「アタシはいつもこんなものよ?
何だかんだでやる事は多いのよね」
「でしょうねぇ⋯⋯どうせ暇なので何か手伝いましょうか?」
「あら、良いの?」
「と言ってもわたしに出来ることなんてそんなに無いですけどね?」
「いや、そんな事はないわよ。
それだったらこのデザイン、寸法とかおかしく無いかチェックとかお願い出来るかしら?
まぁウチのスタッフの事だからそうそうミスなんて無いと思うのだけど、W(ダブル)チェックはしておいて損はないから」
「大丈夫ですよ⋯⋯ってこれわたしの着る予定の夏服のデザインじゃないですか。
手伝うって言って良かったです、ちょっと気になってたんですよね」
「もう少しで水着のデザインの方も上がって来る予定だから楽しみにしていて頂戴」
「水着ですか、楽しみにしてますね」
そんな事を話しながらチェックを済ませていると、受付から連絡が来た。
「あら、優希ちゃん達も到着したようね」
「あ、あのちょっとまだ心の準備が出来てないので⋯⋯隠れてても良いですか?」
「アタシは構わないけど、まるで乙女ね」
「乙女ですっ!」
「自分で言うの?」
「だ、だって事実ですしっ!」
「この様子をビデオに録画してInstargramに投稿したらバズりそうね」
「や、やめて下さい!
わたしのイメージ変わっちゃうじゃないですか!」
「クールで美人なGloryCuteが誇るモデル、実は超絶乙女だった! なんて見出しでネットニュースを埋め尽くしそうね」
「あの、それはそれで恥ずかしいのでやめてください⋯⋯」
「まぁこの辺にしといてあげる、そろそろあの子達、来ちゃうわよ?」
「あっ、そうでした!」
話を中断して、わたしは部屋の中にあるクローゼットの中に隠れる事にした。
それから少し待つと優希くんがゆるママさんと一緒に入ってきた。
「あら、優希ちゃんに薫ちゃんおはよう。
今日もよろしく頼むわね」
「橋本さんおはようございます!」
「先輩おはようございます」
「それじゃあ早速で悪いのだけど、優希ちゃんには衣装を着てもらおうかしら」
「は、はい!」
そうしてマネージャーさんの指示で優希くんは着替えに行った。
「優希ちゃんなら行ったわよ?」
優希くんが完全に部屋を出たのを確認すると、マネージャーさんがわたしを呼んだ。
「えへへ、マネージャーありがとうございます」
「あ、あなたは⋯⋯!?」
突然出て来たわたしを見て少し驚いた様子のゆるママさん。
でもわたしはまず自己紹介をする事にした。
「えっとゆるママさんとはこうして話すのは初めてですね。 わたしは一ノ瀬遥、優希くんと同じ学校に通ってます」
「やっぱり⋯⋯優希くんの先輩、で合ってたかな?」
「はい」
「あっ、そうだ私も自己紹介しないとダメだよね。
私がゆるママこと柿崎ゆるの名前で活動している遊佐薫です」
遊佐薫さん、この人が今優希くんに一番近い人。
それに私と違って大人の雰囲気を纏っていて、おまけにかなりの美人。
マネージャーさんが勧誘したがる気持ちも分かる。
するとゆるママさんがわたしの事をじーっと見つめていた。
「どうかしましたか?」
「あっ、ううん、何でもないよ」
もしかしたらわたしの気のせいだったのかも。
「実はわたし、ゆるママさんに言いたい事があったんです」
「言いたい事?」
「実はゆかちゃんの事、優希くんから聞く前から知ってて、すっごく気に入ってたんです! だからゆかちゃんをこの世に生み出してくれて本当にありがとうございます!」
「こ、こちらこそありがとう。
そう言ってくれると、今まで頑張ってきた甲斐があったよ」
気を取り直して、ゆかちゃんをこの世に生み出してくれた事に感謝の言葉をゆるママさんに贈った。
「ただ、ゆかちゃんを始めたきっかけが失恋だったって知った時はもやっとしましたけどね⋯⋯」
「あ、あはは⋯⋯」
もっと早く気付いていたらどうなっていたのかな、なんて考えながら私はそう呟いた。
「まぁ、わたしとしても優希くんとまた前みたいな関係に戻れたので、結果的に良かったのかもしれないですけど」
「前みたいな関係?」
「部室で本を静かに読んだり、最近見たVtuberの話をしたり、好きなアニメの話をしたり、って普通の友達みたいなものですよ」
「なるほど⋯⋯」
何故だかゆるママさんが安心したような顔をしていた。
そんな話をしていると突然優希くんが部屋に入って来た。
そこに居たのは⋯⋯天使だった。
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