第2話 ビッツィー・カー
異空間を
それは目の
車は、流されて行く私に追いついて来て、それから並走しだした。甘いような、
我が家の車はペンキの臭いがした。中古車を買って自分達で塗装したのだ。その臭いの
運転席に乗っていたのは女性だった。豊かな黒髪を異空間の風に
花。それも周囲の栄養を独り占めして成長する、大輪の花といった印象の女性だった。
今や、流れて行く私たちの距離は、
女性は目を細めて笑った。その声は悪魔の様に優しい。
「さあ、
「行く――?」
「私は人間の終着駅まで行きたいのだけれど、あなたはどうしようか?」
確かにそう云った。この言葉の真意は全てが終わった後になっても分からず
この時、彼女はこう続けた。
「哀しそうに見える」
「私が?」
「それとも怒っている?」
「怒っていない。哀しかったのは少し前まで」
「そう? じゃあ今はどんな気分?」
「帰りたくない」
あのトロイメライの中での事件は私を変えてしまったし、こんな問題を抱えて家に戻りたくはなかった。家族に
「帰りたくない?」と女性は云う。
「帰りたくない、もう」私は重ねてそう答える。
女性は微笑んだ。
後になって思えば、
「お嬢さん、お名前は」
と彼女は
「ノリコ」
名字は名乗らなかった。そう云えば、これから行く世界の
私の名を聞くと、女性は満足げに頷いた。頬の丸みが美しい曲線を描いていた。
「私の名は、ビッ=ツィー」
それが彼女の名前だった。
「ビッツィー」
「そう。これからはそう呼んでね」
ビッツィー。
唇を浅く噛んで、ビッ=ツィー。
こうして私はビッツィーと
これから話すのは、私がビッツィーと
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