179:コラボ衣装の試着に来たよ!
テストも無事に終わりやってきた週末。
僕はまた、Glory Cuteにやってきた。
「あら、優希ちゃんに薫ちゃんおはよう。
今日もよろしく頼むわね」
見た目はイケメンなオネエさんの橋本さんが僕らを出迎えた。
「橋本さんおはようございます!」
「先輩おはようございます」
「それじゃあ早速で悪いのだけど、優希ちゃんには衣装を着てもらおうかしら」
「はい!」
そして他のスタッフさんに連れられ、僕は更衣室へと誘導された。
♢
「優希ちゃんなら行ったわよ?」
「えへへ、マネージャーありがとうございます」
「あ、あなたは⋯⋯!?」
優希くんが部屋を出て行ったと思ったら唐突に部屋の隅から一人の女の子が現れた。
「えっとゆるママさんとはこうして話すのは初めてですね。 わたしは一ノ瀬遥、優希くんと同じ学校に通ってます」
「やっぱり⋯⋯優希くんの先輩、で合ってたかな?」
「はい」
「あっ、そうだ私も自己紹介しないとダメだよね。
私がゆるママこと柿崎ゆるの名前で活動している遊佐薫です」
その女の子は優希くんの先輩であり、私の先輩の大事にしているモデルの一人であるHaruこと一ノ瀬遥ちゃんだった。
「(やっぱり、間近で見てみると凄い美人さんだ⋯⋯)」
すらっとしたモデル体型に、顔立ちもとても整っている。
「(こんな女の子と趣味も合って仲良くしていたら、好きになっちゃうのも、当然⋯⋯か)」
私が男だったら間違いなく気になる異性になるだろう事は想像に難くない。
「(先輩が大事に扱う訳だ⋯⋯)」
遥ちゃんの待遇を考えても納得が行くレベルの美人さんで私は少し危機感を覚えた。
「どうかしましたか?」
「あっ、ううん、何でもないよ」
じっと見ていたせいか、首を傾げながらそう言われた私は、何でも無いと言うしかなかった。
「実はわたし、ゆるママさんに言いたい事があったんです」
「言いたい事?」
遥ちゃんは唐突にそんな事を言い始めて、ドキッとした。
「実はゆかちゃんの事、優希くんから聞く前から知ってて、すっごく気に入ってたんです! だからゆかちゃんをこの世に生み出してくれて本当にありがとうございます!」
「こ、こちらこそありがとう。
そう言ってくれると、今まで頑張ってきた甲斐があったよ」
何を言われるのか心の中でヒヤヒヤしていたけれど、出てきたのは普通のファンみたいな言葉だった。
「ただ、ゆかちゃんを始めたきっかけが失恋だったって知った時はもやっとしましたけどね⋯⋯」
「あ、あはは⋯⋯」
言えない、私からすればチャンスだと思ったなんて。
「まぁ、わたしとしても優希くんとまた前みたいな関係に戻れたので、結果的に良かったのかもしれないですけど」
「前みたいな関係?」
聞くのが怖かったけれど、聞かずにはいられなかった。
「部室で本を静かに読んだり、最近見たVtuberの話をしたり、好きなアニメの話をしたり、って普通の友達みたいなものですよ」
「なるほど⋯⋯」
つまり、今優希くんとの関係はそこまで進展していない、って認識でも良いのかな?
もっと深く聞きたい、でも聞くのも怖い⋯⋯なんて考えていると部屋のドアが開いた。
「えっと、お待たせ⋯⋯しました」
そう言いながら部屋に入って来たのは私がデザインした服を着た優希くんだった。
「「可愛い⋯⋯」」
私と遥ちゃんが優希くんを見てそう感想を口走ってしまったのは仕方ないよね、本当に可愛いんだもん。
「って先輩いたんですか!?
いなかったからてっきりお仕事でも入ったのかと!?」
「えへへ、来ちゃった」
「うぅ⋯⋯覚悟決めてなかったから恥ずかしい⋯⋯」
「私には良いんだ?」
私の口からそんな言葉が飛び出した。
何でこんな事言ったのか私にも分からないけれど、本当につい口にしてしまった。
すると優希くんは顔を真っ赤にしながら——
「だって、薫さんには何度も見られてますし⋯⋯」
優希くんはそう言った。
もじもじしながら。
反応が完全に女の子だと思う。
「わたしがリアルで見たのはこれで二回目だもんね、もういっその事女装して学校来ない!?」
「先輩は何を言ってるんですか!?」
「いやだって、絶対似合うと思うよ」
「優希くん、ごめん。 私もそう思う⋯⋯」
女の子の制服を着る優希くん、絶対似合わない訳がないよ。
「それにしても、今までの衣装と違って、白をメインに据えてみたけど、これは」
「最早天使ですね⋯⋯」
私の言おうとしていた事をそのまま遥ちゃんに言われてしまった。
今優希くんが着ているのは春、夏用の服で、白をベースにしたワンピース。
春に着るには少し寒いかもしれないけど、全体的にフリフリでイメージすると白ゴスと呼ばれるジャンルに位置すると思う。
勿論ソックスからブーツまで白で統一。
だけど、優希くんもといゆかちゃんは多くの人の性癖を歪ませて来た事を考えて背中に生やした小さな天使の羽だけを黒色に。
イメージとしては堕天使に近いだろうか。
「やっぱり、凄く似合う⋯⋯」
「ゆるママさん、同感です⋯⋯」
「あの、あんまり見られると恥ずかしいんですけど⋯⋯」
「「優希くんが可愛いのが悪い!」」
「何で二人ハモるんですかぁ!」
「いやいや本当に似合ってるわよぉ」
「橋本さんまで!」
「写真集とか出してみる気⋯⋯無いかしら?」
「それは流石に⋯⋯」
「「出そう!!」」
「それ言うなら僕のセリフですけど!?」
「一旦置いておいて、次の衣装に着替えて来るといいと思うわぁ」
「はぐらかされたような⋯⋯まぁ、良いですけど⋯⋯」
しぶしぶと言った様子で優希くんはまた着替えに行ってしまった。
優希くんが居ない間は皆と服の変更した方がいいポイントなどを話あったりしながら優希くんが着替え終わるのを待った。
♢
それから何度か色違いの物だったり、完全にコスプレ感のある衣装を着たりしていった僕は完全に油断していた。
今まで僕が着ていた服は春や夏の物が多かった。
春や夏、つまり夏と言えば⋯⋯
「水着いいいいいいいいいいい!!??」
流石に僕も想定していなかった。
これ、どうしよう⋯⋯
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