第22話 解決案、発表

「……………………」


 長くもなく、かと言って決して短くもない時間が過ぎた。


 依然として片瀬は俺の胸に顔を埋めている。が、少しは落ち着いたようで、今は静かなものだ。寝ているんじゃないか、そう思ってしまうくらいに。


「……少しは、楽になったか?」


 俺が小声で問うと、彼女は小さく頷いた。


 そりゃ良かったと、俺は彼女から腕を離す。


「それで、片瀬をどうやって助けるかって話しに移りたいんだけど……さすがにこの状態じゃあれだし……一旦、離れてくれない?」


 あまり刺激しないようにとやんわり伝えたのだが、いやいやと片瀬に首を横に振られてしまう。


 ついさっきまでは片瀬を安心させようって一心だったから平気だったけど……いざ目的を果たしたらもうダメ――恥ずかしくて仕方がない!


 これ完全に『あ……○○君も緊張してるの? 心臓、凄くドクドクいってるよ?』的なシチュだよね、これ!


 いや、俺だってわかってるよ? ラブコメみたいなうらやま妬ましいもんじゃないってことぐらい。


 雰囲気に吞まれてしまった感は否めない。きっと、さっきまでの俺は一種のそう状態だったんだ。もしくはその道を極めたスポーツ選手のみが入れるゾーンみたいな。


 だが、ひとたび素に戻れば情けない花厳緒花だ。ここまで不慣れな言動をとってきた反動が俺を襲う。


 ……落ち着けぇ、落ち着くんだ俺ぇ。下手に突っぱねて『あ、じゃあやっぱり助けてくれなくて結構です』ってなったらつまらないだろ? 片瀬第一優先、片瀬ファースト、これ大事だから!


 となればさっさと本題に入って、さくっと説明し、お暇させてもらおう!


 ここからは巻きでいく! そう意気込み、俺はわざとらしく咳払をする。


「わかった……じゃあそのままでいいから聞いてくれ」


 うんうんと頷く片瀬。若干、ふざけているように見えてしまうのは俺の心の器がおちょこ並みだからだろうか。


 ふざけている、どこか楽し気、そんな風に感じられた。だがしかし、今はそんなことを気にしている場合じゃない。俺の目が節穴ってことにしておいて――早速、解決案の発表に移ろう。


「今から伝えることは、決して冗談とかじゃない。それを頭に入れた上で聞いてくれ――――片瀬、俺はお前に〝告白〟する」

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