第86話

この犯人は当然エルフなのだが、ロンダルトさんが知らない者らしい。

この狭い里で知らないなんて有り得るのだろうか?


そこで賊体内より出てきた、過去から賊一族が請け負ってきた、暗殺の依頼書を調べてみた。

それにより、犯人は何代にも渡り暗殺を請け負っている一族だと判明した訳だな。


出てきた依頼書なんだが…現里長が前里長を暗殺したり、都合が悪い者を暗殺したり。

前里長も兄弟を暗殺してるし、2代前の里長を暗殺してると…


里長一家ならぬ暗殺依頼一家やね。


そして暗殺者一族の方だが…

証拠隠滅術式を無効化する術を得てからは、依頼書が破棄されないようにした後、特殊なカプセルへ保存。

それを飲み込み、精霊魔術を流用して体内へと留めていたみたいだ。


ロンダルトさんが言うには、精霊魔術の使い手としては、凄腕らしい。

らしいのだが…


「完全に狙った相手が悪かったな。

 本来なら、我が家の防御結界も精霊魔術にて無効化できるだろうに」ってな。

いやいや、無効化されたら危険やんね?


「精霊に異様なほど好かれておるダリルを狙ったゆえ、精霊に無視されるとは…哀れな」

んっ?今、なんった?


俺のせいで精霊にシカトされたとか…

精霊魔術は精霊の助力が基本であり、精霊の助力がなければ発動しない。


ってことはだ。

丸腰で敵地へと忍び込んだのと、同じかな?

そら、ご愁傷さまなことで。


「ロンダルトさん、これ、どうします?」

全裸の服掛け男なんざぁ、触りたくありません!


「んっ?

 蔓で簀巻きにしとけば良い。

 どうせ術は使えぬし、自決もできまい。

 猿轡も噛ませておくのでな。

 まぁ、精霊たちへ任せておけばよかろう」って欠伸を。


いやいや、欠伸って移るかんね。

俺まで欠伸が出たやん。


っなことで、おやすみ..zzZZ


おはようござます。

今朝も良い天気ですね。


里が騒がしいようだが、現在、ミーシャちゃんに連行されて食堂です。


ロンダルトさんが席に着いて新聞を読んでますね。


「おはよう、ダリル」

「おはようございます」

「本当にダリルは精霊に好かれておるなぁ」っと。


「なんですか、藪から棒に?」

不意に言われても、訳が分からんわいっ!


「元来精霊と言う物は人に興味などない存在でな。

 請えば力を貸し与えてくれはするが、精霊が己の意思で人に関わることは、非常に稀なのだよ」


ふぅぅん。

そんなもんなんだ…


「人が犯罪を犯そうが、殺し会おうが、死のうが関係ない。

 戦争や侵略にて国が滅びようがな」


まぁ、精霊ってぇのは、そんなもんだろな。


「そらそうでしょ。

 俺達が、庭の蟻の巣がどうなってるか気にして、干渉するようなもんすかねぇ」


「まぁ、霊位的存在である精霊からしたら、そんなものやもな。

 だがな、今日の新聞には、里長一族の醜聞が嫌って言うほどに載っておる。

 昨夜のような案件を含み、あらゆる罪過がな」


ああ、それで里の方が騒がしいと?

「あなた、ダリル。

 そろそろ食べなさいな。

 片付かないでしょ。


 それに今日は、その騒ぎで忙しくなるわよ。

 早く食べないと誰かきたら食べれなくなるかもしれないわね」


「そうだな」って、ロンダルトさんが慌ててな。


だからさ。

「いただきます」って、俺も食う。

そして。

「ごちそうさまでした」ってな。


「もう、食べたねかねっ!」

後から食べ始めた俺が先に食い終わり、焦るロンダルトさん。


ちと笑う。

早食いは戦場の習い。

早寝、早食い、早グソは、行えねば詰むかんな。


素早く寝入り、素早く起きる。

これに半覚醒にての睡眠が行えれば、一人前だろう。


早食いは、食える時に素早く食わねば、戦闘になったら何時食えるか分からんのでな。

死活問題なんだよ。


ただし、早く食えば良いてぇ訳ではない。

消化に悪くない最低限の咀嚼は必須。

消化不良にて戦えませんじゃぁ話にならんからな。


そして最後のだが…

一番無防備なんだよ。

敵に襲われたら反撃もできずにアウトだからな。


特に最前線を彷徨く俺には、必須技能だから、そら食うのは速いぜ。

っても、キチンと味わって食べてるかんな。


「いやぁ、今日も美味かったです。

 けど…熱々のピザトーストって…」

「美味しかったでしょ?」って、にっこり。

「ええ、とても」


天然さん?それとも悪戯?

つかめん人だ。


熱々のピザトーストに、熱々のオニオングラタンスープ。

ロンダルトさんが大苦戦しつつ食べるのを、サマンサさんと談笑しつつ待つのだった。


っか、いつの間にか食べ終わっているサマンサさんは流石だな。

ミーシャちゃん?

ゆっくりと味わって食べてますけど?


ロンダルトさんとの対比がヒデェ。

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