先生との対面
「せんせーい! 入ってもいいですかー?」
私は、今ほどの興奮が冷めやらぬ中、藤崎さんに手を引かれ、職員室の前へとやってきた。
「緊張するから少し待って」と言ったのに「じゃあ、その緊張をほぐそう!」と返され、なぜかこんなことになった。
……緊張ほぐすっての何処いった。
余計緊張するんだけど。
「はーい。どうぞー!」
中から、おばさん声が飛んでくる。
ガラガラと開ける藤崎さんの背中に隠れるように、私は学年室に入った。
中には先生がポツポツといる感じ。
でも、全然少ない。
そして……あれ。
てんちゃんもおる。
母さんと一緒に、ほかの椅子よりもほんの少しだけ豪華なソファーに座らされていた。
楽しそうに二人で話しているようだった。
……ここにいるんなら、まじで着いて行った方が良かったじゃん。
それにしても。
あの二人って仲良いんだな。
「ほっぺたのキスは、家族だったらする」って、てんちゃんは言ってたけど、本当にキスぐらいしてそうなんだけど。
「はいはい。藤崎さんどうかしましたか?」
てんちゃんの方を見ていたら、いつの間にか近くにいた先生が話しかけてくる。
「あ。挨拶をと、思いまして!」
「挨拶ですか……あら? 後ろの方は……? えっと」
私の顔を見て、何かを考え込む。
多分、知らない生徒だから思い出そうとしているのだろう。
私もこの先生の顔は知らない。
というか、この学校の人の顔は全部覚えていない。
「ほら。瑞樹さん! 挨拶!」
藤崎さんはそう促すと、私の背後に立って「ほらほら」と背中を押した。
「どわぁ!」
その少し大きな声に、先生以外の人の視線も少し集めてしまう。
ちらっと横目で確認すると、てんちゃんもこっちを見ていた。
……恥ずかしい。
「え、えと。私、学校来てなかった、姫川瑞樹です」
私の言葉に、合点がいったように「あぁなるほど」と頷いて、人のいい笑みを浮かべた。
「姫川さんね! 妹さんも来ているから来てくれたのかな?」
「まぁ。そんなところです」
「久しぶりだからって、心配する必要はないからね。今日は先生の話を聞くくらいしかすることないから」
「あ。はい。わかりました」
それに適当頷くと、先生はどこかへ引っ込んだ。
用事でもあったのかな。
「じゃあ。瑞樹さん。教室いこっか。同じクラスだし」
「そうですね」
藤崎さんの言葉に踵を返す。
だが。
すぐそこには、少し険しい表情てんちゃんがいた。
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