仲直りして、エピローグ

「てんちゃん。こうして一緒に寝るのっていつぶり?」

「……お久しぶりかな」


 今日の夜は、私からお姉ちゃんをベッドに誘ってみた。

 ……ベッドに誘う。ってなんかダメだな。

 お寝んねに誘う。……まぁこれでいいや。


 今回は私の部屋で寝ている。

 消灯して、時計の針はもう夜の十時を回った。


 まだ髪は風呂上がりで若干しっとりしている。

 髪にカビが生えないかなとか心配しつつ、私はベッドに身を倒す。

 お姉ちゃんも同様だ。


 一緒に寝るのなんていつぶりだろうか。というか、まだ二回目か。

 多分その時よりも、私はお姉ちゃんのことを意識してしまっている。


 例えるなら、そう。

 遠距離恋愛で中々会えない二人が、久々に会った時に抱く気持ちの様なものを私は今抱いている。

 そんなこと体験したことないから知らないけど。

 多分、そんな感じなんだろうなって勝手に思ってる。


「……ふふ。てんちゃん。好き」


 私の左耳に囁く声が侵入する。

 ちょっとゾクってきた。


「ストレートだなー。前もそんな感じだったっけ」


 上を見上げながら言う。


「そんな感じだった……と思う。どんな風に接してたか忘れちゃった」

「……なるほど」


 まぁ。なんでもいいや。

 仲直りできたし。それで十二分だ。


 あ。

 仲直りと言えば、お姉ちゃんに私の書いた手紙を見せていない。

 けど、書いていることも、今考えてみると凄く恥ずかしい内容だったので、見せないで正解だったかな。

 後で、手紙は私の机の引き出しの奥底に封印することにしよう。


 なんて一人心の中でうるさく喋っていたら、


「てんちゃん、好きー」


 そう言ってきて、

 私の上にまたがってきた。

 パサっと、お姉ちゃんのロングヘアーが私の顔にかかった。

 ひんやりしていて、少しだけ気持ちがいい。


 なんて思ってたら、私の体をまさぐってきた。


 ──っ!


「ちょっ。お姉ちゃんっ。さっきまで大人しかったでしょ! 急になに!」


 びっくりしちゃって、思わず少し激しく言ってしまう。

 お姉ちゃんは手の動きを止めて、顔をこっちに向けた。

 暗闇で輪郭しか見えないけれど、多分ちょっと悲しい顔になってるかも。


「あーごめん。お姉ちゃん」

「……嫌なの?」


 寂しそうな声。

 そういうことじゃないのに……。


「嫌というか……。久しぶりすぎて、どうすればいいのか、分かんない」

「私もだけど。久しぶりだからこんなにいっぱい触ってるんだよ」


 その言葉は素直に嬉しい。

 そして思わず、


「……じゃあ。もっと触って?」


 そう口走ってしまう。


「うん!」


 お姉ちゃんは無邪気に頷いた。

 間髪入れずに、お姉ちゃんは、


「ねぇっ。あっ……」


 服の中に手を滑らされる。

 なでなでと動かされる。


 ……冷たい。

 けど、蒸し暑い夏の今にはぴったりな冷たさかも。


 そして手の位置を、腹の辺りから上の方へ、


「ひゃっ! ……ねぇっ。そこ……おっぱいだから」


 ちょっと。

 何やってるの。お姉ちゃん。

 それはいくら何でも触りすぎじゃないか。

 やっぱり、変態なのかお姉ちゃん。

 だけど、抵抗を一切もしていない私もなぁ……。


「意外と、ある」


 触りながらそう言われて。

 「可愛い」

 そう何度も呟かれる。

 この感じも久しぶりだ。

 今日は、たくさんの久しぶりがある日だな。


「ねぇってば。あっ……ん……」


 ……。

 別にやましいことは何も起こってない。

 いや、おっぱいは少なくともやましいかもしれないけど。

 それ以上は本当に何も起こっていない。

 お姉ちゃんの手がひんやりとしすぎていて、ついつい反応してしまうだけだ。


「……あっ。そこっ……」


 そこ乳首だから!

 ちょっと痛いから!


「お姉ちゃん!」

「えっ。なに──ひゃっ」


 私は起き上がった勢いで、そのままお姉ちゃんを逆方向へと押し倒した。

 ギリギリお姉ちゃんの頭はベッドに収まる。

 長い髪の毛が、ベッドに美しく広がった。


「痛かったからお返し!」

「……ん。……いいよ」

「いや、そんな恥ずかしそうにしなくても。……あれ。目瞑っちゃった」


 まぁいいや。

 と、私もお姉ちゃんと同じように、服をめくって手を置いてみる。


 あ。

 柔らかい。

 弾力がある。


「て、てんちゃん。……もっと、して」

「はいはい」


 お姉ちゃんの謎のノリは無視しつつ、私は手を上部へ、すーっと運ぶ。

 だけど。もちろん、突起物に衝突した。

 いや、おっきい。

 今まで特に気にしてなかったけど、それに今気づく。

 私よりかは遥かに大きいような。


「……揉んで」

「揉みません」


 そう答えて、私は触り続ける。

 ちょっとつまんでみたり、おっぱいを突っついてみたり。

 そのたんびに、お姉ちゃんは甘い吐息を漏らしていた。


 そんなことを、ずっと繰り返していたら。

 お姉ちゃんは、途中から反応が鈍くなってきて、気づいた時には眠ってしまっていた。

 枕の方に、足を向けたまま。


 ……そういえば、さっきから。

 厳密に言えば、お姉ちゃんが私のおっぱいとか触ってきたあたりから、この部屋、少し特徴的な匂いがするけど。

 何の匂いだろう?

 まぁ。いっか。気にするだけ無駄かな。


 私も、ベッドに倒れて目を瞑る。

 ちょっとだけ冷静になって、さっきの行動の数々はおかしいなと思った。

 だけど。それでいいや。


 私は、お姉ちゃんと普通の姉妹でいたいと願っていたけれど、前のあの授業以来から考え方が変化した。

 もう。好きを隠す必要は無い。

 自分を抑える必要は無い。

 だから、さっきだって、あんなちょっとおかしなことをした。


 あ。そういや。

 という風に、ふと思う。

 ……もうすぐ、夏休みだ。

 早い。早いなー。


 何をしよう。

 一緒に海とか行ったり、お祭りとか行きたいな。

 そのために、宿題を早く終わらせないと。


 夢が膨らむ。

 クリスマスイブの夜のように、今日の夜はなかなか寝付けなかった。

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