第17話 『集団戦闘』
———イベント開始より1時間後。
———————————————————————
【USO第1回イベント専用掲示板(ランカー専用)】
233:名無しの遊び人
『みんなイベント開始から1時間だってよ。頑張れてる?』
234:名無しの冒険者
『とりあえずトップ10位は全員ベテラン勢かな』
235:名無しの剣士
『いや、1人初心者装備のヤバいのが混じってるらしいぞ』
236:名無しの冒険者
『ヤバいって?』
237:名無しの剣士
『俺のフレンド武器壊されたらしい』
238:名無しの冒険者
『は? ……何それ?』
239:名無しのイケメン
『イッツ、まさか状態異常:腐食では?』
240:名無しの魔法少女
『状態異常:腐食はまだ手に入らないはずですわ』
241:名無しの剣士
『信じ難い話だけど、俺のフレンドが言うには、そいつは素手で剣と盾を破壊してきたらしい』
242:名無しのクルミボーイ
『それは完全に【
243:名無しの剣士
『いやでも別の噂では、その初心者は魔法剣を使って森フィールドそのものを壊滅させたらしい』
244:名無しのクルミボーイ
『ほぉ……。ほな【
245:名無しの魔法少女
『いやいや、それ以前に武器の破壊も、フィールドの破壊も非常識すぎてありえないですわよ。魔法剣となると【
246:名無しの剣士
『【
247:名無しのイケメン
『よし。じゃあ有能な【
248:名無しの魔法少女
『残念。私は単騎で戦いたかったですわ』———————————————————————
***
ど、どうしてこうなっちゃったんだろう……。
イベント前半はこっそり隠れながら過ごして、後半でポイントの高い人と戦ってポイント獲得する予定だったのに……。
頭上に浮かんでいる王冠のマークのせいで、プレイヤーに見つかるとひたすら勝負を挑まれ続けていた。
何とかその度切り抜けてきたが……古代城エリアに足を踏み入れた際に、とんでもない大集団に待ち伏せされてしまっていたのだ。
「もう……。まだ残り時間3時間もあるし、ちょっとは休憩したいのにぃ……」
全員が黒や白、赤に水色に紫……様々な色合いのローブを身に纏った大集団。
その中の代表者らしき人物が、一歩前に出て声をかけて来た。
「イーッヒッヒッヒッ。待っていたよ、ビギナーちゃん。ミーの名は『ルーニィマン』。ウィーは精鋭たる【
私のポイント狙って、これだけの人数で待ち伏せてたの?!
「『ムーニィマン』さん……こんな数でなんてずるいですよ」
「ま、待て……。ミーはムーニィではなくルーニィだぞ! オムツではないぞ!」
「あっ……。ごめんなさい、ムーニィマンさん」
「おのれぇ。全員で魔法総攻撃だ!」
息をつく間もなく、3800人による魔法の詠唱が一斉に始まる。
あわわ……ムーニィマンさん怒ってる?!
それより……こんな人数の多さ卑怯だよッ!!
使えるスキルがあったか考えようとするも、魔法の詠唱は基本的に2秒程度。
考える時間すらなく、四方八方から炎・氷・雷・地の、様々な効果を持った色とりどりの魔法が放出された。
ダメ……!
こんなの一瞬でやられちゃう……。
私が保有しているスキルで、唯一まだ使ったことのないスキル。
使うと目立ってしまうので、隠しておきたかったのが本音だった。
でももう、あれを使うしかない……よね。
魔法の煌めく閃光と轟音の中、声高々に口を開いた。
「来てッ! ゴーレムさん!」
そう、私が使ったのは専用スキル《モード:ゴーレムマスター》。
どこからとなくもなく、頑丈で巨大な塊が周囲から現れ、ゴーレムの形に変形していく。
そしてゴーレムの瞳にあたる、紅の宝玉の中に私は入り込み、飛んできた魔法攻撃を全て受け切った。
ほぉぉぉ……!
何これ、すごくかっこいいぃぃぃ!
モードの付与ってこんな感じになるんだぁ。
魔法攻撃は全部無効だし、すごくいいかもッ!
周囲には砲撃数の余波で、砂埃が立ち込めているため、私の姿が見えていないらしい。
「どうだ? やったか?!」
「分かりません……。だだあれだけの集中砲火で、とても生き残れるとは思えません!」
「だよな。……いや、
「ひっ………ゴーレムが何故ここに?!」
砂埃が少しずつ引いていき、ゴーレムを付与した私の姿が露わになった。
「いや、やつの顔についた
再び詠唱が始まり、途切れることなく魔法攻撃が繰り出される。
ふっふっふー。
この《モード:ゴーレムマスター》だと、魔法攻撃は全部ゼロ……ノーダメージだもんね!
