第42話 婚約祝い

 ウーニャとヘムを残して他の四人はエルクハイムに帰ると言う、四人共エルクハイムに家族が居るからな無理も無い。

 感謝を伝えてエルクハイムから乗って来た馬車を送り帰す序でにに乗って行って貰う。

 

 ウーニャとヘムは俺の行く処に着いていくが、王都も面白いので暫くは王都に居ると残った。

 格好付けの護衛が要るので教育している中から使えそうなのを選ばせ、ウーニャとヘムの責任で鍛えろと言っておく。

 

 二輪馬車を出して王都の冒険者ギルドに顔を出す、サブマスのランカーさんに宝珠果を二房出し売却を依頼する。

 唸りながら又暗闇の森からかと問うので、オークションでお願いする。

 

 「之を通常で売り捌くのは無理だよ」

 

 「だからオークションに掛けてどの程度の値が付くか知りたいのですよ」

 

 「沢山有るのか?」

 

 「有るけど妖精族の為に収穫した物だから出すつもりは無いよ」

 

 溜息と肩を竦めて首を振る器用な芸を見せて運搬係のマジックバックに仕舞う。

 

 代金は何時もの様に振り込んでおいてと頼んで街の散策に出る

 

 エスコンティ侯爵令嬢エバミーの嫁ぎ先が決まったと聞き祝いの品を持参する。

 先触れなんて出す気が無いので二輪馬車でウーニャに御者を頼んで侯爵邸に行く。

 おーぉ、すんごいねー今を時めく侯爵令嬢の婚姻ともなれば祝いに駆けつける貴族の数も凄いや。

 

 ウーニャに厩に馬車を預ける様に指示して途中から歩く、玄関で貴族の対応をする執事長のナリヤードに手を振ってメイド長のエメラの下に行く。

 

 「エバミーの嫁ぎ先はハイドだって、この間会ったけど何も言わなかったよあの野郎」

 

 「アルバート伯爵様、決定し公表する迄は迂闊に漏らせません、例え伯爵様にでも」

 

 「水臭い奴だね、で侯爵様と当事者の御令嬢は何処に」

 

 「御挨拶の対応に朝からサロンに詰めております」

 

 「大変だね、これお祝いの品だけど渡しておいてくれるかな」

 

 「駄目です直接お渡しするのが礼儀です。まして貴方様は伯爵様で御座います」

 

 「だから貴族なんかに成りたく無いのに、あの糞野郎は一度ファイアーボールを王宮にぶち込んでやるからな」

 

 今の言葉を華麗に無視してアルバートをサロンに案内するエメラ、侯爵の下に辿り着くのは至難の技と思ってホールの片隅で喉を潤して居ると出ましたよ。

 エバミー嬢とエスコンティ侯爵様がにこやかにアルバートの下にやってくる。

 

 「他のお客様を無視して良いのですか」

 

 「いい加減疲れて居るのだ息抜きくらいさせろよ」

 

 侯爵様投げやりですな。

 

 「エバミー様御婚約おめでとう御座います。ハイド子爵とは驚きですね」

 

 「馬鹿な貴族のボンボンや爺様からの求婚にはうんざりしていたのよ。ハイド子爵なら気心も知れて居ると父も喜んでいるわ。わたしもね」

 

 祝いの品だと、小さな壷と二房の宝珠果を差し出して。

 

 「果物ですから早めにお召し上がり下さい。壷は若い妖精木の粉末で衣装部屋の片隅に置かれますと長く移り香を楽しめます。決して身に付けないで下さい香り過ぎますから」

 

 「妖精木の粉末!」

 

 「あー王家には献上しちゃ駄目ですよ。妖精木は王家がハイド子爵から買いますからね」

 

 「まだ陛下に嫌がらせをしてますの」

 

 「嫌がらせをされているのは俺ですよ」

 

 他の貴族の邪魔になるので切り上げ、ウーニャを置いて帰れ無いので泊めてと侯爵様にお願いする。

 

 苦笑いで頷く侯爵様でーす。

  

 翌日ウーニャを無事エスコンティ邸から送り出し俺はアラモナに向かって飛ぶ。

 今回は珍しくフィーィの一族だけだ、それでも留守番を残して250人以上の編隊飛行は中々の見物で在る。

 

