第4話:ギルドにて(ゴリアス視点)
翌日。
王都――冒険者ギルド。
「さて、受けてたクエストこなさないとな。サクッとブレイズウルフ殺しにいこうぜ。その前にメンバー募集の手続きだ。最低でもあと二人は欲しいな」
周りの冒険者を威圧するように歩くゴリアスが、受付へと向かっていく。その横には複雑そうな顔をしたアワナが一歩後ろを歩いていた。
「セト……置いてきたのは、やりすぎだよ。もし真に受けて本当にブレイズウルフを倒しにいってたら……」
「間違いなく死んでるだろうな。ま、そこまで馬鹿じゃねえだろうし、もし挑んで死んだのなら……はは、冒険者らしい死に方で喜んでるだろ」
「……」
受付へとやってきたゴリアスが、受付嬢へと凄む。
「おい、冒険者パーティ【魔剣団】のものだが、メンバーを募集したい。すぐに募集をかけろ。条件は――」
ゴリアスが尊大な口調で条件を言っていくが、受付嬢が笑顔のまま少し困ったような表情を浮かべた。
「申し訳ございません。Fランクパーティが、条件に自分のランク以上をつけるのは制度上無理なんです」
「はああ!? 確かに俺らはFランクだが、俺は【魔剣士】でこいつは【光魔導師】だぞ!? クソみたいなジョブのDランクパーティよりつええよ!」
「制度ですので。依頼をこなしてランクを上げていただくしか」
「あん!? 融通効かせろ! 俺は【魔剣士】のゴリアスだぞ!? いずれSランクになる男だぞ!」
受付をドンッとゴリアスが拳で叩くも、受付嬢は笑顔のまま、微動だにしない。
荒くれ者の多い冒険者相手の仕事である受付嬢は、生半可な精神力では務まらない。ゆえに――受付内に立っている者達は女性であれど、皆猛者であった。
「ランクを上げてから――再度条件をお申し付けくださいね」
「てめえ……ぶっ殺――」
「ゴリアスやめて!」
剣を抜こうとしたゴリアスをアワナが慌てて止めた。
当然だがギルド内は抜刀厳禁であり、もし抜いていれば罰金、最悪の場合は冒険者登録取り消しになるほどの重大な違反となる。
「ちっ……俺が高ランクになったら、まっ先にてめえをクビにするように提言してやるからな!」
「どうぞご自由に」
「気分が悪い。もういい、お前らのメンバー募集は頼らん。おい、そういえばこないだ受けていたブレイズウルフ討伐の依頼、あれをこなしたらどれぐらい貢献ポイントは貰えるんだ? 依頼をこなすことでギルドから与えられる貢献ポイントが一定以上になったら昇格依頼が受けられるんだろ? というかすぐに受けさせろよ」
それが冒険者ギルドのシステムだった。
依頼をこなして貢献ポイントを溜め、一定量に達すると、昇格依頼という依頼を受けられるようになり、それを達成することでランクを上げられるのだ。
ちなみにランクは個人ではなくパーティに与えられる物なので、パーティから追放されれば当然ランクはFに戻る。逆に、実力が伴ってなくても高ランクパーティに入れば、高ランク冒険者の仲間入りである。
ゆえに冒険者にとって、どのパーティに所属しているか、していたかという経歴が、非常に重要になっていく。
「ブレイズウルフ……の依頼ですか?」
そこで初めて、受付嬢が困惑したような表情を浮かべた。
「そうだよ。こないだ受けただろ?」
「はい。確かに【魔剣団】の皆様が受けたブレイズウルフ依頼ですが……
「……どういうことですか」
ゴリアスが声を荒げる前に、アワナがそう受付嬢に問うた。
「いえ、ですから、今朝セト様が依頼報告にいらっしゃったので……。あとパーティ離脱申請と新パーティ結成の登録もされました。ですのでブレイズウルフ討伐の貢献ポイントは、セト様の新しいパーティに付与されました。勿論、この場合、別パーティで受けた依頼と処理されるので、規定によりポイントは半減されています」
「……何を寝ぼけたことを言っているんだ? あいつが一人でブレイズウルフを討伐したってか!? ありえねえだろ! あいつは【羊飼い】だぞ!? ブレイズウルフに勝てるわけがねえ!」
「そう申されましても……セト様のギルドカードには確かにブレイズウルフ討伐の証である、魔力反応が刻まれていましたし、ブレイズウルフの爪と毛皮も一部換金されましたよ」
「嘘だ……ありえん」
ゴリアスが信じられないとばかりに、後ずさった。代わりにアワナが受付嬢へと食ってかかる。
「さっき新パーティを登録したって言いましたよね!?」
「はい。セト様含め四名で登録されました。セト様以外はまだジョブも決まっていないそうですが」
「四名? どういうこと……セトに私達以外の知り合いなんてこの王都にいないはずなのに」
「……わけがわからねえ! それにあれは俺らが受けた依頼だ! なんであいつのとこにポイントが入るんだ!!」
「そういう制度ですから……あ、
そう言って、受付嬢がギルドの入口を指差した。
ゴリアス達がゆっくりと振り返ると――
「さ、じゃんじゃん依頼を受けて、がんがんランクを上げていきましょ! ランク上がると、一般人が入れない迷宮とかも挑めるんでしょ!? タルタロスにいる奴ぐらいヤバいのとかいるのかしら!? 楽しみだわ!」
「流石に地獄の迷宮レベルのはいないと思うよ……。まあ地道に依頼をこなしていこう。魔物の素材もギルドで換金すれば少しは貢献ポイントになるしね」
「私の計算では、あと三十回ほど討伐依頼を受ければ、最初の昇格依頼に達するかと。素材は一部装備用に残してあとは換金すれば更に早まります」
「ん……殺気……感じる」
そこには、三人の美少女と楽しそうに喋りながら歩いてくる――セトの姿があった。
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