第75話

俺が逃げるように告げると、ロンダルトさんも深刻な顔で思案を。

そして。


「無理だな。

 逃げ切れまいよ。


 あと、マユガカが大繁殖した原因だが…おそらくは、この地にギャブ…いや、ソムラムが居ないことが原因だろう。

 マユガカの天敵はソムラムやゴライゾンらしい。


 いや、ゴライゾンの食料としてギャブがマユガカを飼い、ギャブをソムラムが支配し、マユガカをソムラムがゴライゾンへ献上する。


 これが魔法文明期のゴライゾンを長としたシステムと、文献に記されていたはずだ。

 つまり、くびきを外された状態のマユガカが大繁殖してしまったのだろうな…」


「いや、冷静に考察されても…

 マユガカが大繁殖した原因が解っても、解決にはならないでしょうに」

困った人だなぁ。


「確かにゴライゾンを連れて来る訳にもいかんか。

 だが、ダリルなら討伐可能なのではないかね。

 ディサピィルトーカーの鎧なれば、マユガカの攻撃にも耐えられように」


いや、確かに攻撃を防ぐことは可能だろうが…


「攻撃手段がないんですよ。

 俺は所詮、非力な斥候職ですからね。

 手数は増やせても、一撃の重さがない。

 マユガカの甲殻を抜くことはできんのです。


 数が多いのに、一体を倒すのを手古摺るようでは、スタンピートを抑えるほどな討伐などは…」


1体を時間掛けて倒すならば、甲殻の同じ箇所を執拗しつこく攻撃すれば、いずれは甲殻を破れるやもしれん。

だが群れ中の1体を時間掛けて倒してどうする?

大量にマユガカは残ってる訳で…


「つまり、マユガカに通じる武器があれば良い訳かね?」

「まぁ、有れば、戦えますけど…」


「あなた」

「んっ?

 なんだね?」

「宝物庫の弓と小太刀。

 あれってダリルさんにどうかしら?」

サマンサさん?

なんのことだろか?


「弓と小太刀?

 ……… ……… ………!?

 あの弓と小太刀のことかね!」

「ええ、そのことですわ」

「しかし…あれを使えた者は居ないのだが?

 使うには大量の魔那が必要だ。

 それこそ、精霊に群がられるほど…んっ?」


こっち見んなやぁっ!


「ねっ。

 ダリルさんには、ピッタリな武器っしょ?」

「なるほど。

 ダリルなら扱えそうだ。

 どうだ、ダリル。

 試しに使ってみぬか?」ってことをな。


「いやいや、宝物庫へ入れてたってことは、家宝じゃねぇの?

 そんなのを俺が使って良い訳?」


「別に家宝と言う訳ではないな。

 魔法文明期より伝わってきた品ではあるし、珍しい品ゆえ残してきただけだ。

 使う者を選ぶというか、使える者が居なかった品でな。

 使って貰えるならば、武具としても本望であろうな」


まぁ、そう言うことならば、試してみるかね。


そしてロンダルトさんの案内で宝物庫へと。

サマンサさんは、昼食の用意だそうです。

大変な時だからこそ、食事は大事だってさ。


宝物庫へ入ると、様々な品が陳列されていた。

美術工芸品から武具などなど、様々な高価で綺羅びやかな品がな。


手入れされ状態が良い宝物を収めたここは、美術館や博物館と言っても良いほどだ。


そんな一角に、その品はあった。

埃まみれで放置…またかい。


「なんで、これらだけ扱いが雑なんですか?」

「いやぁ~使えない品だし、下手に触ると…」


ロンダルトさんが触れると、バチッって。


「あたっ!

 っと、こうなる。

 マジックバッグへ入れる時も苦労したんだよ」てなことをさ。


いやいや、俺が触れても大丈夫なのか、これ?


取り敢えず弓を持ってみるが問題ないな。

弓を戻し、今度は小太刀を。

うん、大丈夫だ。


大丈夫だと思うが念のため、小太刀を右手に持った侭で、弓を左手で持ってみると…


シュンって音がしたと同時に…弓と小太刀が消えた…


ってぇ、消えたぁっ!

どこへ行ったぁっ!


「ロンダルトさん!

 弓と小太刀が、いきなり消えたんですが!」

「そのようだね」

あっ、遠い目になってる。


しかし…このパターンには覚えが…

たしか…

「鎧が消えた時かぁっ!」

思わず告げると。


「もしやっ!」って、ロンダルトさんが宝物庫から走り去ってしまった。


いや、アータ…部外者を宝物庫へ放置って。

まぁ、なにもしませんが、非常識な人だなぁ。


仕方ないから宝物庫から出て、宝物庫入り口で待つことに。

俺では宝物庫へ鍵を掛けれないからなっ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る