第43話

ウォルフ爺さんにマスターが嵌められ、そんなマスターに俺が嵌められて決着が。


朝から濃い1日…って!もう昼すぎてんじゃん!


「マスター、飯」

思わずな。


「では、ランチを…

 んっ?

 今日は、お客様がお出でになられませんな?」


うや?確かに?

ここ喫茶ウイユ・ドゥ・シャは、そこそこ人気があるからさ、満員は珍しいが、常時1人か2人の客が来てる感じだ。

常連客も多いしな。


って思ったら…

「おう、マスター。

 揉め事は終わったかい?

 朝の珈琲は諦めたから、ランチは食いたいんだが?」って、近くに店を開く職人さんがね。


仕事の合間の休憩に、ここで珈琲飲んでる人だ。

そんなご近所さん達が、ぞろぞろと。


どうやら俺達が揉めてるのを見て遠慮していた模様。

険悪ではなく、マスターも笑ってから様子見でってことになってたそうな。


どうりで店を伺って去る気配が、引っ切り無しに現れる訳さね。


客達が遠慮してた分、客が集中してな、満員御礼状態です。

俺は頼んだランチを食ったら席を立ったよ。


外には待ち客の姿も見えたんでな、長居は迷惑だろう。

しかし…なんかさぁ、客が増えてね?


外に出て列に沿って歩く。

そちらが商店街側だから他意はないぞ。


したらな。

「これって、なんの列なんです?」ってぇ声が。


思わず聞き耳を。


「喫茶店への入店待ちらしいですよ。

 私も行列が出来てたから、つい並んじゃってます」っと。


つい、で、並ぶんじゃねぇっ!

集団心理的な、アレか?

行列が出来てたら、良いから出来るので、自分も並ぶと?


いやいや、行列の原因を調べろやぁっ!

朝閉め出された客が纏めて来ただけだかんなっ!

特別な理由はないからっ!


い、いや…マスターの珈琲は絶品で、モーニングやランチは美味い。

っか、軽食も絶品だな。


なのに流行らなかったのは、マスターが宣伝しなかったのと、立地のせいだ。

正直、ここは裏町ってぇ感じで人通りが多い方ではない。


っても、治安が悪い訳でもないぞ。

逆に良いくらいだな。

傭兵家業を営むフリーランサーで、名の知れたヤツが多く住むから、無法人や無宿人に渡世人などの破落戸は近寄らないからな。


騒ぎを起こせば、治安維持権限を貸与されてる俺達に捕まる。

それに俺達は討伐許可も得てるから、刃傷沙汰なんぞ起こした犯罪者は、賊として斬る!

即悪斬ってヤツだな。


そんなんがウロウロする場所に、後ろ暗い輩はなぁ。


ちなみに傭兵フリーランサー達は、すべて俺の知り合いです。

俺んとこへ遊びに来たり、誘いに来るのに、遠いと不便って引っ越して来たんだわ。


当初、ここら辺を縄張りにしてたマフィアやチーマにヤクザなどが、俺達の連れに絡んで壊滅。


そら、治安部隊ならば刃物を振り回しても捕らえるが…俺達は、斬る!

悪人に人権なし!

法の元にて定められた討伐許可書を持ってからな。


なにせ、こっちは戦争のプロだ。

そんなのが、ゴロゴロと彷徨いてる訳で…あの世に行くか、逃げ去るかを選ぶしかなかったのさ。


そんな訳でな、領内っうか、たぶん国内1治安の良い裏町だぞ、ここ。


だから行列に女性が並んでても絡むヤツはいない。

たまに酷い素人チンピラが、割り込みや、因縁付けすると、近くのオッサンに叱られる。


「爺いが粋がんなっ!」って、拳を振るっても当たらない。

下手に刃物を抜いたら暗がりへと。

青い顔で現れるるヤツは幸いだ。

現れないヤツは…


そんなんもあるようだが、概ね平和ね。

列へ並ぶ者に真相を告げても良いのだが、マスターへの意趣返しにもなるから行わない。

今頃は、減らない客に首を傾げながら天手古舞してっだろうよ。


儲かって、良いことだ。

しかしマスターが譲り受ける前に喫茶ウイユ・ドゥ・シャを経営してた美人3姉妹は、何処に行ったんだろな?


結構な人気があり、ファンまでいたみたいだったが…

その辺はマスターも語らないかんなぁ。

来た当初は、色々とお世話になったから、お礼の1つでもって思ってる内にな。


当時は色々と余裕がなくてな、お礼の品1つ、用意できなかった…

今なら色々と礼が可能なのだが、侭ならんね。


そんなことを思いつつ、商店街へと足を向けるのだった。

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