124:閑話(優希くんが風邪引いてた頃のエミリーちゃん)

 俺の名前は姫村優斗、有名Vtuber事務所Vライブの一期生である閃光のシュバルツの中の人をやっている。


 そして俺はこの事務所の初期メンバーであり、裏方作業を多くやっていた事もあって今回のオーディションの審査員を務める事になった。


 今回うちの事務所において欲しい人材に種類があり、一つはゲームの上手さ、そして二つ目に声のかっこよさ、可愛さ。


 又はユニークなキャラを持っている人。

 他事務所で言ういまなんじの浮雲ふわりや聖曽なの辺りが独特な本性も売りになっているのでそう言ったキャラを持っている人が欲しいらしい。


 流石にあの二人のレベルがきたらうちの事務所に所属してるライバーのキャラが喰われそうなもんだけど社長の考える事はよく分からん。


 そして今日オーディションを受けに来た人の中に数人ほど良さそうな人を見つけチェックをしていると今日ラストの人の番になった。


「次の人、どうぞ」

 俺がそう言うと入って来たのは輝くようなブロンドの髪の女性だった。


「こ、こんにちは!」

 想像以上に日本語が上手い。


「こんにちは、私は今日のオーディションを担当させてもらう姫村優斗と申します。まずは自己紹介をお願い出来ますか?」


「はい!わたしは、アメリカからきたエミリーデス!まだ日本語完璧じゃないデスけど、出来る限り覚えてきたので今日はよろしくおねがいしますデス!」

 想像以上に硬い挨拶で俺はびっくりした。

 見た感じもっと凄い物を感じたんだけど気のせいか⋯⋯?


「特技をお聞きしても?」

「はい!FPSゲームで敵の頭をキタネー花火にできます!」

「!?」

 俺の気のせいか?

 今何か不穏な単語が聞こえた気がする。


「も、もう一度お聞きしても?」

「敵の頭をキタネー花火にできます!」

 絶対これ覚える日本語間違ってるよな!?


「汚い花火にしてどうするんですか?」

「へっ、きたねー花火だ⋯⋯って言いマス!」

 絶対アニメとかそっちに影響受けてるよな!?

 それにしてもなかなか面白くなってきた気がする。

 もっと面白い覚え方した日本語を聞きださないと。


「ちなみに今のセリフはどこで知ったんですか?」

「日本の有名なあのアニメデス!」


 だわなぁ⋯⋯


「アニメが好きなんですか?」

「とても大好きデス!」


「好きなアニメは?」

「男の娘ものです」

 ドランゴボール関係ないじゃねぇか!?

 というかお前もふわり側の人間か!?


「へ、へぇ⋯⋯」

「男の娘はサイコーデス!」

 口調変わってるぞ!?

 やっぱりお前ふわり側だろ!?


「ちなみに最近のおすすめとかはあるんですか?」

「白姫ゆかちゃんデス!!!!」

 お前もかああああああああああああ!!!!


「あ、あぁ、最近有名ですよね⋯⋯」

「そーなんデス! わたしも夏頃にアメリカのけーじばんサイトで見てからずっとお気に入りデス!」

 口調安定しないなぁ!?

 これはあれかやはりふわり側だから興奮すると口調おかしくなるやつか、なんなんだこのシンクロ感は。


「な、なるほど⋯⋯」

「わたしが日本でVtuberをやろうとした理由の9割はゆかちゃんをこの目で見る為なんです!」

 うちでVtuberやる気あるの!?


「そ、そうなんですか⋯⋯」

「それにゆかちゃんと約束しました!

 日本に来たら会ってくれるって!」

 何やってんだよ優希ィィィィィ!!


 というかもうカオスすぎて俺は何を聞けばいいんだ。


「最後に自慢出来ることとかあったら教えてもらえますか?」

 こう言う時は早く終わらせるに限る。

 キャラは間違いなく社長の好みだ。

 声も容姿も悪くない。

 だけど、目の前で優希の話をされるのは複雑な気分になる。


「わたしの自慢デスか?PSKGの世界チャンピオンデス!」

「チャンピオン!?」

 うわぁ⋯⋯これは⋯⋯


「話は聞かせてもらった!!」

 突然部屋のドアをバン!と開けながら誰かが入って来た。


「しゃ、社長!?」

「いやーキミ良いキャラしてるじゃないか、いまなんじじゃなくてうちに入らない?」


「ということはVライブですか?」

「そうだよそうだよ!」


「と言うことは⋯⋯ゆかちゃんのお父さんにも会えるんデスか!?」

「会えるよ!どうするここで入るって言ってくれるならすぐにでも会わせてあげようじゃないか!」

「入りマス!」

「よっしゃ、それじゃ一つこの書類、あー英語で書いてあるからちゃんと読んでくれるかな?」


 そう言ってエミリーさんに書類を渡す社長。

 エミリーさんもしっかり読んで納得した上でサインをしていた。


「うん、OK!」

「これからよろしくお願いします!」

「それじゃ、約束のゆかちゃんのお父さんだけど⋯⋯」

「ワクワクします!」

「この人」

 そう言って俺を指さす社長。

 あーあ、バレちゃった。


「えっ?」

「俺がゆかの父親だよ⋯⋯」

 俺は諦めてそう言った。


「えっ?ということはシュバルツさん?40代って⋯⋯really?」

「英語出てるぞ?まぁ本当だよ、この見た目だけど」


「あー、ビックリしすぎて、つい出ちゃったデス、それにしても、40代の人とは思えないデス!」

「はは、ありがとう」


「それじゃ、契約の通りにこの事は出来る限り表に出さないようにね?」

 社長はそう言うと書類を持って部屋を出て行った。

「はい!」


 俺は部屋の中でエミリーさんと二人きりになっていた。

「うん、まぁ、これでお疲れ様でいいのかな?」

「お、おつかれさまデス!」

「それじゃ俺はまだやることがあるからここでお別れだけど、後日打ち合わせとかがあると思うからまた連絡させるからそれまで待っててくれるか?」

「ラジャーです!」

「それじゃまた、気をつけて帰るんだぞ?」

「はい!」

 そうしてまた俺に後輩が出来る事になった。

 まぁ、エミリーさんは自分でやってたとかさっき社長と話してたし、ある程度は自分でできるだろうし手のかからない後輩ってところか⋯⋯


 優希絡みで暴走しないかが怖いところだな。

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