第4話

どこからどう説明していいかもよく分からず、要領を得ない私の突拍子のない話を、先生は真剣な面持ちで聞き入ってくれた。


話をしながら、この夢みたいな状況が覚める気配のない現実であるという目の前の事実に思わず涙ぐんでしまうと、先生は優しく背中をさすって落ち着かせてくれた。


「どうやら君のいた世界と、ここは大きく異なるようだね。名前も場所も聞き慣れないものばかりだ。……これは想像でしかないけど、お嬢さんの身体に君の意識、魂のような何かが入ってしまったんじゃないかな。」


「えっ、じゃあこの身体の持ち主は……」


「強く頭を打ったと言ったけど、ここに運び込まれた時には瀕死の状態だったんだ。本当はこうして目を覚ましたのも奇跡に近い。だからもしかしたら……」


眉をひそめ言葉を濁し、表情に暗い影が落ちる。どういうことを意味しているか察してしまい、胸がぎゅっと締め付けられる。


私に、何か出来ることはないんだろうか……。必死に頭を巡らせ、一つの答えに辿り着く。


「先生、私この人として生きていきます。もしかしたら何かの拍子でこの人の意識が戻って、そしたら私も元の世界に帰れるかもしれないし!」


だいぶ無理やりでポジィティブな考えだが、可能性はゼロじゃない。なんだってやるしかない!


先生は驚いた表情の後、確かに……と深く頷いた。


「僕も君がお嬢さんとして生活出来るように全力で協力するよ。お嬢さんのお家とは長い付き合いだから力になれると思う。どんなことでも頼ってね。」


こうしてどこにでもいる普通の会社員だった私は、ある日突然見知らぬ世界のお嬢さんとして生きていくことになった。







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