第25話 黒装束の少女の実力
バカな奴らだ。
お前らが力を合わせても、あのゴーレムには勝てない。
なぜならあのゴーレムはある意味、無敵だからだ。
そうなる様にあのジョンとかいう小僧が魔法を掛けている。
考えても見ろ。
過去に5人しか合格していない採用試験だ。
今回だけで、20人以上も受かる訳が無い。
魔王だって何人も面談する暇ない。
だからここで一人に絞ろうとしているんだ。
我々は殺し合うしかない。
だが……
殺すには惜しい者が数人いる。
あいつと、あいつと、あいつ……。
私はクナイを手にした。
ゴーレムと戦うことにした。
◇
「大丈夫?」
「はい」
僕の背後で怯えている治癒魔法使いの少女は頷いた。
「危ない!」
「ぐっ!」
僕はゴーレムのパンチを鉄の盾で防いだ。
衝撃で全身が痺れる。
何とか踏みとどまった。
「ありがとう」
少女は僕にお礼を言った。
「タンクの役目を果たしたまでさ。君、名前は?」
「えっと……、マヲ」
「マヲ、か……」
僕は同じギルドにいたマユのことを突然思い出した。
いつも一緒にパーティを組んでモンスターを狩りに行っていた。
魔王軍に志願しているのに、昔の仲間を思い出すなんて自分でもどうかしていると思った。
「はっ!」
ふと我に返ると、周りは血の海だった。
ゴーレムに倒された冒険者たちの死体だらけだ。
生き残っているのは僕を含め7人。
「マヲ、治癒魔法を使ってくれ」
「ん……んん……」
「どうした?」
「もう、魔力が……」
何だ?
疑う訳じゃないが、そんなに魔法を使っていた様には見えないが。
やはり魔力は自分のために温存しておきたいのか?
「ぐえ!」
マヲが頭を抑えしゃがみ込んだ。
その背後には、手刀を構えた黒装束の少女が立っていた。
どうやらマヲの頭に手刀を叩きこんだらしい。
やはり殺し合いに突入か。
僕は瞬時に、鉄の剣を構えた。
「こいつ、偽物だ」
「え?」
どういうことだ?
「えへへ、よく分かったね」
マヲが額から血を流しながらニヤリと笑った。
彼女は自分の髪をつかみ引っ張った。
まるでぶどうの皮がむけるように、頭皮から全身の皮がズルリとむけた。
中から、少年が出て来た。
ジョンだ。
「いやぁ、よく分かったね」
彼はおどけてみせた。
そしてゴーレムに止まる様に指示した。
「どうして僕が化けてるって分かったの?」
黒装束の少女はこう応えた。
「冒険者の人数が増えていたこと。そして、お前が化けていた治癒魔法使いだけゴーレムが攻撃しないこと。これだけ揃えば、分かる」
「冷静な分析だね。魔王様に伝えておくよ」
なるほど。
「こんな楽しいショーは間近で観なきゃ損だもんね」
悪趣味だなジョン。
「それだけじゃないだろう?」
黒装束の少女は彼に詰めよった。
「お前はゴーレムに永続治癒魔法を使っていた。その魔法の効果が切れない様にゴーレムの近くにいなきゃいけなかったんだ」
永続治癒魔法。
マユがその初歩のやつを僕に使ってくれたことがある。
ダメージを受けても自然に回復する魔法だ。
ただし唱えた者が、唱えられた者の近くにいないと効果が無い。
どうりで、ゴーレムが倒れない訳だ。
「正解! そう簡単に僕のゴーレムが倒される訳には行かないからね!」
ジョンは黒装束の少女に拍手した。
つづく
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