22:僕だって男なんだよ!?

「んー!」

 僕は朝目が覚めて伸びをしていた。

 朝起きてすぐにする伸びは身体がスッキリとしてとても心地いいんだよね。


 シャワーを浴びて朝ご飯を食べ、テレビをぼーっと眺めているとバスの時間が近付いてきていたので家を出て学校へ向かう、いつもの朝だね。


「みんなおはよー」

 学校へ着いた僕は教室へ入るといつもの様にクラスメイトに挨拶をする。


「あっ姫くんだーおはよー」

「昨日見たよーなんかやばかったねー」

「ふっふっふ、実は私もスパチャを投げたのだよ⋯⋯」

 いつも僕に構ってくれるクラスメイトの女子達が話しかけてきてくれた。


「あっ、三人ともおはよう!

というかもしかして斜め前子って⋯⋯」


「あっ気付いた?私だよ私!」

 それは僕の斜め前に座っている花園はなぞのしのさんだった。


「ねぇねぇ、聞きたかったんだけどゆるママとリアルで会ったの?」

「うん、土曜日に会ったよ」

「へぇーそっかぁー」

「そういえばゆる先生がどんな人か教えて欲しいって言ってたね」

「そうそう!出来れば教えてくれないかな!

 ネットの情報だけだとやっぱ足りなくて!」

「いいよ、えっとね⋯⋯」

 僕は薫さんの特徴を教えた。


「ふむふむ⋯⋯ネットの情報と大きく変わってないからいけそうだね、姫くんありがと⋯⋯!」

「大したことじゃないから大丈夫!」

「(うぇひひ、今年の夏コミまで時間無いから急ピッチで描きあげないと⋯⋯)」

 まさか自分とゆるママをネタに本を描かれるとは思ってもいなかった優希はそのまま自分の席につき授業を受け、気付けばお昼休みになっていた。


♢(裕翔視点)


「裕翔ーお昼今日どこで食べる?」

「んー今日はパンとか買ってきてるからここで食うかな」

 優希が昼休みになったから弁当を持って俺の席に来た。 今日はパンを買ってきているからここで一緒に食べる事にした。


「おっけー! じゃ僕もここで食べるよー」

「おう、そういや昨日の配信見たけどなんだあれヤバすぎないか?」

 普通に考えてスパチャで数十万はヤバイよな。


「うん、僕もそう思ってるし、終わった後男バレしなかった事に罪悪感感じるしで⋯⋯」

「(まぁぶっちゃけ男って言われても違和感しかないんだよなぁ優希って)」

「なにか言った?」

「いや、なんでもないぞ?」

「そっか」

 そう言うと優希はもぐもぐと弁当を食べ始めた。 俺の心でも読まれたのかと一瞬思って冷や汗をかいたのは内緒の話だ。


「んー♪やっぱりお弁当には唐揚げだよねぇ!」


 俺みたいに長い付き合いだったり知り合いじゃなかったら、皆優希の事女の子だって思うんだろうなぁ。


 可愛い顔の友人を見つめ、学校にいる間くらいは守ってやろうと再び決心した。


「そう言えばさ優希」

「どうしたの?」

「今週末から夏休みだろ?今週の日曜日にオフコラボとか言ってたけど遠出するのか?」

「いやしないよーゆる先生実は近くに住んでるらしくて」

「マジかよ、偶然ってあるもんなんだな」

「僕もびっくりだよ!」

「それでコラボで何やるんだ?」

「あれっ?」

「どうした?」

「やばい、何も聞いてない⋯⋯いやでも薄らと私に任せてって言ってたような⋯⋯記憶がおぼろげで⋯⋯」

 優希が何やら不安になるような事を突然言い始めた。

 マジで不安になるからやめてくれ!


「一昨日会ったばっかりなんだろ!?

 なんで忘れてるんだ!?」

「えーっとね、あまり言いたくなかったんだけど⋯⋯なんか女装させられてからの記憶が曖昧で気付いたら女装したまま家に帰ってきててなんか企業案件まで貰うしでもうわけ分かんなくて⋯⋯」


「ん???いや、色々おかしいだろ!?」

「だ、だよねぇ⋯⋯」


 そんな話をしていたらいつも優希に話かけている女子のうちの一人、香月こうづき美由紀みゆきがこちらにやって来た。


「ねぇ優希くん!女装したって本当!?」

 一応配慮してか小声で言ってくれる辺り優しい子だな。


「う、うん⋯⋯恥ずかしいからあまり言わないで⋯⋯」

「お願い!!!!写真あるなら見せて!!!何でもするから!!!」

「そういうことは言っちゃダメだよ!?」

「ははは、優希だからまだいいけど下手な男なら良いように言い包められるからあんま男相手に使うなよ?」

「はっ!?ご、ごめん、動揺してた⋯⋯」

 コイツらはコイツらで心配になるな⋯⋯


「それで写真だったっけ⋯⋯ちょっとだけ⋯⋯だからね?」

「うん!ありがとう!」

 優希はそう言うと自分のスマホを彼女に渡した。


「⋯⋯????」

 困惑しているようだ。

「なぁ、優希俺にも見せてくれよ。」

「うぅ⋯⋯どうせ見せる羽目になるしいいよ!!」

 ヤケクソになった優希がそう言ったから遠慮なく香月さんからスマホを受け取り、俺はその画面に映る画像を見た。


 誰だこの美少女。


「お、おい優希」

「ど、どうしたの?何か変だった?」

「いや、これ、女の子じゃん」

「裕翔!?僕だって生物学上は男なんだけど!?」

「いやいや、実は女の子だろ」

「裕翔ォォォォォォォォ!?」

「はっ!? ねぇ優希くん!

 これからもこういう服興味あったら私に言ってね!

 お化粧のやり方だって教えてあげるから!」


「えっ?えーと?」

 優希が困惑しているようだ。 ぶっちゃけ男じゃなかったら俺はときめいていたかもしれない。

 ⋯⋯大丈夫だよな、俺。


「僕男だからお化粧に興味なんて持たないよ!?」

「まぁまぁ、最初は皆そう言うんだよ?」

「待って!?僕を変な道に落とそうとしないで!?」

「よいではないかーよいではないかー!」

 じりじりと優希に近付いていく香月に、じりじりと後ろへ逃げていく優希。


「なんてね♪」

「ふぅ、びっくりさせないでよぉ!」

 悪戯成功!と言いたげな顔をした彼女が笑っている。


「えへへ、優希くんが可愛いからついつい」

 気持ちは分かるぞ、香月。


「でも、お化粧配信するときとかに自分で出来ると便利だよ?」

「ぐっ⋯⋯それを言われると否定出来ない⋯⋯」

 いや、優希も否定しようぜ、そこは。


「それに自分の好きなように出来るのもメリットなんだよね、自分の理想の顔作ってみたくない?」

「うぅ⋯⋯でも⋯⋯僕は⋯⋯」

「ゆるママが自分で可愛く出来たら褒めてくれるかもしれないよ?」

「うっ⋯⋯でもそういう関係じゃないから!どうせ僕みたいな男、男って見てもらえてないと思うし⋯⋯」

「自信持って大丈夫だよ!優希くんには優希くんの良さがあるんだから!」

「そうかな⋯⋯?」

「化粧については気分が向いたらでいいから考えておいて!じゃ私はまたあっちに行くから!」

「う、うん、わかったよ」


 おい、優希のやつ押し切られてないか?

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