161:バレンタインコラボ決定!?
始業式の後、部活に顔を出すようになってから数日が経った頃、僕のYoutubeのアカウントにメッセージが届いていた。
「ん? 企業からメッセージ?
⋯⋯えっ!? 企業!?」
なんとそのメッセージの差出人は企業、つまり企業案件の誘いだった。
その企業は有名なメーカーで牛乳や生クリーム、バターなどの製菓材料に加え、自社でもお菓子などを販売している超大手企業。
僕も日常的に使うメーカーだし、これにはびっくり。
「せ、正式な企業案件⋯⋯GloryCuteみたいに流れじゃなくて、というかこう言う風にメッセージが来るんだ⋯⋯」
僕は驚きが隠せないままそのメッセージを開き、内容を確認し始めた。
「ふむふむ、バレンタインのチョコレートを作る企画⋯⋯ね」
僕は一瞬のタイムラグ後に叫んだ。
「だから僕は男なんだってばあああああ!」
叫んで少し落ち着いてきたような気がするから、メッセージをちゃんと確認していこう。
「⋯⋯ふぅ、一旦落ち着こう。
よくよく考えたらバレンタインチョコを作るのは女の子だけって訳じゃないよねたぶん。
企画はバレンタインチョコを作るって言うのがメインなんだね。
それで一緒に他の事務所の有名Vtuberも参加⋯⋯えっ?」
有名Vtuberの名前にはふわちゃんとエミリーさんの名前が。
「これ絶対僕が二人の事知ってるから呼ばれたやつじゃないのかな?」
心の中では絶対そうだ、と思いつつも企業案件がきたことは嬉しい事なのでよしとしておこうかな?
「ええと、当日は指定された場所で生配信を行う予定⋯⋯生配信!? 動画じゃないの!?
まぁ、そこは一旦置いといて⋯⋯ええっと、レシピは自分で用意⋯⋯あっ、Youtube内に動画が上げられているものならレシピの利用はOKか、これは有り難いかも」
「審査員がいて、味、見た目を採点か⋯⋯ちょっと面白そうって、えっ!?
審査員してくれるの僕がいつも見てる料理系Yotuberのタツヤさんなんだ!」
読み進めていく度、興味津々になっていった僕は迷わず参加を決めた。
「あっ、一週前までに作成予定のレシピを送っておけば材料は用意してくれるんだ⋯⋯ある程度余分に材料もあるから材料見て途中変更もありかぁ、それなら、レシピ分だけでも早めに送っておかないと!」
そして即座にコラボはOKだと送り、どんなものを作ろうか考えることにした。
♢
企業に返信をしてから数日後、チャンネルの方で告知をしても良いと言われた僕は、次回の配信で今回のコラボについての発表をする事にした。
だけど⋯⋯
「うーん」
「どうした優希、そんな悩んだ顔して」
僕が学校で良いレシピが無いかを考えていると裕翔が僕に話しかけてきた。
「実はね、企業案件を受ける事になったんだけど、まさかの料理をする事になって、何を作ろうか凄く迷ってるんだ」
「なるほど、凄いな。
ちなみにテーマとかはあるのか?」
「うん、バレンタインのチョコレートだって」
「貰うことはあっても作る事は無いやつだな......難しいな」
「そうなんだよね......というか僕男なのに自分でバレンタインチョコを作るって凄いシュールじゃない?」
「優希は可愛いしセーフだろ理論じゃないか?」
「裕翔?」
僕が睨みつけるように裕翔を見ると裕翔はわざとらしく視線を逸らした。
「な、何も言ってないぞ俺は」
「ふーん、まぁ良いや。
裕翔に聞きたいんだけど、バレンタインチョコってどんなイメージあるかな?」
僕は貰った記憶が無いから、モテる裕翔に聞くのが良いと思ってそう聞いてみた。
「ハートとか、あと甘いチョコが多い気がするな」
「ハートかぁ⋯⋯やっぱりハートの型とかあった方が良いかな?」
「見た目に関してはそれっぽくなるよな」
「だよねぇ」
「一番良いのは女子に直接聞く事じゃないか?」
「それがやっぱりいいのかなぁ、でもなんか聞くの恥ずかしくない?」
僕がそう言うと、裕翔は確かに、と言いながら首を縦に振った。
「それこそ、天音さんとか優希の事情知ってる人に聞くのはどうだ?」
「天音さん達かぁ、確かにありかも?」
僕達がそんな話をしていたからか——
「優希くん呼んだ?」
「呼ばれた気がしたんだけど」
「優希くん⋯⋯どうかした⋯⋯?」
三人がこちらへやって来た。
「良く気付いたな⋯⋯」
「ふっふーん、耳には自信あるんだ!」
「マジかよ、下手な事言えないじゃねぇか!」
「それで、何か聞きたいんだよね?」
天音さんが僕にそう尋ねてきた。
「えっと、実は企業コラボでバレンタインチョコを作ることになったんだけど、どう言うのがいいのか正直僕分からないから⋯⋯」
「なるほど!
