お祭りへ
「ふむふむ、なるほどなるほど」
お姉ちゃんに浴衣を着せてみた。
帯を締めるのに中々時間がかかったので、私も手伝う。
そして、浴衣お姉ちゃんが完成した。
うん。可愛い。
可愛くなることは想像ついていたけど、予想以上だった。
マッチしすぎている。
普段は割とクールめなお姉ちゃんが、こういう元々が可愛らしい色である桜色の服を着るっていうのは、言葉で表せないほどの良さがある。
ロングっていうのも、また高評価ポイントだ。
なんかの映画に出てきそうなくらい、全てがマッチしている。
ちょっと恥じらいを見せるその姿も可愛らしい。
もう、120点あげちゃう!
「ちょっと……そんなジロジロ見られちゃうと……」
「恥ずかしい?」
「……うん。それに、髪の毛、今のままでいいのかな。結んだ方がいいとか」
もじもじしている。
そんな恥ずかしいのかな。
似合ってるし、もっと堂々としてもいいと思うけど。
「いやいや。お姉ちゃんはロングだからお姉ちゃんなの」
「ふ、ふーん? ……て、てんちゃんも着なさい!」
恥ずかしいのを隠すためか、共有するためか。
私にも着衣を促してくる。
最初から着るつもりだったけどなー。
「着ますよー」
と言って、私は近くに畳んでいた浴衣を広げ、慣れた手つきで着衣した。
私の浴衣は水色ベース。
ピンクのアジサイみたいな花がド派手に描かれたやつだ。
まぁ、これ小学校から使っているやつだし。着こなしは完璧なはず。
……もしや私の身体、成長していない?
「ど、どうすか」
勝手にショックを受けつつも、両腕を90度に広げて、お姉ちゃんに見せつけてみる。
「おぉ。可愛い」
「んー。いつもと同じ感想だ」
可愛いって言われたのに、それ以上の言葉を求めてしまうなんて、私は贅沢かな。
「めっちゃかわいいよ」
「んー!」
結果オーライ。
いい言葉を頂けました。
ありがとう、お姉ちゃん。
かんしゃかんしゃ。
「てんちゃん。もうそろそろ時間だよ」
その言葉に時計に目を移す。
もう、15時50分だった。
そんなに時間食ってたのか。
……まぁ。何はともあれ。
「お祭りだー!」
※※※※※※
巾着よし。
その中の財布よし。
ハンカチよし。
スマホよし。
家の鍵よし。
「……よし!」
草履を履いて、外に出る。
パンパンの巾着を腰にぶら下げて。
「てんちゃんてんちゃん」
視界の隅で、お姉ちゃんが手をひょいひょいと動かして私を呼ぶ。
「なーに?」
その姿を見る。
やっぱり可愛い。
……見る度にこんなこと考えていてもしょうがない。
考えないようにしないと。
まずはお姉ちゃんとの……デートに、集中しないと。
「てんちゃんの巾着、ぎゅうぎゅうだなーって」
「あー。たしかにね。えっと……お姉ちゃんのそれは?」
お姉ちゃんが提げているバッグみたいなのに指を向ける。
「あ。これ? えっとね、カゴ巾着って言ってね。浴衣との組み合わせもバッチリで、沢山ものが入れられる便利グッズ」
「なるほど。今の時代、私が今使ってるような巾着は古い時代になったのか」
「それは分からないけど……」
「なるほど。ま、それが置いといて」
前を向く。
お姉ちゃんの手をとる。
「いざ、しゅっぱーつ!」
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