それにしても綺麗な光景だなぁ。
目の前で散りばめられた魔法が、色鮮やかな花火に見えてきたので、ついつい頬が緩んで笑ってしまった。
そう言えば、去年の夏休みにお兄ちゃんと一緒に夏祭りで見た花火に似てるかも。
お兄ちゃんの浴衣姿かっこよかったなぁ……うへへぇ♡
「どうだっ? 今度こそやったか?!」
「いえ、リーダー。全く効いている様子はありません。それどころか……笑ってやがります」
「笑って……いるだと?! ……くそ、
ローブの【
うーん……何度やっても無駄なのになぁ。
ゴーレムのままでも攻撃はできるけど、数が多すぎるし。
そういえば、モード付与中の専用スキルがあったよね?
私は周囲で飛び交う激しい声掛けを気にすることなく、悠長にスキル画面を確認してみることにした。
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☆《モード:ゴーレムマスター》
⇒【ルミナ専用スキル】
⇒自身にゴーレムの身体を一時的に付与させる。
⇒打撃攻撃に弱く2倍換算される。ただし斬撃によるダメージを1に魔法攻撃によるダメージを0にすることができる。
⇒移動速度は最速で徒歩の速度となる。
⇒効果時間:10分or自分で解除
⇒再使用時間:1回 / 6時間
▷《ブリリアントクリスタル》
⇒【ゴーレムマスター使用時の専用スキル】
⇒効果時間内に受けたダメージを全て8倍にして反射させるスキル。
⇒効果時間:10秒
⇒再使用時間:2回 / モード発動中———————————————————————
ふむふむ。そうこれこれっ。
——《ブリリアントクリスタル》使ってみよっと!
専用のスキルを使用すると、ゴーレムの表面はクリスタルに覆われて、見事なクリスタルゴーレムに変化した。
ほぉぉぉ、かっこよさ倍増だよぉ!
これはもうイケメンゴーレムくんモードだよね。
当然『ルーニィマン』たちには大きく動揺が走っていた。
「リーダー何かやばいっすよ。クリスタルゴーレムに進化してるっすよ!」
「な、なにぃ?!
「は、はぃぃぃ!!」
再び3800人による、魔法の総攻撃が繰り広げられる。
この《ブリリアントクリスタル》は効果時間10秒で、時間内に受けた攻撃を8倍にして反射させるんだったよね。
1日2回使えちゃうし、連続使用したら20秒間受けた攻撃を全部反射してくれるかも?!
ここからはひたすら約20秒間、我慢して攻撃を受続けた。
衝撃は排除できないため、時々大きく揺れを感じることはあったが……。
もちろん魔法攻撃はノーダメージなので、攻撃は痛くも痒くもない。
「どうだ?
「やつは反撃してこないですし、このまま押し切れば……必ず!」
「そう言えば……何故あやつはアタックしてこないんだ?」
「言われてみればそうです……ね」
18……19……20!
ここから私のターンッ!
ひたすら受け続けた魔法攻撃を、威力8倍にしてカウンターした。
私の周囲で自動的に魔法攻撃が再現されて、放出され続ける。
わぁぁぁ!
これ私がものすごい魔法を使ってるみたいで楽しぃぃぃぃ!
なんて、ほのぼのと思っているけど……3800人による大規模魔法の連続使用。
それを8倍に変換すれば、当然———。
「「「うぎゃぁぁぁぁ……」」」
「「「ぐへぇぇぇぇぇ……」」」
「「「ひぃぃぃぃぃぃ……」」」
全方位で飛び交う悲鳴と叫び声。
控えていた【
「「「わ、我々の出番はなかったのかぁぁ」」」
威力8倍のとんでも魔法反撃は、趣のある古城もボロボロに半壊させ、瓦礫の山へと変えてしまった。
もちろん、プレイヤーが生き残ることなど出来るはずもなく、全て消し炭状態だ。
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『ポイントを獲得しました』
『ポイントを獲得しました』
『ポイントを獲得しました』
『ポイントを獲得しました』
『ポイントを獲得しました』
『ポイントを獲得しました』
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・
『ポイントを獲得しました』
『ポイントを獲得しました』
『ポイントを獲得しました』
『獲得累計ポイントは8368ポイントです』———————————————————————
あれ、あんなにたくさんいたのに、いつの間にかみんないなくなっちゃったよ……。
私、ゴーレムくんになりきってただけなのになぁ。
———それより。
またフィールド壊しちゃった……。
その内、本当に運営さんから怒られちゃいそう。
敵も居なくなったので《モード:ゴーレムマスター》を解除し、元の姿に戻りながら自重しなきゃと考えていた。
「もう、イベント時間内にゴーレムにはなれないし……。スキルもMPも消耗戦だから、気をつけなきゃ」
そう話す私の死角で、この戦闘の全てを分析しているプレイヤーが1人。
もちろん、この時の私はその存在に気付いていなかった。
「あの数を全滅させるなんて……。それにあのゴーレムの姿、きっとあの子がシークレットボスを倒したんだわ。あなたは必ずこの私……【大賢者】である『魔法少女☆リコピン』が倒して差し上げますわよ」
まさかこの後、今回以上の激しい戦いが訪れることになるとは夢にも思わないまま、私は古城エリアの先に見えていた海エリアへと向かった。
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