【暗転】舞台袖は世界の現実

 なぜ、私はこのような生活をしているのでしょうか。これでは、まるで、平民と、何ら変わらないではありませんか。


 あの日を境に、人生は反転した。今までの、力は、権威は、何であったのか。明白である。一族の威光で威張るだけなのだから。


 なぜ、こんなことに、なってしまったんでしょうか。あの時、平民共が、大人しく、話を聞き入れなかったからではありませんか。


 あの日の敗北、逃走は、一族に知れ渡り、面汚しと罵倒される。そもそも、一族の跡取りではない。兄達がいるのであるから。ましてや、能力も劣るようであれば、必要は無い。


 なぜ、生きて行くために、危険に身を投じねばならないのでしょうか。このような、生活など、私が、すべきではないはずです。何かしら、見返す方法はあるはずです。


 あの日の仲間とは、一時的な関係ではあったが、苦楽をともにした、信頼関係があるはず。あるはずであった。


 なぜ、離れていくのですか。


 あの日の失態は、信頼を破壊した。いや、そもそも、威光に従っているだけであった。


 力が、力が欲しい……。全てを屈服される。全てを意のままに、従属させる。力があれば、私は、また帰れるはずです。


 ――あの日の敗北は、心を破壊した。



◇◇◇◇◇◇◇



 依頼は、全て、確実に、遂行しなければならない。いつの時代も、変わらない。契約とは、そういうものである。


 依頼は、全て、絶対に、受け入れなければならない。正義か、悪かは、関係ない。立場が、主観が変われば、言葉の定義は簡単に崩れさる。


 依頼は、全て、的確に、情報を収集しなければ失敗に終わる。完璧を目指すのであれば、小さな綻びも潰さねばならない。


 依頼は、全て、迅速に、完遂するはずであった。だが、いつ、何を、何処で、間違えたのであろうか。


 黒い。深い。深淵。淀んだ。どの言葉も、的確ではない。目の前の、眼。


 ――依頼は、初めて、失敗に終わるのかもしれない。



◇◇◇◇◇◇◇



私には、夢があった

私の歌声で、誰かの力になること


私では、叶えられない夢がある

私の歌声で、誰かの力になること


私の歌声は、譜面の上を歩けない


私には、希望がある

真実にたどり着く、道標があること


私だけでは、叶わない希望がある

けれども、一緒に歩む、仲間がいる


 ――過去の自分に、決別する時なのかもしれない。 



◇◇◇◇◇◇◇



 因果応報っす


 仕事を選り好み、自分の好きな研究だけした結果。自分の生徒を制御できない、このありさま。


 起死回生っす


 何とか持ち直す為に、挑戦を繰り返す。一緒に、進む生徒に、申しわけなさと、ありがたさが、入り交じる。


 試行錯誤っす


 彼等の良いところを、伸ばす。この大会も、いいキッカケ、になるはずである。


 ――捲土重来っす

 

 

◇◇◇◇◇◇◇



 いや〜、実に面白いですね。退屈だった、生活は、一変したのだから。


 いや〜、実に飽きないですね。仲間のありがたさ、必要不可欠なことを、知ることができたのだから。


 いや〜、実に不思議ですね。彼の行動、行動原理、力の源。もっと知りたくなる、魅了、不可解さなのだから。  


 ――いつか、来るべき時に、共に、偉大な挑戦を



◇◇◇◇◇◇◇


 

一つ、親衛隊は、姫に勝利を捧げる鉾となるべし


一つ、親衛隊は、姫を守る盾となるべし 


一つ、親衛隊は、姫の夢のため己を捧ぐべし



 ――姫の夢、ともに見れるなら、これ我らの夢


◇◇◇◇◇◇◇


 

 ファンファーレが、鳴り止むみ号砲が鳴る。ほんの一瞬、静寂が場を仕切るが、直ぐに、泡が弾けた様に消えていく。


 歓声が、さらに歓声を呼び込む。大きな雪崩となって、会場を包み込んでいく。



 ――闘いの幕は切って落とされた

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