第103話

池から上がるとべティがな。

『では、次へ進みましょう』ってな。


今度は、なにをさせるつもりなんだろな?


『では、屋敷の壁へと向かってください。

 着きましたね。

 では、壁へ足裏を付けていただけますか?』


変なことを言うなぁ?

まぁ、良いけどさ。


俺は右足の足裏を壁へと付けてから訊ねる。


「足裏付けたけどさ、これでどうすんだ?

 ストレッチでもすんのか?」

意図が読めず尋ねたらな。


『足裏を壁に吸着させて、壁を歩いていただきたいのです』

そんな無茶なことをな。


「できるかぁっ!」

思わず告げたらさ。


『朝方ですので、お静かに』って、冷静に返されてしまったよ。

腑に落ちん!


『池の水面を歩けたのですから、できますよ。

 まずは足裏へ麟の膜を張り、弾くのではなく吸着するイメージをしてください』


はいはい、吸着するイメージね。

吸盤みたいなモンかねぇ?


っと、右足が壁に引っ付いて離れなくなったんだが…

んだぁ、これ?


んっ?ああっ、そうかっ!

左足も壁へ吸着させれば良いんだ!

そしたら、立てるし歩けると。


俺はな、短絡的に、そう考えて無造作に左足を壁へと。


『あっ!

 マスター、ダメです!』

べティが慌てて告げてきたが、遅かった。


まぁ、両足を壁へ吸着させて立とうとすれば、当然、体は地面へと。


「あたっ!」

後頭部を咄嗟に庇ったが、背中を強打することにな。


『マスター…

 説明途中で先走らないでください。


 まずは壁が地面であるとイメージし、重力を制御せねばなりません。

 そして反発と吸着および重力制御が、忍術における体術基礎となります。


 さらに、この制御を経て他の術を学びますので、忍術の基礎とも言えるでしょう。

 私がサポートいたしますので、重力制御印を切っていただけますでしょうか?』


呆れたように告げるべティに対し、ちとバツが悪い感じだが重力制御をな。


つかさぁ、重力制御って難しいんですが。

背中を地面へ着けた侭でチャレンジしたんだが、うんともすんともな。


でな、少し重力制御が行えるようになってからが酷かった。

壁が下方と認識はするが、やはり見える地面へと意識が向いてな…


「あだっ!

 いだっ!

 ぐふっ!」ってな具合に背中を強打する羽目に…


ようやく壁歩きできた時には、残り時間が1時間になってたよ。


『さて次ですが、万華眼まんげがん遠多聞えんたもんを修得しましょう。


 攻撃的な忍術は、森にて試したほうが良いでしょう。

 騒音もありますが、里にて試すには危険ですので』


まぁ、確かにな。

なので、べティに薦められたように、万華眼と遠多聞の修得を試みることに。


これも苦労するかと思っていたんだがな…


「こんなに容易く修得できるものなのか?」

思わず首を傾げるとな。


『基礎がシッカリと修得でき、かつ、正しい印を切れば、素養のある者なれば可能ですね。


 ディサピィルであるマスターは、精霊因子の影響もありますので、素養は十分でしょう。

 また、私のサポートも、ございますれば』って、ことらしい。


残り時間は40分程度だが、他の術を修得するには時間がな。

できたら分身や影潜りなどをと考えたんだが、時間的に無理みたいだ。


なので借りている自室へと戻り、シャワーだけでも浴びることに。

さすがに汗臭くなったんでな、この侭で食堂へ向かうのはダメだろうよ。


シャワーで汗を流し着替えた俺は食堂へと。

今日も良い香りがな。


今朝は粥と言う代物らしい。

米と言う穀物を、形が崩れるまでスープにて煮込んだ物らしい。


スープは鶏ガラと小魚に小エビ、それとキノコや海藻を煮出し、味を整えた物なのだとか。


っかさぁ、全て植物の実から取り出した食材って…

この里の植物って、絶対に変だよなっ!


まぁ、美味いから良いけどさぁ。

具にキノコとか根菜に鳥の胸肉ね。


白髪ネギがシャクシャクってな。

さらに好みにて、つど都度トッピングする揚げ小餃子が、カリジャクって…


朝から妙なる味でした。


これからマユガカ退治に向かう俺に、消化に良くてエネルギー効率が良いようにってさ。

お心遣い、感謝です。

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