第16話

ビアンヌが大きなオーケーサインを出し、善は急げよと採用を担当している人に連絡をしてくれた。ドキドキしながらビアンヌの話す様子を見ていると、しばらく話した後、私の方にぐっと親指を立てて笑顔を見せた。


「あなたさえ良かったら早速来てほしいんですって!でも場所がちょっとここからだと分かりづらいのよねぇ。案内してあげたいけど、このあと予約が入ってるお客さんがいるし……」


うーんと、電話を終えたビアンヌがどうしようかと悩んでいるので


「ビアンヌさん、大丈夫ですよ。地図を見ながら行けると思いますので、任せてください!」


とんと胸に手を当て、自信満々に頷く。


「どこからその自信は出てくるんだ」


頭上から声が聞こえて驚いて振り向くと、いつの間に帰ってきていたのか、彼が呆れた表情を浮かべて立っていた。


「歩いてただけで裏まで行くような迷子が」


痛いところを突かれてうっと声を漏らす。


「今回は地図もありますし」


食い下がる私の手にある地図を眺める。


「じゃあ、北はどっちか分かるか」


その質問に地図を見てみるが、さっぱり分からない……。


「こ、こっちです」


勘に頼って指差すと、ビアンヌがそっちは西よと耳打ちしてくれる。


「じゃあこっちが北ですね」


と嬉しそうにビアンヌの方を見るとうんうんと頷いてくれた。


そのやりとりを冷ややかな目で見られていることに気付き、おそるおそる地図の北を指差し、彼に見せる。


「正解だ、これなら安心だな……って言うわけないだろ」


ひょいっと地図を奪われる。


「案内するからついてこい」


溜め息交じりの言葉に驚いていると、さっさと店を出ようとするので、慌てて荷物を持ってビアンヌに頭を下げる。


「お仕事紹介して頂いて本当にありがとうございますっ、また改めてお礼に来ますので!行ってきます!」


「頑張っていってらっしゃーい!」


バタバタと出て行った二人を見送り、静かになった店内でふふっと笑う。


「あの子が心配ならそう言えばいいのに……素直じゃないんだから」


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