第24話 ゴーレム 対 冒険者
ゴーレムを囲んでいるのは総勢18名の冒険者。
その中には僕も入っている。
ふと振り返ると、黒装束の少女と道着を着た少年だけは参加していない。
「あいつらはどうする?」
誰かが二人を指差して問い掛ける。
「ほっておけ。我々の戦い振りを見れば考え方を改めるだろう」
ショウは剣を構えたまま言った。
「まずは俺がゴーレムの手足を切りつける。動けなくなるはずだから、そこを全員で一斉に攻撃するぞ!」
ショウの言葉に全員が頷いた。
「はっ!」
ショウが地を蹴って飛び上がった。
満月を背にしてロングソードを振り上げる。
全体重を掛け、ゴーレムの右腕を切り落としにかかった。
ドスッ!
「あれ!?」
ショウのロングソードはゴーレムのクロスした両腕でへし折られた。
折れた刀身が虚しく地面に突き刺さった。
「ぐえ!」
ショウはゴーレムの丸太みたいな腕から繰り出されるパンチを喰らい、僕らの遥か後方に吹っ飛ばされた。
大木の幹にぶつかった。
幹に背中を擦り付けながら、ズルズルと地面に落ちた。
「やばい! ゴーレムが目を覚ましたぞ!」
「戦士、壁になれ!」
算を乱しかけたが、誰かのその言葉で態勢を取り戻し始めた。
戦士職である者は盾を構えてゴーレムの攻撃に備えた。
僕も戦士の端くれだ。
持参した鉄の盾でタンクを引き受けた。
前衛の僕らの少し離れた場所で、妖術師や治癒魔法使いが詠唱を始めた。
「いつもモンスターと戦ってる感覚で行くぞ!」
誰かの叫びに、皆、おうと応える。
戦士がゴーレムを挑発し、その攻撃を一身に引き受ける。
その間に両サイドから挟み撃ちする様に武闘家と暗殺者と忍者が攻撃を仕掛ける。
ある程度時間が経ったところで、詠唱を終えた妖術師の魔法が発動する。
「いいぞ! 押してる!」
魔王軍に志願しているのに、冒険者同士でパーティを組みモンスターと戦っているのはおかしな話だが、今はそうも言ってられない。
いつの間にか、ショウも復活し戦いに参加していた。
「な、何だこのゴーレム!? もうそろそろ倒れてもいいだろ!?」
皆が慌て始めた。
既に戦いから一時間は経過していた。
それでもゴーレムは一向に倒れる気配が無い。
「うわっ!」
僕の真横にいた戦士がゴーレムに殴り飛ばされた。
タンクの壁に穴が開き、そこから崩壊が始まった。
「うわあああ!」
皆、四散した。
5メートルの巨体、かつ強化済みのモンスター相手に僕らはなす術が無かった。
逃げる冒険者たちの軌道の先には道着の少年がいた。
「せいやっ! そいやっ!」
まるで待ち構えていたのかの様に少年は拳と蹴りで、逃げて来る冒険者を攻撃する。
なるほど、その手があったか!
少年の放つ鋭い突きや蹴りは、次々と冒険者を葬って行く。
僕はその場に踏みとどまったから、彼の攻撃を受けずに済んだ。
何故なら、僕の背後には治癒魔法使いの女の子がいたからだ。
僕が逃げたら彼女がゴーレムの餌食になる。
つづく
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