第12話 モフモフまくらで回復効果

「リオ、どう……?」

「と、とてもふさふさしてて快適です」

「アリナの尻尾、癒しの効果……ある。傷ついたらいつでも使って……いい」


 黒狐アリナから尻尾を使えと言われた時は、正直意味が分からなかった。そんな彼女がしてきたのは、尻尾を枕代わりにして俺を寝かせたことだ。


 姉弟子とはいえ、ここまで優しくされると気恥ずかしい。


「リオ。あなた、アリナの尻尾ですっかり回復したでしょう?」

「そういえば痛みが無くなってるような……」

「――それなら」

「えっ……?」


 モフモフ枕で痛みはおろか、体力も元通りになっている。癒しの効果恐るべしといった感じだ。


 そう思っていたら、


「わわわーっ!? えっ? う、浮いてる!?」


 一体何事かと思いながら周りを見ると、ルーナのツルによって空中に飛ばされていたことが判明。丁度真下で彼女が微笑んでいるのが見えている。


「リオ! そのまま山賊退治に行ってね。武器は鋭利な木の枝を持たせてあげるから」

「えええー!? 山賊退治ですか!? そんな無茶なー」

「あなたの頑丈さなら死にはしないわ。それにもし傷を負っても、アリナが尻尾で出迎えてくれるわよ? そういうことだから、頑張りなさいね」


 フィーネ以上にスパルタだった。まさか強制的に飛ばして山賊退治をさせるとは。おまけ程度の木の枝が知らない間に手元に収まっていて、何とも言えない。


 ルーナのツルである程度放り飛ばされ、気付けばどこかの山道に着いていた。てっきり地面に叩きつけられるとばかり思っていたのに、植物がクッションの役割を果たしゆっくり降ろされた。


 ――というか、山賊はどこにいるんだろう。山道のおかげか隠れる所はいくらでもあるけど。渡された木の枝以外にも自前で調達出来そう……。


 そう思っていると、ガヤガヤとした粗雑な声が聞こえて来た。どこかで山を荒らしまくって帰る途中の様子に見える。


――ガハハハッ! 今日も大量だなぁ、おい。

――そろそろ場所変えようぜ? 使える木も少ねえし、果樹も見当たらねえよ。

――遠くにまだ手付かずの森があるぜ? そこに行きゃーいくらでも採集出来るはずだ!


 山賊は数にして、五、六人程度。見るからにガラの悪そうな人相。強そうな武器は手にしていないものの、それぞれが短剣のようなものを手にしている。


 それに対し、こちらの武器はルーナ特製の木の枝。枝先こそ鋭利なものになっているとはいえ、多人数相手に飛び込むのは至難の業だ。


 しかし奴らの話の流れでは、次に向かいそうなのはアリナがいる森。こいつらが森や山を荒らし続ける限り、彼女たちはもちろん植物たちにも危険が伴う。

 

 姉弟子に鍛えられ、体だけはひとまず頑丈になれた。それなら後は行動に移すだけ。


 衰退状態を完全に脱していないとはいえ、動ける体になったのは確かだ。魔法は未だに使える状態に無いし体術で何とかするしかない。

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