 子供達と遊びで雁行,山形,横一列,V字と色々組み合わせて飛んでいたら、バラバラで飛ぶより編隊飛行の方が飛び易いとなり集団で飛ぶときの基本になってしまった。

 最近は山形の5,7,9,11人の編成でその集団を多数揃えて斜行陣にして高低差を付けたり、雁行陣や密集陣で飛んだり分裂集合を繰り返しハンタービーや襲って来る猛禽を見事な編隊行動で撹乱撃退している。

 

 アラモナのハイド子爵邸の庭に直接降りる。

 フィーィからファールに連絡し、でファールがハイド子爵に伝えてくれるので庭にはハイド子爵直々のお出迎えだ。

 

 「婚約おめでとう」

 

 若い妖精木を小さな壷に納めた物を差し出す。

 中には太さ3センチ長さ10センチの妖精木を一本入れている。

 恐々受け取るハイド子爵。

 

 「アルバートが呉れる物は恐ろしいからなぁ」

 

 「香りが強いので壷から出さない方が良いですよ。前回の物より数段上物ですから」

 

 「こりゃー我が家の家宝に成りそうだな」

 

 「いざと言う時の切り札は何枚合っても良いでしょう。それから結婚式の披露宴用に良いお肉を提供するよ」

 

 王都とエルクハイムから人を送る事を約束し、ファールとその一族に挨拶してさっさと引き上げる。

 僅かの間にファール達もフィーィに教わった編隊飛行で見送ってくれた。

 こりゃー妖精族全てが編隊飛行を取り入れる日も近いな。

 

 王都に帰ると久し振りに冒険者ギルドに顔を出す。

 サブマスのランカーさんにお願いしてゴールデンベアのレッド種を一体解体して貰い、お肉と魔石は引き取り他は売り払うと告げる。

 

 「最近オークの肉が品薄でな草原牛とかも欲しいな、それに」

 

 「はいはい何が必要ですか、最近森を歩けないので余り在庫は増えてないですよ」

 

 「それよ、お前飛べるんだってな」

 

 「ええ森の里のエルフにお前なら飛べるだろうと言われ、飛び方はフィーィ達に聞けと言われましてね練習したら飛べる様になっちゃいました」

 

 「でだ、緊急時に妖精族を使って通信をしたいのだが頼めないか。報酬は払うから」

 

 「それは無理じゃ無いですか。報酬って何を報酬に支払うつもりです。人族基準の報酬って彼等には無価値なものですよ」

 

 「然しエルクハイムが魔獣達に襲われた時に、凄い数の妖精族達が救援に駆けつけ魔獣達を蹂躙したって話しじゃないか」

 

 「あれって如何なる報酬も受け取って無いですよ。当時エルクハイムの領主エスコンティ伯爵が、謝礼の申し出をしましたが拒否されました。妖精族と人族とでは価値観が違い過ぎるのです」

 

 「人族と妖精族との反目は何故起きたのか判ります。人族が妖精族を遊び半分で攻撃し石を投げたり捕らえて小鳥の様に飼おうとして、攻撃したのが全ての原因ですよ。話しが通じるならと妖精族を利用しようとするなら俺が敵に回りますから覚悟をして置いて下さい。貴方の後ろにいる方々にも警告して置きますよ」

 

 「わっ、判った。今の話しは無かった事にしてくれ、ギルドには警告を伝えておく」

 

 ◇  ◇  ◇


 一度王族や貴族それにギルドの連中に力を見せつけておく必要が在るな。

 

 ウーニャに宰相閣下宛ての面談要請の書簡を届けて貰う。

 返事が来た翌日二輪馬車で王宮に向かう城門をすんなり通されウーニャに暫く待っている様に頼んで宰相閣下の下にいく。

 

 応接室で宰相閣下に冒険者ギルドでの提案を話し、如何なる相手であろうとも妖精族を利用させる気は無い。

 彼等も人族と和解したとは言え易々と利用はされないだろうと伝える。

 

 だが国王の俺には一切手を出すなの命令は、王家の力の及ぶ範囲のみ有効だ。

 冒険者ギルドの様に王国の支配から外れていたり、大商人の様に金の力を使う者や諸外国の高官が色気を出して来るだろう。

 

 この際俺の力の一端をそんな奴等に見せつけて置こうと思うので、王国騎士団の猛者と魔法総監支配下の精鋭魔法使いと模擬戦をしたい。

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