お姉ちゃんの空寝
何が起こるというわけでもなく、私は不意に目を覚ました。
覚醒しきってない頭を回し、今の状況を確認する。
テレビ正面のソファーに背もたれして眠っていたようだ。
隣を見れば、お姉ちゃんがいて、私の方にもたれかかりながらスースーと可愛らしいいびきを立てていた。
……確か、お姉ちゃんにハグされて。
そのあと。……普通に眠っていたのか。
私が寝たのを見て、このソファーにもたれさせてくれたのかな。
窓の外に目をやると、この向きにまで傾いた太陽の光が部屋に差し込んでいた。
部屋の中は、薄暗い。
つけっぱなしになっていたテレビが、この部屋の光源となっていた。
「お姉ちゃん」
頭だけをお姉ちゃんの方へ向け、そう呼びかけてみる。
反応は無い。まぁ、起こす理由も無いし、このまま寝かせておこう。
……。
お姉ちゃんに目が釘付けになる。
こうして、まじまじと見つめるのも初めてだ。
美人だ。髪も綺麗なロング。
無意識に私のボブの髪に手ぐしを入れてみる。
少しカサついていた。
流れるように、お姉ちゃんの髪にも手ぐしを入れる。
サラサラだった。
どんなシャンプー使ってるんだろ。
かすかに良い匂いもする。
顔の形も整っている──って、あれ?
なんかお姉ちゃん、顔赤くなってる?
ちょい待って。この人寝たふりしてる。
「お、お姉ちゃん! い、今、髪触ったのに特に深い意味があったわけではなくて、ただ単に綺麗だなと思って、私の髪の毛の質感と比べようと触っただけですから!」
お姉ちゃんが何かを言ってくる前に、慌てて言い訳をする。
言い訳というか、事実なのだけど。
お姉ちゃんは目をつぶったまま、少し恥ずかしそうにしながら頷いた。
「何で寝たふりなんて、してたの?」
「い、いや。何でだろ。……てんちゃんのこと見つめてたら起きちゃったから、反射的に眠ってしまったというか」
「んぁ。そ、そうなんだー。なんで見つめてたの?」
「美人だなって」
「んぁぁ」
お姉ちゃんは、なんでこう、心に効く言葉を使うのが得意なのだろうか。
私も、仕返ししてみよう。
「お、お姉ちゃんの方が美人だけどね」
そう言うと、お姉ちゃんは目をパッチリと開き、顔をずいとこちらに近づけた。
「美人、というより、てんちゃんは可愛いよね」
「んぁぁぁ」
慣れないことはするもんじゃない。
すぐに反撃を喰らってしまった。
お姉ちゃんから身を引く。
「そ、そうだ! お姉ちゃん! お腹空かない?」
「話題転換が何の脈絡もないけど」
「き、気のせいだよ」
「気のせいではないと思うけど。まぁ……お腹は空いたかな。なんか用意があるの?」
「ないけど、お母さんが、今夜は外食しておいでだって。この辺りってなんかお店ある?」
「ファミレスがあるよ。徒歩二十分くらいのところに。私ちょくちょくそこに行ってる」
「じゃあ、そこ行こ!」
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