第88話

里長が自滅にて破滅したようなので、放置してロンダルト邸へと。


「ただいま戻りました」ってね。

「あら、早かったのね。

 そうそう、主人が客室へ資料を運び込んでたわよ。

 こっちの部屋ね」って、案内してくれたんだけどさ…いやね、膨大な資料が積まれてるんですけど……


「もしかして…

 これ全部へ忍術が記されてます?」

嘘だよね?


ローテーブルの上へ、大量に乗った紙束がね。

いや、紙で出来た柱が複数本った方が良いのかな?


見るだけでも大変なのだが、これに書かれた忍術が使えるか試しながら身に付けろと?


どんだけ掛かるんやねん!


自分の顔が引き攣るのが分かる。

っか、紙柱を見ていても始まらんか…


ローテーブルの上へできた紙柱だが、ソファへ座ると見上げるような高さだが、立てば俺の胸辺りの高さだ。

なので座る前に数枚ほど紙柱の天辺より取る。


簡単なのと難解なのが一緒に取れたんだが…分類整理はされてないと…

こりゃまずは、紙柱の整理から入らないと話にならんな。


ふぅっ、っと思わず溜め息を吐いてしまう。


書類仕事は苦手なんだがなぁ~

そんなん思いながらな。


まずは、サマンサさんへお願いして布シート借り、それを床へと広げる。

その上へ紙柱を崩さないように、移動だな。


全て移動させるだけでも一苦労だったが、ここからローテーブルへ系統別および階級別に仕分けせにゃぁならんだろう。


ふと、床の紙柱を見て…くらっ、ってしたんですが…

そこで笑ってるアナタ?手伝ってくれませんかねぇ?


目を向けたらさ、ミーシャちゃんが脱兎のごとく逃げ出したんだけど…

まぁ子供だからなぁ…ふぅ。


諦め顔で観念した俺は頑張りましたよ、ええ。


昼食とトイレ以外は休まず仕分けを。

ある程度は読まなければ仕分けできないため、確認しつつ作業を行う。


………1日で終らないんですけど?


使われてない客室にて、そこへ設置されたソファセットでの作業だから、他への迷惑を考える必要はない。


疲れたら瞬眠の指輪を発動させれば良い。

瞬時に8時間睡眠と同じ効果を得られるため、肉体的および精神的な疲労が癒える。

無限機関なんですね、分かりたくありません。


ロンダルトさんが、手伝ってくれれば楽になるんだろうけど…

帰って来ませんね。


っか昼飯食いにも帰って来なかったよ。

まぁ里人が帰れないことを、伝えに来てたらしいけどね。


晩飯も外でらしい。

里長一族の処分をどうするかと、里の指導者を決めるのに揉めてるのだとか。


そうそう、里長一族と暗殺者一族なんだが、精霊魔術が使えなくなってるらしい。

ついでに身体へ魔那が集まり難くなってるんだとか。


里の精霊魔術導師が請われて調べたところ、激怒した精霊たちが術発動を拒否。

それだけでなく、罪人一族へ集まる魔那を阻害しているそうな。


精霊に寿命はなく、滅多に怒らないが、怒らせたら少なくとも数百年は許さないんだと。


晩飯をいただきつつ、サマンサさんから、そんな話をな。


しかし、寿命が長いフォリゾン・エルフだから関係ないのだろうなぁ~なんて考えてたらな。


「精霊様も頭にこられたんでしょうけど…魔那吸収阻害までするなんて…罪のない子供たちが可哀想で…」ってサマンサさんが言うからさ。


「魔那吸収阻害されたら、なにかあるんですか?」

何気なく訊いたんだがな。


「寿命が短くなるのよ。

 特に子供は深刻ね。


 フォリゾン・エルフは幼少期が長いの。

 それは魔那を体内へ溜め込み、膨大な魔那に耐える体を作るためね。


 そんな体なのに魔那が吸収できなくなったら…衰弱していくでしょう。


 大人も人種並み…いえ、それ以下に下がるわ。

 寿命の長さは魔那しだいですもの」

そう教えてくれたよ。


なるほど…マジックキャスターたちの寿命が長いのは、そう言う理由だったのか。


「精霊に好かれれば、後天的にも寿命が伸びるし若返るわ。

 だから精霊に好かれることをしている子ならば、赦されるかもしれないのだけれど…」

そんな希望を告げてるんだが。


「難しいでしょうね。

 子供は親を見て育ちます。

 いや、環境かな。

 物の良し悪しの判断が、その上に成り立ちますからねぇ」


あの一族での生活環境ではなぁ。


「ねぇ、ママ」

黙って夕食を食べてたミーシャちゃんからだな。

なんだろね。


「精霊様に好かれたら寿命が伸びるの?」って、そんなことをね。

寿命を伸ばしたいのかな?


そんなミーシャちゃんへな。

「そうね。

 精霊様が好き好き大好きってなったら、寿命は伸びるし若返るわよ。

 私たちフォリゾン・エルフは、種族的に精霊様から好かれやすいから、寿命が長いの」


そうなんですね、羨ましいことで。


「だから、ダリルお兄ちゃんが、若くなってるんだねっ!

 精霊様たちが、大好き、超好き、猛烈に好き、もう堪らん、ってるもん!」

「あらあら、ミーシャったら、精霊様のお声が聞こえるの?」

「ママもダリルお兄ちゃんの横に来たら解ると思うよ。

 だって、精霊様が興奮してて、お声が大きいんだもん」


ミーシャちゃんに告げられて、サマンサさんが、俺の横へと。


「まあまぁまあっ!

 こんなことって…

 あらあらあら、好き過ぎて、おかしくなりそうって…

 ダリルさん?なにされたの?

 罪な方ねぇ」って…


あまりのことにフリーズしてたけどさ、一言だけ言わせて。


「冤罪じゃぁぁっ!」ってね。

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