第96話 ステイシーVSアロエラ その1
準決勝、セタリアは危なげなく圧倒的な実力差を見せつけて決勝へと勝ち進んだ。
『準決勝、アロエラ・ボーアVSステイシー・ルドエ!』
そして、もう一つの準決勝の対戦カードは現在大注目のアロエラとステイシーの戦いだ。
ステイシーは才能のない魔導士の身で数々の功績を残し、アロエラは特異な魔法の使い手であり、それを試合中に使いこなせるようになった。
そのうえ、アロエラは攻めに特化した魔法、ステイシーは防御に特化した魔法を得意とする。
ある意味、これは最強の矛と最強の盾を決める対戦カードでもあるのだ。
「アロエラとステイシーの戦いか……」
「正直、ステイシーには不利な戦いだな」
「スタン兄様、どういうことですか?」
ブレイブと戦いの行方を見守っているスタンフォードの会話を聞いていたフォルニアは不思議そうな顔をして尋ねる。
「今までのアロエラだったら、魔法を使う度に反動が来てステイシーの硬化魔法で防ぎきれる可能性もあった。だけど、あいつは破壊魔法の真価に気づいて反動なしで魔法だけを解除できるようになった」
「つまり、アロエラは一方的にステイシーの防御力を無視して攻撃できるってわけだな」
アロエラはゲームのキャラとしても防御無視の魔法を使用できた。
今のアロエラはその状態に限りなく近い、防御特化の魔法を使う者の天敵に進化してしまったのだ。
「ステイシーには悪いけど、俺はやっぱアロエラに勝ってほしいな」
「ま、幼馴染だし当然だろうね」
スタンフォードは真剣な表情でアロエラと向き合うステイシーを見つめる。
「ステイシーだって負けちゃいない。不利な戦いなんて彼女には関係ない」
ステイシーの制服のスカートのベルトに取り付けられた容器を見てスタンフォードは笑みを浮かべる。
「ジャイアントキリングはあの子の十八番だからね。それに今月は土生月、土属性の魔力が最も活発化する時期だ」
スタンフォードは不利な戦いだろうとステイシーが負けるとは微塵も思っていなかった。
「〝
「なっ!?」
突如、ステイシーから放たれた砂鉄に拘束されたアロエラは驚いたように目を見開く。
武器の持ち込みは事前登録を済ませていれば可能だ。
ステイシーは大量の砂鉄が入った容器を武器として持ち込んでいたのだ。
「〝
ステイシーはアロエラの手足を拘束したまま硬化魔法をかける。
ステイシーは魔力の量も少ないうえに魔力の質も低く、高度な魔法が使用できない。
しかし、逆に言えば土や砂を操ったり、硬化魔法などの基礎中の基礎の魔法は使用できるのだ。
「こんのぉ……〝
アロエラは即座にコントロールできるようになった破壊魔法で魔法を破壊して拘束を解除する。
それを待っていたかのように、ステイシーは両手に砂鉄を集めて硬化魔法を発動させる。
「〝
「がはっ!?」
両腕が二振りの剣となったステイシーの一撃が隙だらけのアロエラを切り裂く。
鮮血が飛び散り、観客からは驚きの声が上がる。
「おい、あんな攻撃的なステイシー初めて見たぞ!」
「硬化魔法で作り出した二振りの剣……そっか、ルーファス先輩を参考にしたのか」
「参考にしたってレベルじゃないだろ」
「そりゃそうさ。何てったってこの俺様が直々に指導してやったんだからな」
今まで見たことがないほどに好戦的なステイシーを見て全員が驚いていると、楽しそ気な笑顔を浮かべたルーファスがやってくる。
「ルーファス様、生徒会の仕事はいいんですか?」
「俺様は来賓に合わせらんねぇって去年もハルバードから厄介払いされてるからな。むしろ、こうしてぶらついてるのが仕事ってわけさ」
それはどうなんだろうか、とスタンフォードは微妙な表情を浮かべたが、今更ルーファスに何を言ったところで無駄だということは理解していたため、何も言わなかった。
「しっかし、これで勝負は決まったようなもんだ。爆発娘もさすがにあの一撃で血を流し過ぎたからな」
「それはわかりませんよ」
アロエラは腹部に斬撃を受けたことで、大量の血を流している。
誰がどう見てもステイシーが優勢に見えるだろう。
「アロエラは追い込まれてからが強いんですよ」
ブレイブがそう言ったのと同時に、舞台から爆発音がする。
「ほらね」
ブレイブはそれがわかっていたかのようにどこか自慢げな笑顔を浮かべた。
舞台上で、今度はステイシーが驚きのあまり目を見開いている。
「まさか、自爆して傷口を焼いたんですか!?」
「まあね。痛っぅ……よし、これで血は止まったわ」
アロエラはまるでダメージなどそこまでないように塞がった傷を叩くと、肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべた。
「さて、お返しよ!」
アロエラはハンマーを振りかぶると回転しながらステイシーに向かっていく。
「〝
「〝
咄嗟に砂鉄を纏って硬化魔法をかけたステイシーだったが、アロエラの破壊魔法によって硬化を破られて派手に吹き飛ばされてしまった。
集中した破壊魔法ではなかったため辛うじて衝撃はある程度殺せたが、鈍器で強く殴られたため肋骨が数本持っていかれた。
「さて、仕切り直しと行こうじゃない!」
「じょ、上等です……!」
何とか立ち上がると、ステイシーは覚悟を決めてアロエラを睨み返した。
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