誰に渡すかを考えて相手のことを想いながら作ると良いんじゃ無いかな?」
「誰に渡すか⋯⋯逆に普段お世話になってる人全員とかじゃだめなのかな⋯⋯?」
「それでも良いと思うよ?
いつもありがとうって気持ちを込めて作ればいいと思う!」
「私も同じこと考えてた。
結局は気持ち次第だし、友チョコなんてものもあるくらいだし、気軽に渡して良いと思うよ?」
「気にしすぎ⋯⋯かも?」
思っていた以上に女子陣は気軽にチョコを渡しているって知って僕は何処か安堵していた。
それだったら気軽に渡しても、大丈夫だよね?
「そっか、ありがとう!
特に深い事考えずに作ってみるよ!」
「うん! 動画楽しみにしてるね!」
天音さんがそう言うと、ボソッと香月さんと花園さんと裕翔の三人が呟いた。
「優希くんの作るチョコ⋯⋯食べてみたいかも⋯⋯」
「私も⋯⋯」
「俺も」
「二人はともかく裕翔まで!?」
「だって、優希の作るもの大体美味そうなんだぜ? 見るだけじゃなく食べたくなるのも当たり前ってもんよ」
「そうそう! 動画だけだと遠い人って感じるけど、優希くんは目の前にいるんだよ?
もしかしたらって期待しちゃってもおかしく無いよね! むしろ私もあげるから交換して欲しいかな!?」
「交換、それいいかも⋯⋯!」
「待って、交換するなら私も混ぜてよ!」
「みんな落ち着いて!?」
「落ち着いてるよ?」
「全然普通だけど?」
「交換⋯⋯したいな⋯⋯」
「俺はどうすればいい?」
「裕翔ォォォ!?」
みんなが突然暴走し始めて色々と凄い事になった気がしたけど、確かに交換は面白いかも。
ちょっとしたやつを数作って持ってくるのはありなのかもしれないね。
最悪自分の家で作って持っていったり、レシピを試してみたやつを持って行っても良いわけだしね。
「とりあえず、十四日は無理だから、十五日に持ってくるようにするよ。
ただ配信の時と同じやつかは分からないよ?」
「「「「それでも大丈夫!」」」」
「だからなんで裕翔まで!?」
「減るもんじゃないしいいだろ!」
「チョコは減るよ!?」
そして僕はなんだかんだでチョコを作って持ってくる事になった。
♢
「⋯⋯って言う事があったんですよ!」
僕は放課後になって文芸部の部室に来て、先輩とさっきあった話をしていた。
「ふぅん、そうなんだ⋯⋯それにしても優希くんがうち以外とコラボかぁ、なんだか凄い事になってるね?」
「僕も正直予想以上でびっくりしてます⋯⋯」
「まぁ、皆が優希くんの良さに気付いたって事だし、わたしとしては嬉しい反面、少し寂しいかも」
「えっ?」
「だって、優希くんが人気出れば出るほどこうやって話す時間も減っちゃうでしょ?
それは少し寂しい事だけど、でも優希くんが有名になっていくのは嬉しい事だしって複雑な気分なんだよね」
「なるほど⋯⋯でも、これと言って忙しくなる訳じゃないのであんまり変わらないと思いますよ? 最近編集も慣れてきましたし!」
「そうなの? でもあまり無理しちゃダメだよ?」
「はい、またあんなことあったらだめですし⋯⋯」
僕はふと、風邪をひいた時に薫さんのお世話になってしまった事を思い出した。
「何かあったの?」
「あっ、その、何でもないですよ!?」
流石に恥ずかしい事だったから先輩には言えない、かな。
「そ、そう? あっ、そうだ。
優希くんバレンタインのチョコ作ってクラスの子と交換するんだよね?」
「そうですよ!」
「じゃ、じゃあさ、わたしとも交換してくれないかな?」
「はい! 大丈夫ですよ!」
「ほ、本当!?」
「嘘吐く意味も無いですよ!?」
「そ、それもそうだよね⋯⋯(頑張って作らなきゃ⋯⋯!)」
そんな話をしたその後は最近話題のVtuberについて語ったりしていると、時間が来てしまったので今日は解散する事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます