第74話
「助手くんキョロキョロするな!」
俺が周りの目を気にして、少し前からキョロキョロし始めると、蒼太はその度に俺に注意を促してきた。いつからか、探偵と助手という設定になった。
「俺が助手かよ」
「いいから、尾行を続けるぞ」
「尾行という名のストーカー行為だよ」
「違う!尾行だ!」
蒼太さん、、、熱が入りすぎています。いつもの口調とまったく違うのでおかしく感じてしまう。
「やっぱり、ただのバイトだー」
「いや、それは甘いよ助手くん」
「え?甘いって・・・・・・なにが?」
「考えがだよ、助手くん」
危ない危ない、ちょっとイラッときてしまった。三村に言われてたら、手が出ていたかもしれない。
「じゃあ蒼太の考えは?」
「女の人と待ち合わせをしているかもしれない。店を出たあと、尾行されるのを警戒した三村はあの店から少し離れた場所で尚且つ歩きで行ける場所を集合場所に・・・・・・」
「あ、店の中入って行った」
「しているかもしれないって思ったけど、違かったみたい」
1発殴ってもいいだろうか。
俺は蒼太を殴らないように、スーハースーハーと深呼吸をして、自分を落ち着かせる。
「じゃあ、入ろうか」
「えー、まぁいいけど」
俺はそう言って、蒼太と一緒に三村のバイト先らしきお店に入っていく。
「いらっしゃいませ〜2名様でよろしいでしょうか?」
「はい、2名です」
「カウンターのお席でもよろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です」
そう言って、案内されたカウンターの席に2人で座る。
中の様子はメニュー表を見る限り、カフェのお店のようだ。
「涼子さーん、ごめんなさい遅くなって」
そう言って、俺たちの前に出てきたのはさっきまで一緒に遊んでいた三村だった。
「いらっしゃい、、、ま、せ?」
「おおっ、なんと綺麗な2度見」
「なんで!居るんだよ!」
「あー?いいだろー?客だぞこちとら!」
俺がそう言うと、三村がめちゃくちゃ嫌そうな顔をして俺の方を見てきた。
なんか、不思議と罪悪感が湧き上がってきた。
「あれ?しんちゃんの友達?」
「ま、まぁ・・・・・・はい」
「それじゃあ、挨拶しなきゃね」
「えっ?!いいですよ別にコイツらには」
「三村それは少し酷い」
「そうだぞー」
俺と蒼太がブーブーと三村の扱いに対して、ブーイングをしていると、三村の先輩らしき人が笑っていた。
「あははっ〜!面白い子たちだね〜」
「まぁ、いい奴らではありますけど・・・・・・」
「私は
伊佐美さんを一言で言うと、美人だ。そして仕事もできそう。とてもいい先輩って感じがする。
「それで?君たちはー」
「俺は黒田って言います。隣が蒼太」
「あぁ!!君たちが!しんちゃんがいつも君たちのこと楽しそうに話すから名前覚えちゃった〜」
ウフフッと笑いながら俺たちのことを見てくる。
「恥ずかしいこと言わないでくださいよ!」
「ええっ〜いいじゃーん」
「良くないです!」
「ちぇっ〜なんだよ〜」
「さっ!仕事仕事!コイツらの相手は俺がしますから!」
伊佐美さんに見せる時の顔と俺たちに見せる時の顔が全然違った。
振り返った瞬間、キッと鬼のような表情をしていた。
「あと何分したら帰るんだ?」
「来たばっかだよ」
「15分な?それ以上はダメだ」
「案外長い」
「今すぐにでも帰っていいぞー」
大事な客をなんだと思っているんだか、と思ったが俺が三村だったら、バイト先に三村と蒼太が来たら、なんか恥ずかしいな。
だけど、慣れるのも時間の問題な気がしている自分が怖い。
「三村くーん、ちょっといいかーい?」
「あっはい!」
三村は俺たちに「店長だ」と言って、声のする方に歩いて行った。
「ねぇねぇ」
すると、さっきまで注文を取っていた伊佐美さんが、すぐそばにまで来ていた。
「な、なんですか?というか仕事いいんですか」
「いいよ!ちょっと喋るだけだし」
「はぁ、まぁ伊佐美さんがいいなら」
俺と蒼太は目を合わせて苦笑いする。
「しんちゃんとは仲良いの?」
「まぁ、はい良く遊んでます」
「でも、バイトしてちゃ遊ぶ機会も少なくなるし、友達として寂しいんじゃない?」
「そりゃ、少なくなりますけど遊べる時に遊べばいいんですよ、友達ってそんなもんですよね?」
それを聞いた伊佐美さんは、少し驚いた様な表情をしていた。
「じゃあ、しんちゃんがバイトしてても友達は友達ってことね?」
「当たり前じゃないですか?」
「ふふっ、聞いてたとおり」
「え?」
「こっちの話よ」
そう言って、伊佐美さんはニコニコしながら、コーヒーを淹れている。
俺は伊佐美さんは少し不思議な人なんじゃないかと思った。
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