すっごく近くて遠すぎる
目が覚めたのは、もう翌朝だった。
外は雨。……梅雨だから当然か。
昨日の出来事が走馬灯のように頭の中を駆け回って、また泣きそうになる。
……てんちゃんと何かがある度に、私は泣いている気がする。
身体を起こして、もう習慣になったのか、足が自然と制服の方へ向く。
そして、てんちゃんの元へと向かうのだ。
階段を降りて。リビングに。
こっちを見てくる二人。母さんと父さん。
この母さんと父さんがいるこの空間は、もう慣れてしまった。
そして、俯きながらパンを
その人の横へと腰を下ろして、置かれたパンを手に取る。
「おはよう」
そのおはようは、横に座っているてんちゃんの言葉だった。
一気に緊張感が増して、汗が出てくる。
「うん。おはよう」
ここで「昨日はごめんね」とか言えたらいいんだろうけど。
それを言葉にできるわけもなく、沈黙の朝食だった。
いや、いつも私は何も喋れない。
けれど、昨日の出来事も相まって、この沈黙がいつもよりも気まずいものに感じてしまった。
※※※※※※
車の中でも。
教室の中でも。
帰り道でも。
ずっと一緒なのに。
何も喋れない。
謝ればいいだけなのに。何も言えない。
何日も過ぎる。何日も何日も。
それでも。学校に通い続ける。
藤崎さんとの会話も最低限にしている。
てんちゃんとの距離は、あれから変わらない。
むしろ、離れていっているかもしれない。
てんちゃんが何を思っているのか分かったらいいのに。
前もこんなことを考えた気がするけど。
最近てんちゃんとは手を繋いでいない。
もちろんハグも。
頭も、撫でてもらっていない。
何もしていない。してもらっていない。
てんちゃんと色々していたあの日が、遠いものに思える。
携帯のメッセージアプリを開き、会話を何回も見返す度に泣きそうになる。
寂しさが募る。どんどんと。
そんなこんなで日々を過ごしていたら。
気づいた時には、梅雨も明けていた。
私、どうして普通に学校に通っているんだっけ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます