エンディング・クレジット

それから3年。




 カヌキさんが呟くと、ミヤコダさんがため息をついた。

「綺麗にお別れしたい」

「…もう、いいんじゃない。これでおしまいなんだし」


「どう言えば、お礼が伝わるのかな」

「いい思い出ばかり、だよ」


「でも…さよならだね」

カヌキさんがそう言うと、ミヤコダさんの喉がくっと鳴った。

 




 カヌキさんは、希望していた会社の研究職に就けた。

 ミヤコダさんは大学で教授の助手をしながら、博士課程に進んだ。

 もう、二人は社会人オトナだ。子供みたいなことを言っているわけにはいかない。


 春の強い風が吹き、二人は巻き上げられる髪を抑える。


 桜の花が舞っていた。



「もう、行かないと」

「うん…」





 そして、二人は歩き出す。



 別々の方向へ。



 カヌキさんは右へ。

 ミヤコダさんは左へ。





 カヌキさんは名残り惜しそうにもう一度後ろを振り返った。

 そして、軽自動車のドアをバン、っと閉めた




٩( 'ω' )و




 カヌキさんは右側運転席。

 ミヤコダさんは左側助手席。

「さて、帰りますか」

「新しい『わたしたちの家』へ」



 築30年近い3DKの古い一軒家は、遂に取り壊しが決まった。取り壊しまで5年の予定だったが、少しだけ伸びて、二人は大学院を修了してからも、しばらくこの家で暮らすことができた。家賃が安いため、その分節約できたこともあり、まだ二人とも新社会人の安月給ながら、先日、防音室のある築浅のマンションに引っ越すことができた。

 そして、今日は、いよいよ明日に取り壊しが始まる二人は最初の『わたしたちの家』にお別れをしに来たのだった。



 あれ?

 もしかして二人が別れたと思った?


 カヌキさんにミヤコダさんが何回も笑われてた言葉。


「ホラー映画はエンドロールが出るまで安心しちゃダメですよ。最後にドキッとさせられますからね」




٩( 'ω' )و




 大丈夫


 カヌキさんとミヤコダさんは

 今日も明日もこれからも

 一緒に並んで歩いていくのだから


 マンションのエレベーターの中でミヤコダさんがカヌキさんの手を取って握りしめる。カヌキさんは表情を変えず、「再来月はニトウさんの披露宴ですね」なんて言いながら、ただ指を絡める。その感触にミヤコダさんはにっこりする。



 引っ越して来たばかりで、まだ慣れない新しい部屋に帰ってきて、ようやく二人はくつろぐ。

「さーて、何か観ようかな。」

 カヌキさんは、リビングのソファーに座るとリモコンを取り上げた。

 ハードデッキがフーンと音を立てて起動する。

「何見るの?」

 ミヤコダさんはコーヒーを淹れるためのお湯を沸かしながら、カヌキさんに尋ねる。

「架乃も観るなら、泣くくらい怖い映画にしようか」

「…多少は容赦してよ」

 はははっとカヌキさんは笑いながら考える。ホラー映画は見切れないくらい、まだまだいくらでもある。


 二人で過ごす時間もだ。


 ホラー映画でこんなに幸せになれるのは、カヌキさんとミヤコダさんくらいのものかもしれない。




 映画が怖ければ怖いほど幸せな恋がここにある










 STARRING


カヌキさん/香貫かぬき深弥みや

「これはこれ、映画それ映画それ


ミヤコダさん/都田みやこだ架乃かの

「もう、わたしと映画、どっちが大切なの?」



CAST (In order of appearance)


文太さん/香貫文太 シーズー 

アライさん/新居なつめ

ニトウさん/仁藤悠希

モリさん/鈴木望梨


大学祭のコンテスト司会者の先輩

雰囲気イケメンのバカ男

キングになった教育学部の先輩

その婚約者さん


カヌキさん元彼/松崎健吾

ペンションオーナー/架乃の叔父さん

その奧さん(マダム)/架乃の叔母さん


シモダくん/下田浩輔

委員長親衛隊

少女/秋葉雪世

ミヤコダさん元彼/佐久間


カヌキさんのお母さん


ミヤコダさんのお姉さん/都田那乃なの

那乃さんの旦那さん


カヌキさんのお父さん


ミヤコダさんの後輩

カヌキさんの親友/吉原瞳


工学部男子とそのドール

1年生男子カップル


カヌキさん高校時代の友人たち


ミヤコダさんのバイト先の先輩


ホソエ教授


カヌキさんの生徒/西澤まさ

そのカノジョ/長谷川すず

(友情出演)


ミヤコダさんの姪/都田紗乃さの

ミヤコダさんのお父さん


シモダくんの婚約者


カヌキさんの兄/香貫広大




じんくん/都田甚平

 coming soon……?




PRESENTS

 カクヨム



Special Thanks

 あなた



DIRECTOR

 うびぞお








怖い映画を観たら

一緒に夜を過ごそう







 










◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 今度こそ、本当におしまいです。


 前回で終わっても(むしろ終わった方が)良かったのだけど、最後まで『映画』にこだわって、エンドロールをやっちゃおうと思いました。そうです、うびぞおは、余計なことをして失敗することが多いタイプばかです(居直り)。

 こんなんWEB小説じゃなければできないし。

 何これつまんない、いらない、などと思われた方、二人が別れたと誤解した方、申し訳ございませんでした。てへへ。

 でも、読んでいただいて本当にありがとうございました。心より感謝しております。



 もし、よろしければ、うびそおの言い訳のような後書きが近況ノートにあります。でも。長いからすごーく暇なときにでも。

https://kakuyomu.jp/users/ubiubiubi/news/16817330652758784975


 ちなみに、前半(お隣編)の後書きはこちら↓。昨年の3月の近況ノートになります。これも長いからめっちゃお暇があれば。

https://kakuyomu.jp/users/ubiubiubi/news/16816927861376758770


 次回作の予定は、今のところ全くありませんが、もしも、「うびぞお」を見掛けたら、その時はまた、よろしくお願いいたします。


うびぞお




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

おしまいって言ったけど、短編+映画エッセイ 始めました。

https://kakuyomu.jp/works/16818093077150097449



 




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怖い映画を観たら一緒に夜を過ごそう うびぞお @ubiubiubi

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